その前に幾つか第4フェーズのポイントを:
- 一連のdefault experienceを2002年のITバブル崩壊期と比較してみると明らかなように、今回は金融セクター発の危機である。よって、ポイントは金融システム全体(Wall Street)でどの程度の損失が発生し、システムはその損失に耐えられるのか?、という点。
- 直接金融・間接金融を問わず、金融セクター発の危機であれば信用創造のメカニズムそのものが目詰まりを起こす可能性があり、実体経済へはFFレートの引き 上げと同等の影響を及ぼしかねない。よって、ポイントはこの効果を相殺するためにFEDはどの程度の利下げを実施する必要があるのか?、という点。
- そもそも、サブプライム関連の証券価値についてはどの程度まで損失を見込めばよいのか、誰も納得感のある数字を示すことができていない。よって、ポイントは現状唯一の情報源である市場の価格付けがどこまで信頼に足るものなのだろうか?、という点。
- 11月末時点: 単純に計算すると確率は7.5%となる。但し、各種統計に誤差項を加味すると、11.31%まで上昇の可能性がある。但し、ポイント2.の効果を1%の利上げと同等とすると、この確率は20%台前半まで上昇する。ちなみに、過去の統計をみると、20%台前半まで上昇するのは1つの景気拡大局面あたり多くて2-3回しか発生しておらず(1964年以降のデータによる)、危険水域と判断されよう。過去の例では、60%以上でアウト。
- 7月時点: ちなみに、この時期には単純に計算しても確率が27%となっており、明らかに危険水域入りしていた。
というわけで、今週のFOMCは下げ幅だけでなく、コメントについても要注目です。さて、では最後に時系列順に後始末の経過を追っていきましょう:
- 10/17/07(WSJ) ようやくCP市場は持ち直し。Super-fund設立の動きが報道されたこともあり、CP市場は発行残高が季節調整後で$1.3bn増加し、$1.888tnとなった。これで2週連続の増加(その前週は$4.9bn+)。一方ABCP市場は$11bn減少したものの、これまでの各週平均$70bnの減少に比べると市場環境の好転が伺える。大相場はこれにて実質的に終焉した。あとは後始末ですが、、
- ちなみに、主要なSIVの資産残高は右表の通り。Citi様のaffiliateはやっぱり多い。さすがにこんだけ多いと幾ら真面目にsuper-fund立ち上げても飛ばしだのきな臭いだの罵られても仕方ないかも。僕としては同意できないものの、マエストロもさすがに耐えられなかったみたい(source: New York Times):Mr. Greenspan’s take, expressed in an interview with the magazine Emerging Markets, seems broadly similar. “If you believe some form of artificial non-market force is propping up the market,” he said, “you don’t believe the market price has exhausted itself.”
- 10/19/07(Bloomberg)金融機関の損失発表が相次ぐ中で遂にSIVのデフォルト報道がドイツで。また欧州かよ(#`Д´)。Cheyne Finance PlcとIKB Deutsche Industriebank AG傘下のRhinebridge Plcです。Rhinebridgeについては、9/10付けでMTNがAAAからBBB-に格下げされていてかつ9/7, 9/10付けでBarclays Capitalとの間の流動性供給枠を使ってしまっているわけで。。デフォルトには今更感が漂うものの市場は大荒れに(;´Д`) もっともS&Pによると、資産は額面の63%まで劣化してしまっているということでこれはさすがに酷い。ちなみに、Moody'sの調査によると、SIV全体のnet assetをみると8/1時点で92-3%(一ヶ月で9-10pt下落)、9/1時点で85%となっている。
- 10/24/07 (WSJ) メリルが$8.4bnの評価損を計上。もうこれは野村と同列ですね。きちんとリスク管理の方法論を確立してから投資銀行と同様のビジネスモデルに参入しましょう。リテール証券としてのビジネスモデルは既にきちんと確立しているわけだから無理しなくてもいいのでは。。ヽ(´ー`)ノ とりあえず、ポイント1.に関する第一報が正式に報道されたのがこのタイミング。
- 10/25/07 (WSJ) ちなみに、これまでの報道(本格的な後始末前)をWSJが綺麗にまとめてくれました。ご苦労様です。あぁもう今年の金融業界は格好の餌食ですな(;´Д`) そしてこの程度で後始末が終わるはずもなく、、
- 10/31/07 FEDが25bpの利下げを決定。報道直後こそ一旦市場は失望売りで下げたものの、1時間後には回復基調へ復帰。公式発表にある通り、とりあえずこれで利下げは当面打ち止めなのか、、、と皆が思った瞬間。
- 11/3/07(WSJ) Citiも$12bnの評価損を第4四半期に計上することに。遂にPrince CEOも退任に追い込まれてしまい、ルービン大先生の登場です。しかし、ちょうどこの発表があった3日前に(11/29)に日本ではCitiの上場が東証に承認され11/5に上場を果たしたわけで、ホント金融庁(或いは東京市場?!)ナメられてますね。
- 11/7/07(WSJ) Morgan Stanleyも$3-6bnの評価損を計上する可能性をアナリストが指摘。株は猛烈に下げてます。うぅ。株はこれらの報道を嫌気して全世界で下がりまくり。市場が予想する金融システム全体としての損失規模が一気に上昇したのがこのタイミングではなかったかと。
- 11/15/07(WSJ) ファニーメイに関する追加損失懸念から、株価が一日で10%も下落。もう泣きっ面に蜂状態です(;´Д`)
- 11/27/07(WSJ) アブダビ投資庁がCitiへ$7.5bnの資本注入を発表。待ってました、ようやく救いの手がキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!! やっぱりオイルマネー強し。この辺りが数年前に起こった日本の金融危機と根本的に違うところですね。あの時は日本政府以外に誰もメガバンクに資本注入しようなぞとは思わなかったもんです。
- 11/30/07(金融庁) 遅きに失するとはこうしたことを指すわけで。金融庁による報告と預金取扱金融機関のサブプライム関連エクスポージャーの保有状況について。完全に世界の流れに取り残されてますが(;´Д`)
- Nov-Dec 2007 就職活動中の知り合いによると、投資銀行の採用はどこもストップ。今年前半まで空前の採用ブームだったのが嘘みたい。唯一採用しているのはリストラクチャリング中の野村だけだとか。。ただ、別の知り合いによるとGSは特にストップしているわけでもないそう。やはりどの分野でもアグレッシブなのか?!
- 12/5/07 約2年半ぶりに英国中銀も利下げを決断。
- 12/6/07 午後にブッシュ大統領がサブプライム・ローン関連の対策を正式発表。株は折からの利下げ期待に上がっていたところを、さらに上げ足を早めS&P500は前日比+1.5%で取引を終了。11月末を底値として1週間程度で7%近く上昇したことに。それにしてもsuper fund構想は腰折れに終わりそうだし、この対策も効果があるのかどうかは疑問。10月からの一連の報告で金融システム全体(Wall street)としての損失規模が見えてきたので、ポイント2.で挙げた効果を見極めた上で、一気に利下げで後始末を終わらせる腹積もりかしらん。11日の利下げ幅が焦点ですな。
- 12/8/07 ちなみに、サブプライム問題・米国経済のresession懸念にもまったく動じずに日本では更なる政治による混乱が加速中(;´Д`) 改正建築基準法によるマンション建築の遅延、貸出し上限金利の厳格化、信用保証協会による保証枠縮小、更にはガソリン税の暫定税率継続に民主党が反対の姿勢を明確にするなど、この手の話題には事欠かずといった様相を呈してきた。結果オーライなら良いのだけれど、当分視界不良が続きそう。。やっぱりアンダーウェイトにせざるを得ないのか。
- 12/10/07(WSJ) UBS が$10bnのwrite-downを報告。と同時に、GICから11bn Francs, 中東の投資家から2bn Francsの合計13bn Francs ($11.5bn)の資本注入を受けることを発表。注入方法は、Citiと同じCBの形で、クーポンはなんと9%。一気に膿を出した事を概ね好感し、株式市場は上昇。ただし、日本のマーケットは何故か下がり気味??日経の第一報が資本注入にまったく言及していないのもどうかと思うが。。
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