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月曜日, 3月 24, 2008

メルトダウン回避へ政策総動員!!

息つく暇もなく連続したイベントに見舞われていたマーケットもようやく落ち着いてきたので、08年第1四半期の動きをまとめておこう。ただ、表題の通り政策を総動員している割りに結果は芳しくない。理由は一連のイベントのキーワードがCDOでも投資銀行でもなく、ヘッジファンドであるからだろう。

一連の動きを理解するために3つ程ポイントを:

まず、伝統ある投資銀行であるBear Stearnsの実質的な破綻という悲しい結末をもって、08年第一四半期の相場は今後何十年も関係者の記憶に残ることとなるだろうということ。なにせBear Stearnsはもう5つしか残っていなかった投資銀行勢の一角を占めていたうえに、彼等の取ってきたスタンスも合わせて存在自体が貴重だったから(LTCMの時もここだけ資金を出さなかったし、そもそも"俺は俺でやるからお前らはお前らでなんとかしろよ"的なサスペンダーの良く似合う昔ながらの証券ブローカー気質は変わらぬ彼等のキャラ)。

次に、良くある質問として「日本国債の格下げ時、或いは邦銀の格下げ時と比べて何故にモノラインの格付けは最終的に維持されたのか?」ということ。答えは簡単で、モノラインの場合には格付け維持に資する資本増強策を打ち出して、短期間でその通りに実施したから。もちろん昨年から続いていた強烈な株安でこうした資本増強策は疑問視されていたわけですが。

そして最後に、これ程までに政策が総動員されている事態は記憶にないということ。結果として08/Q1に発動された政策は大きく分けて3つのパターンに分類される:
  1. 規制緩和 - 流動性供給を目的に国として間接的にリスクをとる方向へシフトしているのがポイント(でも日本でいう所謂公的資金ではない)。2月にOFHEOが打ち出したFannie Mae, Freddie Macについての一連の規制緩和により、一時的に$200bn相当の流動性が住宅ローン担保証券市場へ供給され、$2trの住宅ローン購入余力が生み出された。全米の07年までの住宅ローンの規模は$12tr程度なので、これはマーケット全体の15%にも上る。
  2. 金融緩和 - 今年に入ってから既に2ポイントのFF誘導目標下げが実施されている。更に、3/17より投資適格級の担保を差し出すことでprimary dealerもFEDのdiscount windowを利用することが可能に(PDCF borrowing; Primary Dealer Credit Facility)。実際3/19日時点でPDCFの利用残高は$28.8bn(!!)まで膨らんだ。US Treasury 10y/2y spreadは年初の1ポイントから3月中旬には1.5ポイントへと急拡大し、商業銀行勢の資本蓄積を静かにそして強力に絶賛推進中。
  3. 経済対策(財政出動?) - 個人所得税還付が柱。07年度の個人所得税のうち各人に$600を還付するという内容で、総額$150bnに及ぶ。実際にIRSがcheckを郵送し(或いは銀行口座へ直接振込み)始めるのは5月から。
更に、以前のエントリーでも紹介したように矢継ぎ早に理論武装した上で、Mortgage brokerから格付け会社まで、これまで当局の監視を実質的に受けてこなかった業界へあくまでも透明性の向上を目的に規制導入を検討中。市場の透明性向上を旗印にしているのがポイント。

繰り返しになるが、これだけの施策が同時に発動されている状態は正直みたことがない。一方、日本では財・金分離だとかいう屁理屈で武藤さんを承認できなかった事実が空しい。でもなんだか全部が全部、市場を後追いしているような印象を受けますが、、、

そうそれはなかなか表に出てこないヘッジファンドをもFEDは相手にしなければならなくなっているから!!そもそも熊さんの資金繰りが急激に悪化したのは、虎の子のPBビジネスでヘッジファンドが資金を引き上げ始めたのがきっかけ。まさしく現代版のA Run on The Bankだったわけで、そのスピードたるや一般の預金者とは比べ物にならず、その規模たるや伝統ある投資銀行のliquidity poolをも2日足らずで飲み込んでしまうという代物だった(SECの報告にもある通り、熊さんは確かに健全そのものだったのにも関わらずです)。FEDはまさしく考え得る最善の策を最速のタイミングで打ったわけだけれども、さすがにヘッジファンドのそれには対抗できるわけもなく(;´Д`) そして単なる金融保証会社(モノライン)の格付けの問題があそこまで大きくなったのは、ドル箱の地方債保証業務を狙ったヘッジファンドの空売り構成によるボラティリティの拡大によるところが大きい。その結果、投資銀行勢はABS CDO/Super Senior CDOのヘッジを通して巨大なカウンターパティーリスクに晒される事になり、綱引きが始まっていた。地方債業務を切り離されてしまっては後に残るのは収益性が低くリスクの高いCDS関連の保証業務だけで、云わばゴミだめ同然になってしまう。正直それではヘッジにならないし、ヘッジが切れてしまうと一気にシステム全体のメルトダウンリスクが高まる。したがって、どうしてもこのタイミングでドル箱を手放すわけにはいかず、モノラインは資本増強に動かざるを得なかったとみるべき。一方で、そうこうしているうちにいいトコ取りでバフェット氏が地方債保証業務だけ引き取りましょうなどという提案を行ってみたりでもうほんとにカオス(;´Д`) そもそも彼はわかってやってたのだろうか。。結局FEDは中途半端にMBS/CDOに対してある意味で政府保証を付けるような貸出し対策を発表することになったわけだれども(追記 4/5/08:この対策については全く誤解していました。Term Securities Lending Facility (TSLF)はそもそもGC repo対策だったんですね。しかも対象はCDOを含まずMBSのみでした(federal agency debt, federal agency residential-mortgage-backed securities (MBS), and non-agency AAA/Aaa-rated private-label residential MBS)。実際、年初から150-200bp程度まで拡がっていたGC Repo/FF spreadは4月初めには消滅している。)、その後は前述の経緯を経て投資銀行のPBデスクを通してヘッジファンドへ資金供給するということに。テクニカルにはローンのリコースは借り手の投資銀行にも及ぶので安易に資金供給が膨らむことにはならないというのがポイントですかね。

最後にはっきりさせておきたい点が2つ: 1) 今回のBear Stearns救済劇がモラルハザードだと思う向きもあるかもしれないけれど、たった数日前には1株$60近辺で取引されていた株が$2(or $10)で買収されるわけで株主はこれ以上の責任を取りようがないということ。では資本構造上株主の上にいる債権者はどうなるかと言えば、通常最上位にいると思われるswap counterpartyについてはJP Morgan Chaseのweb上のコメントにもある通りJPによって基本的に保証されると予想されるものの、それとて契約上はいまだに確定されてはいない。 2) よく日本の金融機関救済劇と比較されるけれど、アングロサクソンの考え方は日本のそれとは似ても似つかない。端的には1997/11月に起こった本邦インターバンク市場でのデフォルトから公的資金投入までにどれだけ時間が掛かったか。批判しているわけではなく、あくまで考え方が全く違うということを念頭に置いておかないと今後の展開に乗り遅れてしまう。

市場へのインプリケーションとしては、短期) 曲がりなりにも投資適格債を使ったファンドへの資金供給の枠組みが出来上がったので、senior trancheへのフローも復活するであろうし、一方でヘッジファンドに対してもFEDは影響力を行使できる道筋を見つけたことになる=>金融セクターの底は確認できたのではないか(問題はいよいよ実体経済へ)、長期) FEDがPDCFを口実に投資銀行勢へ規制を掛けてくる可能性が高く、いよいよWall Streetのパワーシフトが本格化するかもしれない。引き続きイノベーションが生まれる可能性を信じるのであればこのセクターは買い。そうでなければ売りであろう。個人的には買い。

では、さっそく1月から3月までのイベントを時系列順に見ていきましょう:

3/24/08 - 本日付で新たにFHLBがMBSを買い増せるように更なる規制緩和が実施された。一連の規制緩和でFannie MarとFreddie Macが大量のMBSを発行できる環境が整ったものの、その消化に疑問を持っていたところだったので、これでひとまず安心か。詳しくは後日追記予定。

3/19/08 - OFHEOが規定していたFannie MaeとFreddie Macの必要資本額を33%削減。OFHEO主導の規制緩和の2発目。これで、mortgageの供給サイドは体制が整ったことになる。後は市場がこの規模の証券を消化するできるのか否かがポイントになる。

3/17/08 - FEDが緊急利下げ(25bp)を発表するとともに、JP Morgan Chaseによる熊さんの買収が発表される。

3/13/08 - 熊さんの株価が急落。朝方に46%の下落幅を記録。この2日前辺りから$35でのputの値が付くようになる。3/14には更に値下がりし、$35を難なく突破。市場では$22近辺のputにも値が付いていた。

3/12/08 - S&PとMoodysがAmbacのAAA(Aaa)格付けの維持を発表。これは3/5日付けでAmbacが行った$1.5bnの資本増強を受けての措置。一方で、Moodysは同時に金融保証会社について、実際の損失は、保有資産の時価会計で計上した損失を大幅に下回る可能性があるとの見解を示した。ちなみに、業界3番手のFSA Inc.については、3/11日付けでMoodysがAaa格付けの維持を発表。結局のところ、4番手のFGIC CorpのみがAAA(Aaa)格付けを維持できなかったことに。

3/9/08 - Carlyle Capitalの資金繰り悪化が表面化。ちなみに、3月上旬はこれまでにない数のヘッジファンドが強制的に閉鎖(破綻)することとなった。2001年から2007年までに破綻した数と同数のファンドが年初からわずか2ヶ月の間に破綻している(;´Д`) 特に2月後半から3月前半に集中。

2/28/08(WSJ) - 1日遅れでWSJがGSEのPortfolio Capの廃止について配信。Fannie MaeとFreddie Macの業績低迷を受けて、OFHEO(Office of Housing Enterprise Oversight)主導の規制緩和の1発目。そもそもこの規制は2006夏に導入されたもので、一時的な措置ではあったわけだけれど。

2/27/08(WSJ) - S&Pが25日付けでMBIAの格付けをAAAで維持したのに続き、Moodysが26日付けで同じくMBIAのAAA格付けの維持を発表。これらの格付け会社は凡そ1ヶ月前にMBIAの格付けをネガティブ方向に見直すことを発表していたので、通常の格付けプロセスからするとこれはかなり異例といえるだろう。もちろんMBIAが格下げを避ける為に$2.4bnにも及ぶ資本拡充を実施したからでもあるわけだが。

1/31/08(WSJ) - S&PがFGIC CorpのAAA格付けをAAへ格下げ。その後2/25日付けでAへ格下げ。ちなみに、MoodysはAaa格付けを2/14日付けでA3へ格下げ。

1/31/08 - 遂にMBIAが$2.4bnのwrite downを発表。詳しくは下記の記事(**)を参照のこと。

1/18/08 - Bush大統領がstimulus packageを発表。当初は$800の税還付を提案していたが、その後$600で落ち着く。

(**) MBIA announces $2.3 billion Q4 writedown

31 January - The situation in the troubled bond insurance sector has worsened, with the announcement of a $2.3 billion fourth-quarter writedown by New York monoline, MBIA.

It could soon be a case of last monoline standing in the battle to retain triple-A ratings, following the news of MBIA’s worst quarterly performance on record. Fitch Ratings has already downgraded Ambac, Financial Guaranty Insurance and Security Capital Assurance, and MBIA remains a candidate for a downgrade.

This is despite the insurer raising $1.5 billion in new capital in the past month, plus its plans to issue a $500 million rights offering – backstopped by Warburg Pincus.

“We are disappointed in our operating results for the year, as performance of our insured prime, second-lien mortgage portfolio and three insured CDO-squared transactions led to unprecedented loss reserving and impairment activity,” said Gary Dupont, MBIA’s chief executive officer.

There was a predictable market reaction to the announcement, with MBIA five-year credit default swaps widening 49.3 basis points to 486.2bp. This is wider than Ambac, trading at 470.8bp, which has already been downgraded to AA.

That neither monoline is trading wider – their respective CDS spreads were above 700bp in mid-January – suggests the market is awaiting the outcome of discussions between insurance regulators, rating agencies, financial intermediaries and the insurers themselves. The talks, continuing since last week, are believed to be on the viability of a co-ordinated bailout of the monoline sector.

Clock ticking for troubled monoline

Lesson's from Bear Stearns

ボスが面白い指摘をしていたので、忘れないうちに書いておこう:
  1. 流動性が無くなる(dries up)のが如何に早いか。古典的な銀行の取付け騒ぎと同じく、$17bnの流動性がたった2日で無くなってしまった(a lack of confidence, but not a lack of capital)。
  2. 通常株価とCDSスプレッドは逆相関を示すが、今回は株価がほぼゼロになってしまったにも関わらずCDSスプレッドはJPのそれに近づいてtightningしてしまった。
  3. 一方、1株$2でJPとの契約が成立しそうであるにも関わらず、株価は$6-7まで上昇している。これは主に投機筋が今後現れるかもしれない新たな買収者を見込んで価格を吊上げているから。それでも、2.で指摘した相関は崩れてしまっていると考えて良い。これは過去の相関を元にヘッジしてしまったら大変な事になっていたということ。モデルを作るときには、こうした点も十分考慮に入れないといけない。
これまで息つく暇もなく連続したイベントに見舞われていたマーケットもようやく落ち着いてきたので、後日状況をまとめてupする予定。キーワードはヘッジファンドです。

追記(3/24/08):Bear Stearnのliquidity poolの概算値が出ていたのでメモしておく。2月上旬の$13bn弱から、徐々に増やしてきていて3月の第一週には$18-20bnのliquidity poolが積まれていた模様。ただ、COB 11日から急減し、COB 13日には$2bnになるまで枯渇してしまっていた(Source:SEC)。他の投資銀行に比べれば小さい数値ではあるものの、ビジネス規模を考えればわからなくもない。確か去年の同時期にGSは$30bn程度のliquidity poolしか持っていなかった筈。

土曜日, 2月 23, 2008

最近の話題

昨年からNYのクオンツ・コミュニティではサブプライムローン問題に関連して、僕の知る限り大まかにいって次のような論点について議論が起こっている:

1) 株式市場の乱高下とヘッジファンドの関係は如何に?
2) リスク管理手法について明らかになった問題点は何か?(ソジェンの事例も含めて)
3) 格付け機関に求められる役割と証券化商品特有の問題とは何だったのか?
4) アジア通貨危機に端を発する金融危機後に起こったイノベーションは結局のところ安定をもたらしたのか?

1)については、もう既に広く知られているMITのAndyLo教授が書かれた論文にあるように、"レバレッジの拡大"と"同一戦略をとるファンドの増加(相関の上昇)"が相まってもたらされた結果であるという見方が定説になってきている。すなわち、昨夏の株式市場の乱高下がマーケットニュートラル型のヘッジファンドによって主導されたという見方がほぼ固まってきていて、FRBが幾ら流動性を各種方法で提供したとしてもどこまで効果的か疑問符: FRBの庭はもはや市場の一部でしかないのではないか?、が付き始めてきたところ。ただ、中央銀行(or 当局)がコントロールできる範囲外の資金の流れが大きくなっているという根本的な問題に対する有効な手当ては今のところ見当たらない。

2)については方法論に問題がなかった事は疑いようがないものの、運用面を調整しなければならないという結論で固まってきていて、実際わが社でも静かに組織の見直しが進行中。

3)については、FRBの資料でも指摘されている通り、テクニカルには"While an ABS credit rating for a particular rating grade should have similar expected loss to corporate credit rating of the same grade, the volatility of loss (i.e. the unexpected loss) can be quite different across asset classes"という事情に象徴されるcorporate ratingsとsecuritized product ratingsとの違いが議論の中心になってきている。

そして最後に4)。アジア通貨危機から10年間を経て様々な金融イノベーション(高度化?)が生まれてきたものの、結局のところ世界がより複雑になった以外の何者でないのではないか、システム自体の安定性は何ら変わっていない(same as before, unconditionally)のではないかとする見方が本質を突いていると思う。

月曜日, 12月 31, 2007

格付けのボラティリティとは何だろうか

今年はこの話題に関して一つの洞察を紹介することを試みて〆としましょう。今年は証券化商品に関する格付けの変動性(ボラティリティ)が随分話題になったものの、仮にこうした格付け基準の甘さを指摘したところで格付け会社にしてみればそんなの想定外でしたで終わってしまう可能性が大なわけですなヽ(´ー`)ノ。本来Aaaってのは、中身をこれっぽちも見ずに買っても元本毀損の可能性については考える必要がない、という意味を示す記号であったのに(#`Д´)。というわけで、格付けの変動性(ボラティリティ)として証券化商品のリスクプレミアムを把握できないか考えてみましょう。

さて、、

ではいったい格付けのボラティリティ(変動性)とは何だろうか。そもそも格付けの変動性は定量的に捕らえにくい。格付けはそもそもordinal numeralであって、cardinal numeralではない。すなわち、仮に形式的にそれぞれの格付けに対してある数字、例えば1から20、を1:1対応させてその変動率を推計してみたところで意味がある結果とはならないのは周知の事実。同じく、格付けにcardinal numeralであるデフォルト確率(スプレッド)を対応させてその変動率を考えても意味のある結果は得られない。言い方を変えれば、当該債券(証券化商品)自体のスプレッド・ボラティリティをいくら精緻に把握しようとも、格付けの変動(及びその1つの帰結としての債券価格の大幅な変動)を説明し得る意味のある結果は得られない。従って、このアプローチは少なくとも中長期の保有期間を想定した投資戦略及びリスク・マネジメントには使えない。

一方、昨今注目されている(特に証券化商品の)格付けの大幅かつ大量の見直しから直感的に理解される格付けの"急激な変動"を定量的に把握し、横ぐしを入れて比較するにはどうしたら良いのか?この話題については規制当局も強い関心をよせているので、この"変動率"は分かりやすくかつ意味のある量であるべきであって、さらに当局の理解が得られなければならない。今のところ一致する見方は、当たり前といえば当たり前であるわけだけれど、次の通り:

Rating volatility can be interpreted as probability of a rating transition over a specific period (say a 1 year).

各格付け会社は格付け遷移行列を毎年推計しているので、このデータがまず一つの指標となる。一方、懸案の証券化商品の格付けに関しては、最終的に損失率のシミュレーションを通して元本毀損の蓋然性を判定した上で格付けを付与しているので、このシミュレーション結果を見れば(or 将来に渡って延長すれば)、例えば同じAaaの商品についても格付けの"変動性"リスクを峻別できることになる。例えば、CPDOなどは確かにAaaだけれど、その格付けの変動性は実は高いというのが一般的な捉え方だろう。一般にレバレッジ比率の高い証券化商品の格付けはそのレバレッジ故に変動しやすく、仮にそのデフォルト確率がcorporate ratingの同一格付けのそれと等しくとも、デフォルトするまでの格付けパスはcorporate ratingのそれとは著しく異なるのである。これは言わずもがな価格変動性に大きな違いをもたらすわけで、投資家としては相当のリスクプレミアムを要求すべきである: 逆にいえば、例え格付けがAaaであろうと相応のリスクを覚悟すべきである。すなわち、証券化商品の格付けは従来通りあくまで元本毀損の蓋然性(デフォルト確率)を表すordinal numeralであって、それとは別に格付けのボラティリティという特有のリスク(実はこれがかなりの部分を占める)がレバレッジ比率の高い証券化商品には内在されているということ。リスク・マネジメントの観点からいえば、伝統的なスプレッド・ボラティリティの把握とストレステストだけでは十分ではなく、上で定義した格付けのボラティリティをリスク・ファクターとして取り入れる必要があるのだろう。

それでは皆さん、Have a happy holiday and see you next year!!

日曜日, 12月 09, 2007

真夏の夜の夢。。。とその後始末

ようやく落ち着いてきたので、10月からの動きを幾つかまとめておきましょう。端的に云えば、短期金融市場の混乱は収束しことから既に第3フェーズは終了し、後始末に焦点の当たる恐怖の第4フェーズへ突入です (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

その前に幾つか第4フェーズのポイントを:
  1. 一連のdefault experienceを2002年のITバブル崩壊期と比較してみると明らかなように、今回は金融セクター発の危機である。よって、ポイントは金融システム全体(Wall Street)でどの程度の損失が発生し、システムはその損失に耐えられるのか?、という点。
  2. 直接金融・間接金融を問わず、金融セクター発の危機であれば信用創造のメカニズムそのものが目詰まりを起こす可能性があり、実体経済へはFFレートの引き 上げと同等の影響を及ぼしかねない。よって、ポイントはこの効果を相殺するためにFEDはどの程度の利下げを実施する必要があるのか?、という点。
  3. そもそも、サブプライム関連の証券価値についてはどの程度まで損失を見込めばよいのか、誰も納得感のある数字を示すことができていない。よって、ポイントは現状唯一の情報源である市場の価格付けがどこまで信頼に足るものなのだろうか?、という点。
こうした米国経済に関する予測が極めて困難な問題に直面し、市場はかなりボラタイルな展開が予想されていたわけですが、現実はより厳しいものになってしまったわけで(;´Д`) 今のところ1.、2.、3.についてはコンセンサスが醸成されてきており、損失率を額面の30%(3.)として1.で必要となる損失額を算出し、2.の幅が議論されている状態。個人的には少なくとも50bpは欲しいところ。というのも、米国経済が今後4四半期でression入りする確率をインフレ指標、債券市場、FFレート(FEDの判断)を使ってモデル化すると、次の通りとなるから:

- 11月末時点: 単純に計算すると確率は7.5%となる。但し、各種統計に誤差項を加味すると、11.31%まで上昇の可能性がある。但し、ポイント2.の効果を1%の利上げと同等とすると、この確率は20%台前半まで上昇する。ちなみに、過去の統計をみると、20%台前半まで上昇するのは1つの景気拡大局面あたり多くて2-3回しか発生しておらず(1964年以降のデータによる)、危険水域と判断されよう。過去の例では、60%以上でアウト。

- 7月時点: ちなみに、この時期には単純に計算しても確率が27%となっており、明らかに危険水域入りしていた。

というわけで、今週のFOMCは下げ幅だけでなく、コメントについても要注目です。さて、では最後に時系列順に後始末の経過を追っていきましょう:

- 10/17/07(WSJ) ようやくCP市場は持ち直し。Super-fund設立の動きが報道されたこともあり、CP市場は発行残高が季節調整後で$1.3bn増加し、$1.888tnとなった。これで2週連続の増加(その前週は$4.9bn+)。一方ABCP市場は$11bn減少したものの、これまでの各週平均$70bnの減少に比べると市場環境の好転が伺える。大相場はこれにて実質的に終焉した。あとは後始末ですが、、

- ちなみに、主要なSIVの資産残高は右表の通り。Citi様のaffiliateはやっぱり多い。さすがにこんだけ多いと幾ら真面目にsuper-fund立ち上げても飛ばしだのきな臭いだの罵られても仕方ないかも。僕としては同意できないものの、マエストロもさすがに耐えられなかったみたい(source: New York Times):Mr. Greenspan’s take, expressed in an interview with the magazine Emerging Markets, seems broadly similar. “If you believe some form of artificial non-market force is propping up the market,” he said, “you don’t believe the market price has exhausted itself.” 

- 10/19/07(Bloomberg)金融機関の損失発表が相次ぐ中で遂にSIVのデフォルト報道がドイツで。また欧州かよ(#`Д´)。Cheyne Finance PlcとIKB Deutsche Industriebank AG傘下のRhinebridge Plcです。Rhinebridgeについては、9/10付けでMTNがAAAからBBB-に格下げされていてかつ9/7, 9/10付けでBarclays Capitalとの間の流動性供給枠を使ってしまっているわけで。。デフォルトには今更感が漂うものの市場は大荒れに(;´Д`) もっともS&Pによると、資産は額面の63%まで劣化してしまっているということでこれはさすがに酷い。ちなみに、Moody'sの調査によると、SIV全体のnet assetをみると8/1時点で92-3%(一ヶ月で9-10pt下落)、9/1時点で85%となっている。

- 10/24/07 (WSJ) メリルが$8.4bnの評価損を計上。もうこれは野村と同列ですね。きちんとリスク管理の方法論を確立してから投資銀行と同様のビジネスモデルに参入しましょう。リテール証券としてのビジネスモデルは既にきちんと確立しているわけだから無理しなくてもいいのでは。。ヽ(´ー`)ノ とりあえず、ポイント1.に関する第一報が正式に報道されたのがこのタイミング。

- 10/25/07 (WSJ) ちなみに、これまでの報道(本格的な後始末前)をWSJが綺麗にまとめてくれました。ご苦労様です。あぁもう今年の金融業界は格好の餌食ですな(;´Д`) そしてこの程度で後始末が終わるはずもなく、、

- 10/31/07 FEDが25bpの利下げを決定。報道直後こそ一旦市場は失望売りで下げたものの、1時間後には回復基調へ復帰。公式発表にある通り、とりあえずこれで利下げは当面打ち止めなのか、、、と皆が思った瞬間。

- 11/3/07(WSJ) Citiも$12bnの評価損を第4四半期に計上することに。遂にPrince CEOも退任に追い込まれてしまい、ルービン大先生の登場です。しかし、ちょうどこの発表があった3日前に(11/29)に日本ではCitiの上場が東証に承認され11/5に上場を果たしたわけで、ホント金融庁(或いは東京市場?!)ナメられてますね。

- 11/7/07(WSJ) Morgan Stanleyも$3-6bnの評価損を計上する可能性をアナリストが指摘。株は猛烈に下げてます。うぅ。株はこれらの報道を嫌気して全世界で下がりまくり。市場が予想する金融システム全体としての損失規模が一気に上昇したのがこのタイミングではなかったかと。

- 11/15/07(WSJ) ファニーメイに関する追加損失懸念から、株価が一日で10%も下落。もう泣きっ面に蜂状態です(;´Д`)

- 11/27/07(WSJ) アブダビ投資庁がCitiへ$7.5bnの資本注入を発表。待ってました、ようやく救いの手がキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!! やっぱりオイルマネー強し。この辺りが数年前に起こった日本の金融危機と根本的に違うところですね。あの時は日本政府以外に誰もメガバンクに資本注入しようなぞとは思わなかったもんです。

- 11/30/07(金融庁) 遅きに失するとはこうしたことを指すわけで。金融庁による報告と預金取扱金融機関のサブプライム関連エクスポージャーの保有状況について。完全に世界の流れに取り残されてますが(;´Д`)

- Nov-Dec 2007 就職活動中の知り合いによると、投資銀行の採用はどこもストップ。今年前半まで空前の採用ブームだったのが嘘みたい。唯一採用しているのはリストラクチャリング中の野村だけだとか。。ただ、別の知り合いによるとGSは特にストップしているわけでもないそう。やはりどの分野でもアグレッシブなのか?!

- 12/5/07 約2年半ぶりに英国中銀も利下げを決断。

- 12/6/07 午後にブッシュ大統領がサブプライム・ローン関連の対策を正式発表。株は折からの利下げ期待に上がっていたところを、さらに上げ足を早めS&P500は前日比+1.5%で取引を終了。11月末を底値として1週間程度で7%近く上昇したことに。それにしてもsuper fund構想は腰折れに終わりそうだし、この対策も効果があるのかどうかは疑問。10月からの一連の報告で金融システム全体(Wall street)としての損失規模が見えてきたので、ポイント2.で挙げた効果を見極めた上で、一気に利下げで後始末を終わらせる腹積もりかしらん。11日の利下げ幅が焦点ですな。

- 12/8/07 ちなみに、サブプライム問題・米国経済のresession懸念にもまったく動じずに日本では更なる政治による混乱が加速中(;´Д`) 改正建築基準法によるマンション建築の遅延、貸出し上限金利の厳格化、信用保証協会による保証枠縮小、更にはガソリン税の暫定税率継続に民主党が反対の姿勢を明確にするなど、この手の話題には事欠かずといった様相を呈してきた。結果オーライなら良いのだけれど、当分視界不良が続きそう。。やっぱりアンダーウェイトにせざるを得ないのか。

- 12/10/07(WSJ) UBS が$10bnのwrite-downを報告。と同時に、GICから11bn Francs, 中東の投資家から2bn Francsの合計13bn Francs ($11.5bn)の資本注入を受けることを発表。注入方法は、Citiと同じCBの形で、クーポンはなんと9%。一気に膿を出した事を概ね好感し、株式市場は上昇。ただし、日本のマーケットは何故か下がり気味??日経の第一報が資本注入にまったく言及していないのもどうかと思うが。。

土曜日, 11月 10, 2007

証券化商品の格付けについて考える

(これも9月に入稿したので、ちょっと話題が古いですね。すみません。)

最近物議を醸している証券化商品(CDO,RMBS等)の格付けについて取り上げてみたい。これはデフォルト確率の推定に関わるモデルの問題に関連していて、クオンツの立場から考えても興味深い。

まずは、Moody's president Brian Clarksonのぶっちゃけトークから引用してみよう:
" We're rating with the goal that if you purchased all triple-As, they would all perform the same. Now of course they don't. Some get downgraded, some get paid off. "But what we're doing is we're actually rating to a target. We're targeting everything to be money good at the end with very, very little variability at the triple-A level," he said. Inherent in structured finance, however, are rules that govern what can and cannot be done -- even moves to save deals that break down, whereas a company can sell assets or otherwise reduce debt to stave off problems. "There is little you can do once things start to go bad," Clarkson said. "Structured finance ratings tend to be more stable over a longer period of time than a fundamental rating. But when they actually move, they move much quicker." (NY Times)
要は、昨今の格付けの急激な変化を認めた上で、やんわり企業の場合に期待される自浄努力(収益が悪化すればそれなりにリストラを行って財務体質の改善を図る等)が証券化商品にはあり得ないことなどを挙げて、その責任をストラクチャーの硬直性に転嫁してしまおうとしている。しかし、さすがにこれには無理があろうというもの(#`Д´)。これではせっかく最新の金融技術を使って、追加コストを極力抑えながら経済全体のリスク許容度を最大限利用しようとする証券化商品の意義(言い方を換えれば、リスクを幅広く投資家へ移転することによって資金調達を容易にするスキームの意義)が無くなってしまう。

それに、今回の件は直接金融の信用創造を阻害してしまったという意味で、新しいタイプの信用収縮と言えそう。

では実際に何が問題であったのだろうか。そもそも証券化商品の格付けはbankruptcy remoteを保証するスキームやコミングリング・リスクの評価を終えてオリジネーターとサービサー絡みのリスクを分離した後は、対象資産プールの損失分布(or 償還の蓋然性)を推定することに集約される。もちろん格付け会社は細心の注意を払って損失分布を推定し、特に高格付けを付与する場合にはデフォルト確率(PD)にストレスを掛けて念には念を入れている。ただ、僕の見立てでは今回問題になったのはこうした損失分布を推定する際に使われる肝心のストレス倍率ではなかったのかと。。

最近の急激な格下げで注目を集めている中小企業のCBOオール・ジャパンを例にとって、軽く試算してみる。デフォルト確率としては、S&Pの中小企業クレジット・モデルによる予想貸倒率(年率0.8%)を仮定してみよう(ちなみに、これはS&Pが当該当CBOに予備格付けを付与した時点でのS&Pの「ベース・デフォルト率」の1.7倍程度 (source: FISCO))。仮に信頼区間を68%(1標準偏差)で計算すると必要となるストレスPD値および倍率は次のようになる:

Gaussian copula w/ asset correlation 15% => 2.169% (x2.77)
Gaussian copula w/ asset correlation 30% => 4.063% (x5.07)

Student-t copula w/ asset correlation 30% => 7.798% (x9.74)

これらの数字はS&Pが発表している「中小企業CLO・CBOの格付け手法 - 中小企業クレジット・モデルを活用した分析手法を中心に」に記されているAAA格付けに用いるストレス倍率(5-8倍)とちょうど同水準である。一方で、ボラティリティのボラティリティが15%だとして計算すると、信頼区間はちょうど75%(1.15標準偏差)となる。この数字を使ってもう一度同じ計算をしてみると:

Gaussian copula w/ asset correlation 15% => 2.637% (x3.29)
Gaussian copula w/ asset correlation 30% => 5.172% (x6.46)

Student-t copula w/ asset correlation 15% => 7.091% (x8.86)
Student-t copula w/ asset correlation 30% => 9.441% (x11.8)

となり、S&Pが仮定するストレス倍率を30%-50%上回る結果となってしまう。更には直近6ヶ月のデフォルト率(年率4.7%=ベースデフォルト率の10倍!!)も十分予測の範囲内に収まることがわかる。したがって、ストレス倍率 5-8倍はちょっと低いのではないかと思うわけで。そもそも、この数字の根拠も曖昧だし(誰か知っていたら教えて下さい!)。9/11時点での格付け変更がどの程度のストレス倍率を仮定しているのか発表されていないものの、上記程度のストレスは仮定しておいて欲しいもの(ちなみに、8/28の関連プレスリリースはこちら)。もちろんこれは日本の事例であって、欧米での基準がどうなっているかを精査する必要があるがストレス倍率の議論はもっとオープンになされていいのではないかと思う。

結局のところ、証券化商品にありがちな高格付け・ハイイールド商品のカラクリはこうしたボラティリティに関するコールオプションが格付け時にゼロ評価されてきた為に起こっていた裁定機会であった可能性が高い。もちろん本来あるはずのオプション価値はハイイールド或いは業者の手数料として相応に落ちている訳だから、投資家としても文句はいいづらいところではある。逆に現在は理論的な根拠が薄いままスイングが逆方向へ行き過ぎている可能性が高いので、絶好の買い場であろう(新しいストレス倍率の水準は要チェック)。一旦下げた後は格付けが上がっていくフェーズに入っていくのではないか。市場へのインプリケーションとしては、格付けとスプレッドが密接に関連している市場慣行上、格付け方法を丹念に調べていけばレラティブバリューの機会を捉えることができよう。もっとも最近の価格下落率を見ると、レラティブバリュー云々の議論をする気が失せてしまうのも十分納得できるわけで、反論は甘んじて受けましょう。

金曜日, 10月 12, 2007

財務省動く

サブプライム問題をきっかけとしてクローズアップされた新たな金融システム危機については以前のエントリーでコメントしてきたわけだけれど、遂にその対策の第一報がWSJ紙上にて今日の夕刻明らかになった。以外と時間が掛った印象だけど、引き続きインターバンク市場が混乱するなかで内密に議論が進められてきていたとのこと(3週間前から)で納得してみたり。来週月曜日のCITIの四半期決算発表に合わせて対策が公表される予定とのことで、もちろんその発表も注意深く見ていかないとね。まったく個人的な憶測でしかないけれど、やはりこのまま対策なしにCITIの決算発表を向かえると市場の混乱が再発しかねないとの判断があったんだろうか。

ポイントは、1) 今回はFEDではなく財務省が仕組み作りに動いていることと、2) 別エンティティ(Master-Liquidity Enhancement Conduit, or M-LEC)を作ってこれを銀行団がサポートすることで信用力を確保することの2つ。

FEDではなく財務省が出てきたという事は、今回の対策はLTCM危機での緊急財政出動とは異なり長丁場のシステム作りに当局自身が動いたということを意味する。LTCM危機の時はその後業界団体であるISDAを中心とした活動によって、カウンターパーティリスクの管理方法が確立してきたわけだけれど、今回の金融システム危機(07年証券化危機とでも呼んだらいいのかしらん?)はシステム全体の問題として当局が強い問題意識を持っていることが伺える。それにしても強い当局とはまさにこうした動きができるもの。翻って今の日本の当局は果たしてこうした力を発揮できるかどうか。また後で、当局という概念については取り上げてみたい。

別エンティティを作ってこれを銀行団がサポートするというのは記事にもあるようにいかにもLTCM危機時の対応を思い起こさせるものの、もはや一行のクレジット単体では現状あるファンディングを維持できないわけだから適正な対応であろう。それにしてもCITI単体(7つの関連エンティティの合計)で現在$100bn、8月末でみると$400bnも資産が積まれていたというのだから驚きだ。これは統合前の大手都市銀行一行あたりの総資産規模に匹敵する。インターバンク市場はこの規模のファンディングに対してよくも耐えられたものだ。

引き続き注意深くウォッチングしていきたい。

Big Banks Push $100 Billion Plan To Avert Crunch

The Citigroup plan would create a "superconduit," a fund backed by some of the world's biggest banks that would issue short-term debt and serve as a buyer of assets currently held by SIVs affiliated with the participating banks.According to the people familiar with the plan, these assets include securities tied to U.S. mortgages as well as debt pools called collateralized debt obligations.Because the superconduit would be backed by the big banks themselves, it's expected this would reassure investors and make them more willing to buy its short-term debt, or commercial paper.SIVs are purposely kept off the balance sheets of the banks to which they are affiliated. One reason for this is that banks want to keep down the amount of assets on their balance sheets to reduce the amount of capital that regulations require them to keep.

Because SIVs are off the balance sheet, it is difficult for investors to size up the financial risks they pose. Off-balance-sheet liabilities played a major role in the 2001 collapse of Enron Corp., and the makers of accounting rules have generally sought to get affiliated entities back on the balance sheets of the companies creating them.

追記(10/16/2007):このトピックに関して日本の報道を見ていて面白い事に気がついた。あくまでネット版ではあるものの、読売はNY時間の土曜日の朝には既にこの件で記事を載せていたのだけれど、日経はなんとNY時間の月曜(もしくは日曜の深夜)になるまで一切触れられていなかった。これはもしかして日経のニューヨーク特派員は金曜日早帰りして気がつかなかったか??或いはそもそも特派員がいないのでは??日経のネット版には記者の名前が載っていないので確認しようがないものの、これはかなりまずい。経済専門紙が読売に先越されてどうすんのよ。。ちなみにアサヒはチェックしてません。アサヒられるかもしれないからね(;´Д`)そもそも何故にネット版で経済欄が『ビジネス』カテゴリーに分類されてしまっているのだろう。。。

日曜日, 9月 30, 2007

9月FOMCの結果によって第3フェーズへの突入を確認

9月のFOMCの直前には久々に手に汗握りました。私の職場でも一体FEDはどう対応するのか皆で賭けでもするかという話もでるくらい予想が割れる始末。結局0bp--50bpまでほぼ均等に意見が分かれたものの、FEDが利下げした場合には間違いなくEUR高・インフレ懸念が台頭するという点で意見が一致したのには笑うてしまった。マーケットも2日前までは利下げ織り込みが50bpで推移していたのに、前日になって25bp織り込み相場へ変化するという具合だったしね。

ところで、今回の利下げ措置で二つのポイントが確認されたのは有意義だったと思う。

一つ目のポイントは、WSJ紙上でも議論されてきたバーナンキ議長とグリーンスパン前議長とのマーケットへの対処方法の違い・類似性について確認がとれたこと。いわゆるグリーンスパン・プットの復活についてだ。かねてグリーンスパン前議長の時代には何かしらの変調が起こって資本市場が機能不全に陥った場合には、必ずFEDが緊急避難的に流動性を供給する或いはFF金利を引き下げることによってマーケットの一方的な下落を食い止めてきた。この意味で、これまでグリーンスパン・プットの存在が認識されていたわけだけれど、対照的に、バーナンキ議長は先月のNY株式市場のメルトダウンを前にしてdiscount rateを引き下げるのみでFF金利を据え置いた。結果、前述のWSJの記事にあるように、前議長との間の違いが際立ってしまった。しかし、9月のFRBで一気に50bp FF金利を引き下げて金融システムの混乱を沈静化する姿勢を鮮明にしたため、逆に金融システム自体を守るという点では二人の考え方が一致していることが確認されたといえるだろう(9月に入ってからの重大な金融システム危機については二つ目のポイントを参照)。一方で、景気および金融システムへ悪影響が出ないと考える限り、FEDは動かない事も同様に確認されたといえる。個人的にはバーナンキ議長への信認が更に高まったのだけれど、他の市場参加者の人はどうだったんだろう?その後のマーケットの動きをみると、同意見の人が多いような印象を受ける。

ちなみに、グリーンスパン・プットの発動タイミングについては、メモを参照のこと。

二つ目のポイントとしては、短期金融市場が思いもよらぬ原因で機能不全(流動性クランチ・信用収縮)に陥り、証券化時代の市場の不備が露呈した(確認がとれた)こと。

まずご存知の通り、短期資金調達手段は概ね次のように分類される:
  • Repo Market, Stock Loan Market(主に証券会社のファンディングに使われる)
  • 無担・有担コールマーケット or O/N Libor Market(インターバンク市場): 米国市場ではFF金利に支配されるが、日本では日銀の裏庭にいる短資会社に支配されている
  • 銀行借入(Libor Market, インターバンク市場)
  • CP市場(短期クレジット市場(無担))
  • ABCP市場(短期クレジット市場(有担))
今回は担保価値の再評価(リスク調整)が行われるなかで、ABCPプログラムのリファンド時の混乱から、アセットそのものの質が悪化している為に、或いは悪化していなくとも不利な条件でのリファンドになってしまう可能性があるため、B/Sから外した筈のアセットが銀行・モーゲージ関連企業自体のB/Sへ跳ね返ってくることに(証券化の際にArrangerに課されている買戻し条項を要チェック。追記(12/9/07):精査の結果、Citiの場合は会計上これを逃れられそうとのこと。詳しくはWSJの報道(11/26/07)を参考に)。その結果、銀行・モーゲージ関連企業本体のクレジットでのファンディング(インターバンク or CP)が必要となってしまい、インターバンク市場・CP市場が同時にクラッシュしてしまった。実際、8月のFRB後に大手4行がアナウンスメント効果を狙って$500mmずつ借りて借入れ総額が$2bnとなっていたdiscount windowは、8月末には順調に$1bnへ減少したものの、9月の第2週には$7bnまで急上昇していた。もう少し詳しくみたいのであれば、FEDのABCP残高統計および銀行のB/S統計をみればわかり易い。1ヶ月でほぼ2.5倍になっている。

こうした現象はcounterparty riskが顕在化したLTCM破綻時やS&L危機或いは日本の不良債権問題とも本質的に異なり、証券化時代に金融システムの抱える新たなリスクの火種といえる。今後業界がこの問題にどのように対処していくかウォッチングしていきたい。私の印象としては、本来信用創造は景気と正の相関を持っていて当然ではあるものの(景気悪化=>資金需要減退=>貸出減少, vice versa)、間接金融の作り出す相関に比べ、直接金融の方が相関が高い或いは振れが大きいといえそうで、このあたりの制御を問題意識とした更なる研究が必要なんだろうな(それともacademicの世界ではもうあるのかしら?)。

ちなみに、ECBが今回利下げしなかった理由も、欧州では個別行の損失からくる旧来型の信用収縮(英ノーザンロックが好例)に止まり、金融システム危機にまで発展しなかったことが一因であると考えると納得がいく。

市場へのインプリケーションとしては、グリーンスパン・プットの復活が明確な形で確認されたことはプラス。一方新たな金融システム上のリスクが確認されたことはマイナスで、調整局面は長引きそう。対策が講じられるまでには更に時間が掛かる見通し。もちろん市場はブル・スティープで反応。同時にグリーンスパンの謎も解けそうですな。

追記(10/10/07):ようやく短期市場の混乱も治まってきそう。それにしても8/10時点でuk base rateとO/N LIBORのスプレッドが72bpにも達しているにも関わらず、BBA O/N repo rateとのスプレッドは35bpに留まっているのは面白い。それと英国の短期金融市場の方が早くから混乱し始めていた事が見て取れる。ちなみに、店頭ではこの混乱に先んじてLibor fundingをBase rate fundingへ切り替えるswapが観測されていた。

火曜日, 9月 18, 2007

FED 50bpの利下げを決断

本日FEDが50bpの利下げを実施。株式市場は一様に好感し、North America +2.9%, Brazil +4.28%, Argentina&Mexico +2.7%の大幅高を記録。リスク許容度の上昇と共に、予想通り円相場も下落中: 116.12 (+1.20)。ふーむ。遂にバーナンキ・プットが出現しましたな(この点についてはまた機会を見て詳述する予定)。ただ、Crude Oilも+1.7%上昇で最高値更新($82.38/bbl)ですよ。バーナンキ議長も今後はよりいっそう得意のインフレ退治にターゲットを絞った金融政策に邁進できるというもの。裏返せばよっぽどインフレ対策に自身があるんだろうねヽ(´ー`)ノ

ところで、水野さんはFRBのこの判断を受けてどうするんだろう??やっぱり利上げに一票ですかね。

日曜日, 9月 16, 2007

続報 サブプライム関連 第2フェーズへ突入

(このコメントを入稿したのは8月下旬だったわけですが、その後第2フェーズは既に終了し、今週のFOMCの判断如何によっては第3フェーズ突入です)

さて普段ならば夏休みで閑散とした相場であるものの、今年の8月はかなり熱い月でした。商いが薄い中で、幾つか悪いニュースが重なって、8月第1週は本当にさんざん。一部の欧州系銀行がサブプライム関連投資で大損をこいたことから、円キャリートレードの解消が誘発されると同時に、世界規模の株式ポジションの調整から円売りのヘッジ玉が戻り、一気にドル円は112円台をつける展開へ。

この展開は本当に面白いものを見させてもらったという意味も込めて、整理しておきたい。

8月13日の週:

月曜日: ゴールドマンが自身のファンド(Global Alphaではなく、Global Equity Opportunities Fund)へ$3bnの資金注入を決定。米国株式市場はこの朝方の報道を受け一時は持ち直すも、結局下げて引ける(後日談として、この$3bnはその後の相場の回復を受けて、一旦回復したものの、9月第一週は1.8%下落している模様)。

その後、株式市場は引き続き全世界で全面安の展開に。水曜日・木曜日にかけて、ドル円相場が112円代前半をつけるド━(゜Д゜)━ン!! 株についてはその後弱いながらも買いが入るが、円だけの急落に何故だか疑問。これは、ストレステストを実施していれば、事前に予測がついたかもしれない。特に、前回3月の世界同時株安から主要プレイヤーがどのようなポジションを積んでいたかを詳細に調べておくべきであった。結局のところ、結論としては
  • 欧米主要ファンドの日本株エクスポージャーはほぼ円ヘッジ済み(円売りポジション)。
  • キャリートレードの主要なファンディング元である欧州系銀行の円エクスポージャーもほぼヘッジ済み(円売りポジション)。
  • 一部買収案件の資金調達に関わって発生した円エクスポージャーもほぼヘッジ済み(円売りポジション)。
となっていたようだ。従って、今回起った対ドルでの円の急騰は、リスク調整に伴う日本株エクスポージャーの削減に伴うヘッジ玉の戻りと、欧州系銀行のクレジット悪化に伴うキャリートレードのファンディング先の変更或は解消に伴うヘッジ玉の戻りが主因になっているものと理解される。

ただし、ドル円の急落と機を一つにして、日本でのコールマーケットで資金不足が発生していた事に注目しておきたい。この前の週に行われたECBの資金供給と歩調を合わせて行われた日銀の10兆円規模の資金供給によって、火曜日にはゼロ金利まで下がったコールレートが外銀からの調達意欲を背景に急騰。一旦資金を引き上げた日銀が、週半ばには一転して資金供給へと追い込まれるという珍事(?!)が発生していた。積み期間との関係も考慮に入れる必要があるものの、キャリートレードとの関連で言えば、円相場が円高方向へ戻ると同時にキャリートレードを積みました向きがあるといえそうだ。

金曜日: メルトタウン寸前のNY市場に対し、FEDがdiscount rateの0.25%引き下げを発表し、すんでのところでmeltdownを回避。これは、前回FRBの声明文に明記されてあった窓口割引のレートのこと。さすがに利用を促すだけでは駄目だと思って、レートを下げてきた。この戦略はそもそも規定路線ではあったのだろうけれど、御見事です\(^o^)/。余談ながら、午後に予定されていた外部のエコノミストとのconference callもこのために急遽中止され来週へ延期 (;´Д`)

その後、8月20日の週は比較的落ち着いた動きに。主要銀行が坦々とdiscount windowを使った旨のアナウンスを流すとともに、バンカメはここぞとばかりに米国住宅ローン市場最大手のcountry wideの買収を発表。さすがに狙ってましたねという感じ。やっぱりここアメリカはその昔テラノザウルスが闊歩していた場所だけあって、弱肉強食だぁー (;´Д`)

マーケットへのインプリケーションとしては、引き続きキャリートレードは続きそうであるという事と、今後株式市場(特に日本)が軟化することがあれば、同時に円高が発生する可能性が高いということ。逆にいえば、日本株が堅調である限り、ヘッジ玉に伴ってドル高(外貨資産高)へ触れやすくやっており、日本の投資家にとってはユーフォリアの復活である。もちろん来週のFRBの判断には注意が必要だが、前回のエントリーでも触れたとおり、今回のサブプライム問題は米国の消費者への影響に関してはニュートラルもしくは小幅マイナスに止まる見通し。後は、住宅ローン関連のビジネスを持つ企業動向次第であろう。

土曜日, 9月 08, 2007

ボラティリティのボラティリティ

やはりDermanの云うように、最近のクオンツ系ファンドのパフォーマンスを見ていると、こうした戦略は基本的にボラティリティのボラティリティに関してショートになっているようだ。興味深い。

月曜日, 8月 20, 2007

ファンドの流動性リスクの測定方法

RiskMetricsの今月号は面白かったので、ちょっと引用してみる:

...even if the agencies do their job well, it takes a long time to link new information about mortgages to new expectations on the likelihood of a CDO tranche paying its full interest and coupon
....For any investor, illiquidity presents the difficulty that new information is not reflected in prices in a timely manner, and when it is reflected, it is almost always through a significant price jump.
これはまさしく以前のエントリーで指摘した通りで、違和感はない。しかし、この流動性クランチの波の広がり具合についてと、その対処法はというところで面白いポイントが挙げられていた。

1.Trancheへの影響度合い

今回よく見られる指摘は、リスクが複雑に分散されていて、例えばどの商品が被害を被りそうか判断が難し く、よけいに参加者の疑心暗鬼を誘っているというものがある。この点については、ABXのボラティリティを分析することで、マーケット・インパクトを推計できる。ここで特徴的なのは、GMショックや今年2月の世界同時株安時に見られたような低格付け債だけが影響を受けるという構図が崩れてしまっていること。今回はきっちりAAAレンジまで影響を受けている。これは、mortgage poolの毀損が強い相関を持って起こっている事の裏づけと考えられるわけで、やはりmortgage market全体の構造変化が起こっているのだろう。Markがなかなか取れないときには、一気に相関を100%として、ビンテージの違いだけを意識したMark to Indexも一つの方法ということか。

2.ファンドの流動性リスクの測定方法

つぎにどのファンドが被害を被るか判断するにはどうしたら良いか?1つの方法として、ファンド・リターンの自己相関を測定すれば、どれくらいの流動性リスクを持っているかが把握できる。すなわち、Mark to Modelしていて、かつモデルをキャリブレートするのに十分な流動性がなければ、本来ある筈のない自己相関がファンド・リターンに現れる筈であるというもの。実際、熊さんのファンドの自己相関を見てみると、明らかに流動性がなかったことが読み取れる。ちなみに、レポートでこの分析の例外として指摘しているBasis Capitalについてだけれど、レポートで取り扱っているファンド名がBasis Pac-Rim Opportunity Fundとなっているのは間違いではないかしらん。正確には以前のエントリーでも指摘しているように、担保コールをしくったのはBasis Yield Alpha Fundである。FTの7/19付けの記事にも次のようにあるし。

Basis also warned investors in its other main fund, the Pac-Rim Opportunity fund, that it held a $79.8m stake in the Yield fund. But they said the Pac-Rim fund had more than half its investments in liquid bonds, and that it had not missed any margin calls.
たぶんYield Fundのリターンを分析すれば、同様の結果が得られるのではないかな。なので、この方法によれば、やばそうなファンドをほぼ全て炙り出せるというワケ(^ω^)。投資先のファンドのNAVの履歴は皆さんお持ちでしょうから試してみるとよいでしょう。

月曜日, 8月 06, 2007

クレジット市場発の信用収縮はあり得るか

グッチーさんのエントリーでも書かれているように、最近はクレジットマーケット発のメルトダウンの可能性が取り沙汰されている。

サブプライム、それから派生したHFの利回りを上げるために大量発行されたCDOエクイティーの無価値化→そこからくる投資適格債券のジャンク化→それらを複合した、特にMBS,USTがレポに出ていることからくる信用収縮→クレジットマーケットの崩壊・・・・

そこで、本日のお題:「「クレジット市場発の信用収縮はあり得るか?」

まずは、信用収縮って一般にどのように理解されているのだろうか。辞書(goo辞書)を引いてみると、

【信用収縮】

金融市場で取引が停滞したり,資金供給が細る現象。金融機関が不良債権処理や自己資本比率引上げなどから,貸付金の回収や貸出しを控えることで引き起こされる現象。

とある。このような状況は、一般に金融引き締め局面、或いは景気後退局面において経済ファンダメンタルズと密接に関連した上で起こるのが常であろう。また、過去の経験から一部のレバレッジ・ファンドの経営危機・破綻に伴う金融システム自体の機能不全と関連付けられることもある(LTCM, Amaranthのデリバティブ取引, 山一證券の無担保コール取引)。

では、本日のお題「クレジット市場発の信用収縮はあり得るか」を考えてみよう。結論は否である。

何故か。その説明に入る前に、いろいろな誤解を解くためにも、過去の事例の整理とクレジット市場の基本を整理しておこう。

1. レバレッジ・ファンドの経営危機・破綻に伴う金融システム自体の機能不全からくる信用収縮

この可能性は現在の金融市場ではかなり低くなっている。LTCMの破綻時には、デリバティブ取引などに伴う信用リスクが正確に計測されていなかったこともあり、損害はファンドそのものだけでなく取引のある金融機関全てに波及する事となった。かつほぼ全ての金融機関がLTCMと取引を行っていた為、その損害は甚大なものとなりFEDがシステマチック・リスクに対処するために緊急対策を打った。しかし、同様に巨大なコモディティ・ポジションを保有し、危険な賭けをしていたAmaranthの破綻時(06年秋)には取引金融機関が損害を蒙ったという話は聞かないし、むしろ報道の焦点はこのトレーダーの経歴などに当てられていてゴシップ記事のようであった。ただ、実際にはny heating oil futuresのカーブがAmaranthの破綻後に急激に変化するほどのポジションが積み上がっており、OTC derivativeでもかなりのポジションを保有していて、うちでも担保を通して巨大なエクスポージャーのマネージを余儀なくされていた。

この事例は、一つのファンドの破綻はもはやシステマチック・リスク(信用収縮)を引き起こすものではなく、金融システムはこの問題に対する対処法(信用リスクのマネジメント)を既に実践済みであることを示唆している。もちろん技術レベルの低いところは未だにこの類のリスクにさらされてますが。。。(;´Д`)

2. クレジット市場と株式市場の関連

Merton Modelによれば、クレジットの買い持ちはAsset Value(B/Sの左側)のdeep out of the money putの売り持ちと同等である。また、株はAsset Valueのdeep out of the money callの買い持ちと同等である。すなわち、クレジットはAsset Valueのオプションであり、それ自体の変動によって株自体へ影響を与えることはない。重要なのは、Asset Valueであって、所謂企業業績のファンダメンタルズである。これは、モデルに関係なく資本構成を考えれば当たり前の結論であろう。ちなみに、同じクレジット商品ではあるものの、MBS(Mortgage Backed Securities)と一般債とではリスクの源泉が異なることに注意しよう。一般債は、上で説明したとおり、Asset Valueに関するout of the money putの売り持ちが利益の源泉であるわけだが、MBSは早期償還リスク(このリスクはほぼ金利の変動に連動する。すなわち金利が下がれば借り換えによって早期償還が増加し、金利が上がれば早期償還も減る)に関するout of the money strangleの売り持ち(+個々人のAsset Valueに関するdeep out of the money putの売り持ち<<0)が利益の源泉となる。

従って、クレジット市場が動揺したところで、経済ファンダメンタルズの主要な部分である企業業績が堅調な現在の状況下(株価には上昇圧力)では、ファンダメンタルズの悪化とそれに伴う信用収縮を予想する向きは少数派であろう。もちろん、サブプライム問題が経済ファンダメンタルズそのものへ影響する可能性もあるだろうが、FRBも含めてその可能性自体は低いと見られている(利下げ観測の後退)。また、幾つかのファンドの経営危機・破綻が明らかになってきているが、上記1.で説明したようにこの問題が過去の事例と同様にシステマチック・リスク(信用収縮)を引き起こす可能性は極めて低い。むしろ、担保の受け渡しを通して、マーケットは適切にそのリスクを調整していると見るのが正しい。すなわち、本日のお題に対する答えは「否」である。

**LTCMのポジションについては下記の論文を参照のこと:

Philippe Jorin (2000), "Risk Management Lessons from Long-Term Capital Management", European Financial Management 6 (September 2000), pp. 277-300

Eric Benhamou, "Lambda (options leverage)", FICC, Goldman Sachs

土曜日, 8月 04, 2007

NYでの生活立ち上げ記録 ~ クレジット・ヒストリー編

実はNYに来てから一番困ったのがこのクレジット・ヒストリー。いろいろと関連事項を調べたので、まとめてみたい。

まず、クレジット・ヒストリーとは個人の信用情報を指す。これはアメリカ全土で共通かつ固有の概念で、クレジットカードの発行、銀行口座開設、住宅ローンを含む個人向けローン商品全般の承認時はもちろんのこと、携帯電話やApartmentの契約時などおよそ個人向けに信用供与される場合にはすべてこの情報が参照される。

そして最大の難点はアメリカに住み始めたばかりの外国人には、この信用情報がないということ。そもそも情報がないのだから、信用供与は論外で、担保を入れて必要な信用枠を自分で勝ち取るしかない。。。

それはさておき、この情報は350-850の間の数字(Credit Score)として一般にやり取りされており、法人の信用情報が2,3の格付け会社に独占されているのと同様に、この数字(格付け)を付与する民間企業が3社(Equifax, Experian, Transunion)存在する。これらの会社はそれぞれ独立しており、それぞれの情報ソースは異なるようだ(この点については後述するが、自分のクレジットレポートを取り寄せてみたところ、それぞれの情報更新のタイミング異なることが判明した)。想像するに、主な守備範囲・情報ソースの所在が米国内で東部・中部・西部にわかれているのだろう。

これらの情報は、基本的に何らかの信用が個人に供与された時点から記録が開始され、税金を納めている人にはすべからく割り振られているSocial Security Numberによって認識される。したがって、市民の義務はまず税金を納めることであるとされる米国ではほぼ全ての市民の信用情報がこの3社によって収集され蓄積されていると考えてよい。これは、日本の消費者金融業界が共有しているとされる信用情報システムとは比べ物にならない規模であるし、そのカバーする範囲が個人向けローンだけではなくクレジットカードの信用枠とその使用比率などより広範に亘っていることを考え合わせるとその利用価値は計り知れない(EquifaxはWall Streetの入り口、NY証券取引所のはす向かいにオフィスを構えている)。

実際、住宅ローンの証券化の際に必要とされる、ある特定の属性を持つローンプールの切り出しなどもこのCredit Scoreを使えばかなり簡単に実行できるし、設定されているローン金利との間にも高い負の相関がある。日本市場の場合は、こういった情報のフォーマットも統一されていないし、異なる業界内で個人の信用情報を共有化することもまだ実現できていないというのに。私は以前ローンプールの属性分析をしていたのでよくわかるのだが、こういった情報があるのとないのとでは分析にかかる時間もさることながらそのリスク特性把握の正確性の面で非常に大きな差ができることになる。住宅金融公庫MBSの場合はまだましであろうが、それでもこういった分析の限界から債券価格がミスプライシングされている可能性は未だに十分残っているというのが市場のコンセンサスだ。いわんやバルクで割引販売している都市銀行の住宅ローンの属性分析など、まともにできてはいないだろう。また、金融商品のクロスセルやマーケティングの際にもこういった情報が利用されているのは想像に難くない。あくまで一般の個人の立場でも、例えば以下のような情報が簡単に手に入るのだから:私が住んでいる地域(郵便番号10022)の住民に関する個人情報の統計。

もう一つ注目すべき点は、自ら申請さえすれば、Credit Scoreはその概要を示したCredit Reportと共に、法律によって年に一回無料で個人に対して開示しなければならないと規定されていことだ。また、どういった場合にCredit Scoreが変動するかというCriteriaが各社からきちんと開示されている。逆にいえば、どうしたらCredit Scoreを上げられるかが示されているわけで、いったんブラックリスト入りしても敗者復活が可能になっている(このためのコンサルティング会社も存在している)。このあたりがいかにもアメリカらしい。てんで駄目な奴にも自分の力で這い上がってくるのなら、チャンスを与えようということなんだろうな。むぅヽ(´ー`)ノ。

ところで、マーケティング(?)絡みで面白いサービスを発見したので、メモメモ。Branchさんのエントリー(7/25付)を見ていたら、webへのアクセス元の位置解析サービスを提供しているサイトを発見。統合参謀本部も採用しているからさぞかし信用できるサービスなのでしょうド━(゜Д゜)━ン!!やっぱり、日本も捨てたもんやないね。

水曜日, 7月 25, 2007

サブプライム

野村、米サブプライムで720億円の損失・撤退を検討 (日経)

野村ホールディングスは25日、米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン市場の悪化で、1―6月で累計約720億円の損失を出したと発表した。記者会見した仲田正史執行役は米国での住宅ローン担保証券(RMBS)事業から撤退を検討していると表明。同事業の縮小を含め、赤字が続く米国事業の立て直しを急ぐ。--

(゜Д゜)ハァ!おいおい野村よ。今頃ですかぁ~~??しかも720億って。。本土テロやブラックマンデー規模のMarket Crisisがあっても、こんなに普通は損しないだろうに。しかも損失を出したのは米国子会社で本体ではないという。どんなリスク・マネジメントしてるんだかほんとにガックリさせられる。たまたま相関がほぼゼロと考えられる株式市場のほうが盛り上がったから、損失を埋め合わせできたようだけれど、これって運じゃね?そもそも金融市場のリスクを事業分散で吸収しようという考え方が間違っているのに。

最近のマーケットの動向に関しては追記予定。

日曜日, 6月 17, 2007

邦銀・日系証券におけるクレジット・リスクの認識 その2

もう数ヵ月前になるのだけれど、日本で唯一ファイナンシャルテクノロジーを組織として追求している会社の友人と夕飯を食べていたら、また面白いコメントがあったので紹介したい


「しかしカウンターパーティリスクをかなりまじめにやってるんだね。邦銀と違っていろんなカウンターパーティがいるんだろうか。」

いえいえ邦銀の方が日本だけを取り上げれば取引先は多いでしょ!!特にメガバンクに限っていえばもう取引先ではない企業はいなんいんじゃないんですかね。とまずは 軽く突っ込んでおきましたが、これも日本におけるリスクマネジメントの在り方について様々な問題提起を連想させるという意味で、良い事例です。まずカウンターパーティリスクはデリバティブ取引から発生する信用リスク部分であって、確に日本ではあまり注目されていないリスクであることは確か。特に、仕組み預金に組み込まれているデリバティブ取引の場合には、預金部分でそのリスクを一般的にカバーできると考えられていることからほとんど無視されているのではないだろうか。ただし、ここにまたしても落とし穴がある:

1. リスクは小さいと考えられているというが、その根拠はなんなのだろう?自分の経験では、どうしても適切に計量化されているとは言い難い。
2. リスクがあることがわかっているのであれば、それを把握する体制を整えるのがリスクマネジメントの基本である。特に、この場合には彼らにとってはヘッジできないリスクである筈。

たぶん彼らにとって、リスクとはmangeするものではなく、管理する対象なのであろう。サッカーで言えば、ディフェンスとラインマンの違いに相当する。ラインマンはある一定のルールを犯した場合に、試合を止める権利を持つ審判であるが、主審に比べるとその判断は「恣意性」のないものであって「客観的」である。ディフェンスは相手の陣形から得点につながる危険なパスコースをあらかじめ消さなければならないし、危険を察知した場合にはその機会を「能動的」に潰しに行かなければ仕事にはならない。非常におおざっぱだけれども「保守的な」基準でもって最終ラインさえ押さえて管理しておけばよいというのが邦銀・日系証券のラインマン的リスク管理であろう。それに比べて、あるとわかっているリスクはその大きさを正確に見極めた上でmanageするのが欧米流のディフェンス的リスクマネジメントであろう。リスクの計量化はその第一歩であって、その次の段階では是が非でもヘッジの方法を確立するものである。そもそも真面目にやらないリスク・マネジメントなど存在しないはずだ。

この話題に関連して、最近次の本を読んでみた:「大本営参謀の情報戦記 - 情報なき国家の悲劇」(堀 栄三)。国家としての危機管理とはなんであろうか、という主題に十分答えられる内容になっている。著者の結論は、「情報」であって、この収集・管理こそが現代の国家レベルでの危機管理だというわけだ。米国のCIAしかり、英国のMI6、またはフランスのDGSE+DST(国防省対外治安総局+国土監視局)がこの任務を負っている。それに比して、日本はどうであったか?これは企業レベルにもいえることであろう。

土曜日, 6月 09, 2007

邦銀・日系証券におけるクレジット・リスクの認識 その1

友達と話しているといろいろと発見があって面白いものだけど、リスクの認識方法に面白いコメントがあったので紹介してみたい。

「最近与信枠を使っていないみたいなので、削減しますね」

昔から時々意味が飲み込めずに不覚にも絶句してしまう瞬間はあったものだけれど、この時のインパクトも相当大きかった。この発言は、友達が日系証券会社のリスク担当者との会話の中で聞き及んだものなのだけれど、彼らが抱える内部矛盾を端的に示している点において深い。まず、1) 与信枠とは使っていないと削減されて無くなってしまうんかい?!、そして、2) 与信枠の管理において相手方となる企業の信用リスクの推定は議論に出てこないんかい?!、ということ。確に使っていない与信枠をリスク管理上敢えてメンテナンスしていく必要はないわけで、一見筋が通っているようにも見える。けれど、果たしてそれだけで与信枠を削減する根拠になるのか??そうここで本来ならば相手方の信用リスクの推定の必要性が出てくる筈なのだけれど、この発言はそこにはまったく触れずに一気に結論まで進んでしまっている。ちなみに、この相手方の企業とはビジネスが継続していてエクスポージャーもそれなりに積まれている状況であった。つまり彼らが抱えている内部矛盾は、

1.信用リスクを管理するための与信枠であるにも関わらず、個別の信用リスクの推定がおそらく行われていないこと。
2.与信枠とは文字通り信用リスクをある一定範囲内に収めるための物差し(数字)であるにも関わらず、物差しの基準がはっきりしないこと。

、なんだろう。なので、本来は信用リスクが変化した場合にのみ、ある一定の管理ルールの元で改訂されるべき与信枠がこのように非常に属人的な判断で決められてしまっている。思うにこれは債権区分毎に限界与信枠を決めて総量規制をするようなイメージの銀行系の考え方なのかもしれない。でもこれではどうしてもバケット内でのやりくりとして債権の集中リスクは避けられないし、あるバケットから他のバケットに取引先が移動する場合などに迅速な対応は図れない筈。そしてまさしくこれが邦銀の与信ポートが抱えている致命的な問題なのだろうと思う。こういった問題を解決するために、資本配分の議論などが出てきて、相関を考慮したデフォルトモデルを元に計量化を試みているのかもしれないけれど、僕に言わせれば何故個別の取引先毎に信用リスクに応じた与信枠を設定していかないのか非常に疑問。やっぱり、まずは個別リスクこそ与信枠を使ってある一定範囲内に収めた上で、相関を考慮してシステマティックリスクをindex取引でヘッジするのが筋だよね。そして個別リスクを与信枠に収めるときにこそ、ローンパーティシペイションやらCDS取引やらで個別ヘッジの必要性がでてくる。しかしあれだけひどい目にあっていながら、その根本的な原因の解決がなされていない様には本当に絶句させられる。。