金曜日, 10月 12, 2007

財務省動く

サブプライム問題をきっかけとしてクローズアップされた新たな金融システム危機については以前のエントリーでコメントしてきたわけだけれど、遂にその対策の第一報がWSJ紙上にて今日の夕刻明らかになった。以外と時間が掛った印象だけど、引き続きインターバンク市場が混乱するなかで内密に議論が進められてきていたとのこと(3週間前から)で納得してみたり。来週月曜日のCITIの四半期決算発表に合わせて対策が公表される予定とのことで、もちろんその発表も注意深く見ていかないとね。まったく個人的な憶測でしかないけれど、やはりこのまま対策なしにCITIの決算発表を向かえると市場の混乱が再発しかねないとの判断があったんだろうか。

ポイントは、1) 今回はFEDではなく財務省が仕組み作りに動いていることと、2) 別エンティティ(Master-Liquidity Enhancement Conduit, or M-LEC)を作ってこれを銀行団がサポートすることで信用力を確保することの2つ。

FEDではなく財務省が出てきたという事は、今回の対策はLTCM危機での緊急財政出動とは異なり長丁場のシステム作りに当局自身が動いたということを意味する。LTCM危機の時はその後業界団体であるISDAを中心とした活動によって、カウンターパーティリスクの管理方法が確立してきたわけだけれど、今回の金融システム危機(07年証券化危機とでも呼んだらいいのかしらん?)はシステム全体の問題として当局が強い問題意識を持っていることが伺える。それにしても強い当局とはまさにこうした動きができるもの。翻って今の日本の当局は果たしてこうした力を発揮できるかどうか。また後で、当局という概念については取り上げてみたい。

別エンティティを作ってこれを銀行団がサポートするというのは記事にもあるようにいかにもLTCM危機時の対応を思い起こさせるものの、もはや一行のクレジット単体では現状あるファンディングを維持できないわけだから適正な対応であろう。それにしてもCITI単体(7つの関連エンティティの合計)で現在$100bn、8月末でみると$400bnも資産が積まれていたというのだから驚きだ。これは統合前の大手都市銀行一行あたりの総資産規模に匹敵する。インターバンク市場はこの規模のファンディングに対してよくも耐えられたものだ。

引き続き注意深くウォッチングしていきたい。

Big Banks Push $100 Billion Plan To Avert Crunch

The Citigroup plan would create a "superconduit," a fund backed by some of the world's biggest banks that would issue short-term debt and serve as a buyer of assets currently held by SIVs affiliated with the participating banks.According to the people familiar with the plan, these assets include securities tied to U.S. mortgages as well as debt pools called collateralized debt obligations.Because the superconduit would be backed by the big banks themselves, it's expected this would reassure investors and make them more willing to buy its short-term debt, or commercial paper.SIVs are purposely kept off the balance sheets of the banks to which they are affiliated. One reason for this is that banks want to keep down the amount of assets on their balance sheets to reduce the amount of capital that regulations require them to keep.

Because SIVs are off the balance sheet, it is difficult for investors to size up the financial risks they pose. Off-balance-sheet liabilities played a major role in the 2001 collapse of Enron Corp., and the makers of accounting rules have generally sought to get affiliated entities back on the balance sheets of the companies creating them.

追記(10/16/2007):このトピックに関して日本の報道を見ていて面白い事に気がついた。あくまでネット版ではあるものの、読売はNY時間の土曜日の朝には既にこの件で記事を載せていたのだけれど、日経はなんとNY時間の月曜(もしくは日曜の深夜)になるまで一切触れられていなかった。これはもしかして日経のニューヨーク特派員は金曜日早帰りして気がつかなかったか??或いはそもそも特派員がいないのでは??日経のネット版には記者の名前が載っていないので確認しようがないものの、これはかなりまずい。経済専門紙が読売に先越されてどうすんのよ。。ちなみにアサヒはチェックしてません。アサヒられるかもしれないからね(;´Д`)そもそも何故にネット版で経済欄が『ビジネス』カテゴリーに分類されてしまっているのだろう。。。

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