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水曜日, 12月 30, 2009

行く年来る年 2009 (III. マーケット動向総括)

マーケット動向総括とはいっても、ご存知の通り今年は業務の忙しさは当然のこと、無い頭を振り絞っていろいろなアイディアを捻り出すのに夢中だったので、正直マーケットを追えてませんでした。とはいうものの、メイントピックは流動性とクレジットの動向だったわけなので、これらを表す代表的な指標を見ていきましょう:

1.LIBOR-OIS spread (Banks)

LIBOR rateとOIS rateとのspreadについてはいろいろな見方があるものの、結局のところ流動性とクレジットの組み合わせなんでしょうね。この記事にもあるように、米国は流動性(或いは銀行の資本制約)が原因であると見ていますが、欧州では銀行間のクレジットだと(最近こんなpaperも出てます)。いずれにしても、12/30付けでこのspreadはほぼ正常値である10bp程度に戻ってきています。

Date 1MO 3MO 6MO 12MO
12/31/2008 25 121 151 159
12/30/2009 9 8 21 50

去年の夏から始まったLIBORの決定方式についての議論も、今年の6月に発表された下記の変更だけでなんとなく幕引きにしてしまうのですかね。

Defining the L in BBA LIBOR

The independent Foreign Exchange and Money Markets Committee discuss the definition of BBA LIBOR each time they meet, to ensure the rates remain the best possible benchmark for these rapidly changing markets.

Currently, the notes that accompany the definition of BBA LIBOR state that: "Contributions [to the rate fixing process] must represent rates formed in London and not elsewhere"

At their recent meeting, Committee members felt that this could be further clarified as there could be different interpretations of what constitutes a rate "formed in London". In addition, there are many major participants in the London money markets that are either not physically located in London, or do not book trades in London.

Therefore, with immediate effect, this note accompanying the definition will read:

"Contributions must represent rates at which a bank would be offered funds in the London Money Market"

This clarification will not affect the way in which current contributors formulate their rate submissions. However, it may allow banks that participate in the London markets, whose eligibility for inclusion in the fixing was not previously clear, to apply to join the panels. This is in line with the commitment made last year as a part of the LIBOR consultation to allow expansion of the LIBOR panels, whilst ensuring that LIBOR remains a tightly defined measure of the cost of unsecured interbank funding each morning in the London Market.
ちなみに、TED spreadから見ても、インターバンク市場が正常化しているのが見て取れますね(source: Bloomberg)。









2. A2P2 spread (Non-financial)

さて、金融業以外では高格付け企業と低格付け企業とのクレジット格差が広がって大変なことになってましたが、それも下記のグラフにあるように正常化してきています(source: FRB)。









***********最後にちょっとだけ毒を吐いちゃいます******************

NHKの『マネー資本主義』。。こりゃ一体なんやねん。そもそも何故に如何にも異なる種類の資本主義がいくつも在るかのように報道すんだよ。

これもほんまいい加減にしろ → http://nymag.com/news/business/55687/

十年前に『マネー革命』を作ったのと同じ放送局とは思えん。。内容のあまりの劣化に愕然とする。どうしてこうなってしまったのか。。。あの頃、まだ大学院生だった自分が初めてQuants/Stratsの世界を知る機会になったのがあの番組とそれに続く書籍だった事実を鑑みると本当に哀しい。あの番組では確か最後に、『こうした金融の先端技術を支える人材が今は日本にはいないが、今後育成すべきであり、日本の金融業界はそれに挑戦していかねばならない』といったメッセージが発せられていたように思う。それが10年後にこの体たらく。当時の『マネー革命』がフィッシャーとマイロンのノーベル賞受賞とヘッジファンドの台頭に感化されてのやはり近視眼的な編成であったとしても、今回の『マネー資本主義』はあまりに近視眼的に過ぎる。裏を返せば、取材力の欠如であろう。そもそも、仲介業に過ぎない金融機関が自ら経済全般に影響を与えるような元凶となり得ないことくらい直感的に分かりそうなものだ。大きくなり過ぎたお金の流れを適切に裁ききれずに、その仲介システム自体が崩壊してしまったのが本質だろうに。だからこそ、その仲介役を復活させる為に、これまでになく流動性とクレジットが焦点になっているわけで(;´Д`)

愚痴に付き合って頂き、有難うございます。これ以上続けると自分が厭になるのでこの辺にしておきます。。

****************************************************

それでは、皆さんHave a happy new year!!

金曜日, 12月 26, 2008

Holiday Sale 2008

今年のセールはやはり駄目だったようです。昨年比でtotal retail sales(excluding automobiles)の結果をみると、11月は5.5%の減少、12月は8.0%の減少。ガソリンがかなり値下がりしているので、その影響を除くと11月で2.5%、12月で4.0%の減少 (WSJ)。弱いですね。ただ、個人的には今期のセールの売りである大幅な値下げにまんまと釣られていろいろと買い込んでしまいました(;´Д`)。なかでも驚いたのがDesktop PCとTV, オーディオ関連の値引率。それぞれ35%, 45% offが当たり前の水準でこちらが利益率の心配をしてしまうほど。僕もこの機会にDesktop PCと前から欲しかったHome Theater用の機器を買いました。部屋が広くないので奥さんとも相談して今のところ2.1chにしかしてないのですが、やはり独身時代に買った安物コンポとは比較にならない良い音で満足してます。

月曜日, 12月 22, 2008

Another milestone for my entire life

お久しぶりです。皆様如何お過ごしでしょうか。僕はといえば、なんとか激動の第4四半期を潜り抜け、今は無事にボーナスをゲットしてホッとしております。とはいうものの、前回の日本での金融危機時もそうだったのだけれど、普段連絡をしてこない古い知り合いから突然生存確認メールがきたりで、どうしたものかちょっと戸惑ってしまっていたり。僕は相変わらず元気にやってますし、まだクビにもなってもいませんし、会社も潰れてません(;´Д`) ご安心を!! でも、投資銀行業界は無くなってしまいましたね ド━(゜Д゜)━ン!!

というわけで、ようやく12月になりました。年度末もなんとか切り抜けて、待ちに待ったホリデーシーズンの到来です。NYCではThanksgivingが終わると同時にロックフェラーにて恒例のクリスマスツリーの点灯式があったりで、街も徐々に混み始めてきています。点灯式の当日は交通規制が敷かれていて、普段は20分ちょいで会社から家まで帰れるのに1時間以上も掛かってしまったり。どうやら会場ではトップスターがクリスマスシーズンにぴったりの歌を披露していたようなのですが、まったく聞こえませんでした。

ところで、最近ブログの更新が滞ってしまっているのには理由があります。まさに金融危機の震源地付近で右往左往しているわけで、正直ここには書けない事だらけの毎日なんです。ヘタを打つわけにはいかないし、臨場感のない文章もつまらないので自ずと筆が遠のいてしまいます。それにブログどころではなかったというのが本当のところですね。

とはいうものの、備忘録を残しておかないと忘れてしまいそうなので客観的な事実を中心に纏めてみます。まず今秋のイベントのポイントですが、潮目が変わる or 海の色が変わるというレベルではなく、"ビックインパクト"(恐竜全盛期を断絶したといわれる小惑星の衝突)でした。その後のマーケットが崩壊していく様はまるで氷河期に入っていく前兆のようで。。中にはスローモーション暴落とみる向きもあったものの、これだけ大きな変動があのスピードで起こるとは、、というのが正直な感想です。ここで主な市場の変動率を見てみましょう (Q4/2008):

Oil: -53.1%
NIKKEI 225: -39.5%
S&P 500: -33.6%
GBP: -17% (realized vol of 26.1%)
NG: -13%
EUR: -12% (realized vol of 23.3%)
Trsy 10y: +11%
JPY: +12% (realized vol of 31.0%)

CMBS: +50% (spread widened)
CDX: +75% (spread widened)
Italy CDS: +300% (spread widened)

こんなことってあっていいのでしょうか? 第4四半期だけでこの変動率!! そして次は主な経済指標の動きです:

Weekly Initial Unemployment Claims: 11/22時点での4週移動平均値が518,000人ということで、'91, '01の景気後退期を上回る水準。ちなみに、'91,'01共に4週移動平均値は500,000人以下。
Total housing starts: 住宅着工件数は625,000/月ということで、Census Bureauが1959年に調査を開始して以来の最低水準。90年代, 80年代初頭もこれよりましでしたね。
Builder confidence index (NAHB): 11月、12月と9 (50がneutral)です。もちろん調査開始以来の最低水準。
Retail sales: nominal retail salesは11月時点で8.4%(YoY)の下落。これも調査開始以来最大の下落率。

12月短観: 各DIは前例がない低下幅を示しています。-21pt (業況判断DI, 大企業・製造業), -22pt (海外需給判断), +7pt (大企業 雇用判断, 余剰), +6pt (大企業 設備投資, 余剰)。

こんなことってあっていいのでしょうか??そして主な中銀の政策金利の誘導目標の動きです:

ECB: rate cuts of 1.75% in two months to 2.5%.
BOE: now its key rate is at 2%, which is the lowest level since the bank's founding in 1694 (!!)
New Zealand: now its key rate is at 5.0%, which was at 8.25% at the beginning of 2008.
FED: now at 0-.25% with quantitative easing (ZIRP+QE).

こんなことってあっていいのでしょうか???

閑話休題、『行く年来る年』という句は日本語の中でも大好きなフレーズの一つです。せっかくのクリスマス休暇ですので、これから年末年始に掛けてゆっくり今年を振り返っていこうかと思います。

土曜日, 10月 04, 2008

Sep 08

ようやく魔の9月が終りました。Labor dayの週末をHamptonsで過ごした後、心機一転また年末まで頑張ろう!と思った矢先の大混乱。もうマーケットも何もかもがChaosでした。とりあえず、なんとか生き延びているものの、今後の展開は予断を許しません。このブログもだいぶ更新頻度が落ちてしまってます。100年に一度の業態転換の真っ只中にいるので、下手なことを書くわけにはいきませんしね。とりあえず、マーケットの抱える問題点と雑感を幾つか。

1.信用とは一体何だろうか。

まだ取り上げてないのですが、今年の年初から事あるごとにLIBOR問題が取り上げられてます。米系の商業銀行が嘘のレートを提示しているのではないかと。Lehmanも最後は誰にも信用してもらえず、跡形も無く崩れ落ちてしまいました。十分な審査もせずに実行されたローンは誰からも見向きもされなくなってしまって、政府が買い取るという最後のカードをきることに。金融業界に入ってからもうすぐ十年目。日本、米国で未曾有の金融危機を経験して思うのは、it's a fragile industry that we are living inということ。

2.モデルの限界点

いままでいろいろとモデルを作ってきて、自分で言うのもなんだけれど、かなり役に立っていると思う。でも、今回ばかりはモデルの限界点を目の当たりにしてしまった。予想外の事態が連続して起きることでどこまでがモデルの前提に含まれていているとしてよいのか線引きしずらいし、まったく想定の範囲外ではモデルはもはやマーケットに信用されないという意味で、意味をなさなくなってしまう。

3.金融の複雑化とフラット化

金融業界内でも複雑なスキームや商品は満足に理解されなくなってしまっている。こうした複雑化はそれはもちろん業界外の人達に不信感を抱かせる要因の一つとなるし、フラット化を通じてその影響は全世界へ拡がることに。人々の生活を容易にしたり、夢を実現するためにファイナンスを付けるのに必要な進化だったと今でも思うものの、その制御に有効な手立ては結局未解決の大問題として残ってしまった。さてはてどうしたものか。

*****

ここ一ヶ月、かなり疲れたので今日は急遽息抜きにワシントンD.C.に来てます。週末のD.C.はのどかなもので、ワシントン記念塔をバックに公園でリスを眺めてリラックス。来週も頑張りましょう!

日曜日, 5月 18, 2008

Q1/08 米国主要企業決算の結果

Q1/08 米国主要企業決算の結果は、対マーケットで16勝11敗7分でした。業種もそれほど偏ってるわけでもなく、好印象です。

さて、予想通りここ数週間はボラティリティの低い展開となってましたが、先週で決算発表も終ったので、またボラティリティがじわじわと上昇してきそうですね。

Money Marketの混乱も随分収束してきたので、また後でまとめてみたいと思います。

日曜日, 4月 06, 2008

ゲーム終盤のボラティリティ

ここ最近までマーケットでみられたボラティリティの大きさをどう理解したら良いか。サッカーの試合観戦からヒントを得てみる。ゲームも終盤になると大抵どちらが勝つのか大方予想がつくので、勝っているチームはパス回しでリスクを犯さずそのまま逃げ切ろうとする。一方、負けているチームはロングパスを出したり、ペナルティーエリアへボールを出来るだけ蹴りこもうとする。つまり、勝っているチームはスコアのボラテイリィティを出来るだけ小さくして逃げ切りたいのに、負けている側はスコアのボラティリティを出来るだけ大きくして勝つ確率を大きくしたいと考える。最近のマーケットをみていると、米国経済の景気後退局面入りがほぼ確実な情勢の中で、負けちゃっている人達が必死にボラティリティを上げていっていたような印象を受ける。と考えると、このゲーム(ベアマーケット)もほぼ終盤に差し掛かっているということだろうか?

月曜日, 3月 24, 2008

メルトダウン回避へ政策総動員!!

息つく暇もなく連続したイベントに見舞われていたマーケットもようやく落ち着いてきたので、08年第1四半期の動きをまとめておこう。ただ、表題の通り政策を総動員している割りに結果は芳しくない。理由は一連のイベントのキーワードがCDOでも投資銀行でもなく、ヘッジファンドであるからだろう。

一連の動きを理解するために3つ程ポイントを:

まず、伝統ある投資銀行であるBear Stearnsの実質的な破綻という悲しい結末をもって、08年第一四半期の相場は今後何十年も関係者の記憶に残ることとなるだろうということ。なにせBear Stearnsはもう5つしか残っていなかった投資銀行勢の一角を占めていたうえに、彼等の取ってきたスタンスも合わせて存在自体が貴重だったから(LTCMの時もここだけ資金を出さなかったし、そもそも"俺は俺でやるからお前らはお前らでなんとかしろよ"的なサスペンダーの良く似合う昔ながらの証券ブローカー気質は変わらぬ彼等のキャラ)。

次に、良くある質問として「日本国債の格下げ時、或いは邦銀の格下げ時と比べて何故にモノラインの格付けは最終的に維持されたのか?」ということ。答えは簡単で、モノラインの場合には格付け維持に資する資本増強策を打ち出して、短期間でその通りに実施したから。もちろん昨年から続いていた強烈な株安でこうした資本増強策は疑問視されていたわけですが。

そして最後に、これ程までに政策が総動員されている事態は記憶にないということ。結果として08/Q1に発動された政策は大きく分けて3つのパターンに分類される:
  1. 規制緩和 - 流動性供給を目的に国として間接的にリスクをとる方向へシフトしているのがポイント(でも日本でいう所謂公的資金ではない)。2月にOFHEOが打ち出したFannie Mae, Freddie Macについての一連の規制緩和により、一時的に$200bn相当の流動性が住宅ローン担保証券市場へ供給され、$2trの住宅ローン購入余力が生み出された。全米の07年までの住宅ローンの規模は$12tr程度なので、これはマーケット全体の15%にも上る。
  2. 金融緩和 - 今年に入ってから既に2ポイントのFF誘導目標下げが実施されている。更に、3/17より投資適格級の担保を差し出すことでprimary dealerもFEDのdiscount windowを利用することが可能に(PDCF borrowing; Primary Dealer Credit Facility)。実際3/19日時点でPDCFの利用残高は$28.8bn(!!)まで膨らんだ。US Treasury 10y/2y spreadは年初の1ポイントから3月中旬には1.5ポイントへと急拡大し、商業銀行勢の資本蓄積を静かにそして強力に絶賛推進中。
  3. 経済対策(財政出動?) - 個人所得税還付が柱。07年度の個人所得税のうち各人に$600を還付するという内容で、総額$150bnに及ぶ。実際にIRSがcheckを郵送し(或いは銀行口座へ直接振込み)始めるのは5月から。
更に、以前のエントリーでも紹介したように矢継ぎ早に理論武装した上で、Mortgage brokerから格付け会社まで、これまで当局の監視を実質的に受けてこなかった業界へあくまでも透明性の向上を目的に規制導入を検討中。市場の透明性向上を旗印にしているのがポイント。

繰り返しになるが、これだけの施策が同時に発動されている状態は正直みたことがない。一方、日本では財・金分離だとかいう屁理屈で武藤さんを承認できなかった事実が空しい。でもなんだか全部が全部、市場を後追いしているような印象を受けますが、、、

そうそれはなかなか表に出てこないヘッジファンドをもFEDは相手にしなければならなくなっているから!!そもそも熊さんの資金繰りが急激に悪化したのは、虎の子のPBビジネスでヘッジファンドが資金を引き上げ始めたのがきっかけ。まさしく現代版のA Run on The Bankだったわけで、そのスピードたるや一般の預金者とは比べ物にならず、その規模たるや伝統ある投資銀行のliquidity poolをも2日足らずで飲み込んでしまうという代物だった(SECの報告にもある通り、熊さんは確かに健全そのものだったのにも関わらずです)。FEDはまさしく考え得る最善の策を最速のタイミングで打ったわけだけれども、さすがにヘッジファンドのそれには対抗できるわけもなく(;´Д`) そして単なる金融保証会社(モノライン)の格付けの問題があそこまで大きくなったのは、ドル箱の地方債保証業務を狙ったヘッジファンドの空売り構成によるボラティリティの拡大によるところが大きい。その結果、投資銀行勢はABS CDO/Super Senior CDOのヘッジを通して巨大なカウンターパティーリスクに晒される事になり、綱引きが始まっていた。地方債業務を切り離されてしまっては後に残るのは収益性が低くリスクの高いCDS関連の保証業務だけで、云わばゴミだめ同然になってしまう。正直それではヘッジにならないし、ヘッジが切れてしまうと一気にシステム全体のメルトダウンリスクが高まる。したがって、どうしてもこのタイミングでドル箱を手放すわけにはいかず、モノラインは資本増強に動かざるを得なかったとみるべき。一方で、そうこうしているうちにいいトコ取りでバフェット氏が地方債保証業務だけ引き取りましょうなどという提案を行ってみたりでもうほんとにカオス(;´Д`) そもそも彼はわかってやってたのだろうか。。結局FEDは中途半端にMBS/CDOに対してある意味で政府保証を付けるような貸出し対策を発表することになったわけだれども(追記 4/5/08:この対策については全く誤解していました。Term Securities Lending Facility (TSLF)はそもそもGC repo対策だったんですね。しかも対象はCDOを含まずMBSのみでした(federal agency debt, federal agency residential-mortgage-backed securities (MBS), and non-agency AAA/Aaa-rated private-label residential MBS)。実際、年初から150-200bp程度まで拡がっていたGC Repo/FF spreadは4月初めには消滅している。)、その後は前述の経緯を経て投資銀行のPBデスクを通してヘッジファンドへ資金供給するということに。テクニカルにはローンのリコースは借り手の投資銀行にも及ぶので安易に資金供給が膨らむことにはならないというのがポイントですかね。

最後にはっきりさせておきたい点が2つ: 1) 今回のBear Stearns救済劇がモラルハザードだと思う向きもあるかもしれないけれど、たった数日前には1株$60近辺で取引されていた株が$2(or $10)で買収されるわけで株主はこれ以上の責任を取りようがないということ。では資本構造上株主の上にいる債権者はどうなるかと言えば、通常最上位にいると思われるswap counterpartyについてはJP Morgan Chaseのweb上のコメントにもある通りJPによって基本的に保証されると予想されるものの、それとて契約上はいまだに確定されてはいない。 2) よく日本の金融機関救済劇と比較されるけれど、アングロサクソンの考え方は日本のそれとは似ても似つかない。端的には1997/11月に起こった本邦インターバンク市場でのデフォルトから公的資金投入までにどれだけ時間が掛かったか。批判しているわけではなく、あくまで考え方が全く違うということを念頭に置いておかないと今後の展開に乗り遅れてしまう。

市場へのインプリケーションとしては、短期) 曲がりなりにも投資適格債を使ったファンドへの資金供給の枠組みが出来上がったので、senior trancheへのフローも復活するであろうし、一方でヘッジファンドに対してもFEDは影響力を行使できる道筋を見つけたことになる=>金融セクターの底は確認できたのではないか(問題はいよいよ実体経済へ)、長期) FEDがPDCFを口実に投資銀行勢へ規制を掛けてくる可能性が高く、いよいよWall Streetのパワーシフトが本格化するかもしれない。引き続きイノベーションが生まれる可能性を信じるのであればこのセクターは買い。そうでなければ売りであろう。個人的には買い。

では、さっそく1月から3月までのイベントを時系列順に見ていきましょう:

3/24/08 - 本日付で新たにFHLBがMBSを買い増せるように更なる規制緩和が実施された。一連の規制緩和でFannie MarとFreddie Macが大量のMBSを発行できる環境が整ったものの、その消化に疑問を持っていたところだったので、これでひとまず安心か。詳しくは後日追記予定。

3/19/08 - OFHEOが規定していたFannie MaeとFreddie Macの必要資本額を33%削減。OFHEO主導の規制緩和の2発目。これで、mortgageの供給サイドは体制が整ったことになる。後は市場がこの規模の証券を消化するできるのか否かがポイントになる。

3/17/08 - FEDが緊急利下げ(25bp)を発表するとともに、JP Morgan Chaseによる熊さんの買収が発表される。

3/13/08 - 熊さんの株価が急落。朝方に46%の下落幅を記録。この2日前辺りから$35でのputの値が付くようになる。3/14には更に値下がりし、$35を難なく突破。市場では$22近辺のputにも値が付いていた。

3/12/08 - S&PとMoodysがAmbacのAAA(Aaa)格付けの維持を発表。これは3/5日付けでAmbacが行った$1.5bnの資本増強を受けての措置。一方で、Moodysは同時に金融保証会社について、実際の損失は、保有資産の時価会計で計上した損失を大幅に下回る可能性があるとの見解を示した。ちなみに、業界3番手のFSA Inc.については、3/11日付けでMoodysがAaa格付けの維持を発表。結局のところ、4番手のFGIC CorpのみがAAA(Aaa)格付けを維持できなかったことに。

3/9/08 - Carlyle Capitalの資金繰り悪化が表面化。ちなみに、3月上旬はこれまでにない数のヘッジファンドが強制的に閉鎖(破綻)することとなった。2001年から2007年までに破綻した数と同数のファンドが年初からわずか2ヶ月の間に破綻している(;´Д`) 特に2月後半から3月前半に集中。

2/28/08(WSJ) - 1日遅れでWSJがGSEのPortfolio Capの廃止について配信。Fannie MaeとFreddie Macの業績低迷を受けて、OFHEO(Office of Housing Enterprise Oversight)主導の規制緩和の1発目。そもそもこの規制は2006夏に導入されたもので、一時的な措置ではあったわけだけれど。

2/27/08(WSJ) - S&Pが25日付けでMBIAの格付けをAAAで維持したのに続き、Moodysが26日付けで同じくMBIAのAAA格付けの維持を発表。これらの格付け会社は凡そ1ヶ月前にMBIAの格付けをネガティブ方向に見直すことを発表していたので、通常の格付けプロセスからするとこれはかなり異例といえるだろう。もちろんMBIAが格下げを避ける為に$2.4bnにも及ぶ資本拡充を実施したからでもあるわけだが。

1/31/08(WSJ) - S&PがFGIC CorpのAAA格付けをAAへ格下げ。その後2/25日付けでAへ格下げ。ちなみに、MoodysはAaa格付けを2/14日付けでA3へ格下げ。

1/31/08 - 遂にMBIAが$2.4bnのwrite downを発表。詳しくは下記の記事(**)を参照のこと。

1/18/08 - Bush大統領がstimulus packageを発表。当初は$800の税還付を提案していたが、その後$600で落ち着く。

(**) MBIA announces $2.3 billion Q4 writedown

31 January - The situation in the troubled bond insurance sector has worsened, with the announcement of a $2.3 billion fourth-quarter writedown by New York monoline, MBIA.

It could soon be a case of last monoline standing in the battle to retain triple-A ratings, following the news of MBIA’s worst quarterly performance on record. Fitch Ratings has already downgraded Ambac, Financial Guaranty Insurance and Security Capital Assurance, and MBIA remains a candidate for a downgrade.

This is despite the insurer raising $1.5 billion in new capital in the past month, plus its plans to issue a $500 million rights offering – backstopped by Warburg Pincus.

“We are disappointed in our operating results for the year, as performance of our insured prime, second-lien mortgage portfolio and three insured CDO-squared transactions led to unprecedented loss reserving and impairment activity,” said Gary Dupont, MBIA’s chief executive officer.

There was a predictable market reaction to the announcement, with MBIA five-year credit default swaps widening 49.3 basis points to 486.2bp. This is wider than Ambac, trading at 470.8bp, which has already been downgraded to AA.

That neither monoline is trading wider – their respective CDS spreads were above 700bp in mid-January – suggests the market is awaiting the outcome of discussions between insurance regulators, rating agencies, financial intermediaries and the insurers themselves. The talks, continuing since last week, are believed to be on the viability of a co-ordinated bailout of the monoline sector.

Clock ticking for troubled monoline

Lesson's from Bear Stearns

ボスが面白い指摘をしていたので、忘れないうちに書いておこう:
  1. 流動性が無くなる(dries up)のが如何に早いか。古典的な銀行の取付け騒ぎと同じく、$17bnの流動性がたった2日で無くなってしまった(a lack of confidence, but not a lack of capital)。
  2. 通常株価とCDSスプレッドは逆相関を示すが、今回は株価がほぼゼロになってしまったにも関わらずCDSスプレッドはJPのそれに近づいてtightningしてしまった。
  3. 一方、1株$2でJPとの契約が成立しそうであるにも関わらず、株価は$6-7まで上昇している。これは主に投機筋が今後現れるかもしれない新たな買収者を見込んで価格を吊上げているから。それでも、2.で指摘した相関は崩れてしまっていると考えて良い。これは過去の相関を元にヘッジしてしまったら大変な事になっていたということ。モデルを作るときには、こうした点も十分考慮に入れないといけない。
これまで息つく暇もなく連続したイベントに見舞われていたマーケットもようやく落ち着いてきたので、後日状況をまとめてupする予定。キーワードはヘッジファンドです。

追記(3/24/08):Bear Stearnのliquidity poolの概算値が出ていたのでメモしておく。2月上旬の$13bn弱から、徐々に増やしてきていて3月の第一週には$18-20bnのliquidity poolが積まれていた模様。ただ、COB 11日から急減し、COB 13日には$2bnになるまで枯渇してしまっていた(Source:SEC)。他の投資銀行に比べれば小さい数値ではあるものの、ビジネス規模を考えればわからなくもない。確か去年の同時期にGSは$30bn程度のliquidity poolしか持っていなかった筈。

土曜日, 2月 23, 2008

最近の話題

昨年からNYのクオンツ・コミュニティではサブプライムローン問題に関連して、僕の知る限り大まかにいって次のような論点について議論が起こっている:

1) 株式市場の乱高下とヘッジファンドの関係は如何に?
2) リスク管理手法について明らかになった問題点は何か?(ソジェンの事例も含めて)
3) 格付け機関に求められる役割と証券化商品特有の問題とは何だったのか?
4) アジア通貨危機に端を発する金融危機後に起こったイノベーションは結局のところ安定をもたらしたのか?

1)については、もう既に広く知られているMITのAndyLo教授が書かれた論文にあるように、"レバレッジの拡大"と"同一戦略をとるファンドの増加(相関の上昇)"が相まってもたらされた結果であるという見方が定説になってきている。すなわち、昨夏の株式市場の乱高下がマーケットニュートラル型のヘッジファンドによって主導されたという見方がほぼ固まってきていて、FRBが幾ら流動性を各種方法で提供したとしてもどこまで効果的か疑問符: FRBの庭はもはや市場の一部でしかないのではないか?、が付き始めてきたところ。ただ、中央銀行(or 当局)がコントロールできる範囲外の資金の流れが大きくなっているという根本的な問題に対する有効な手当ては今のところ見当たらない。

2)については方法論に問題がなかった事は疑いようがないものの、運用面を調整しなければならないという結論で固まってきていて、実際わが社でも静かに組織の見直しが進行中。

3)については、FRBの資料でも指摘されている通り、テクニカルには"While an ABS credit rating for a particular rating grade should have similar expected loss to corporate credit rating of the same grade, the volatility of loss (i.e. the unexpected loss) can be quite different across asset classes"という事情に象徴されるcorporate ratingsとsecuritized product ratingsとの違いが議論の中心になってきている。

そして最後に4)。アジア通貨危機から10年間を経て様々な金融イノベーション(高度化?)が生まれてきたものの、結局のところ世界がより複雑になった以外の何者でないのではないか、システム自体の安定性は何ら変わっていない(same as before, unconditionally)のではないかとする見方が本質を突いていると思う。

月曜日, 12月 31, 2007

格付けのボラティリティとは何だろうか

今年はこの話題に関して一つの洞察を紹介することを試みて〆としましょう。今年は証券化商品に関する格付けの変動性(ボラティリティ)が随分話題になったものの、仮にこうした格付け基準の甘さを指摘したところで格付け会社にしてみればそんなの想定外でしたで終わってしまう可能性が大なわけですなヽ(´ー`)ノ。本来Aaaってのは、中身をこれっぽちも見ずに買っても元本毀損の可能性については考える必要がない、という意味を示す記号であったのに(#`Д´)。というわけで、格付けの変動性(ボラティリティ)として証券化商品のリスクプレミアムを把握できないか考えてみましょう。

さて、、

ではいったい格付けのボラティリティ(変動性)とは何だろうか。そもそも格付けの変動性は定量的に捕らえにくい。格付けはそもそもordinal numeralであって、cardinal numeralではない。すなわち、仮に形式的にそれぞれの格付けに対してある数字、例えば1から20、を1:1対応させてその変動率を推計してみたところで意味がある結果とはならないのは周知の事実。同じく、格付けにcardinal numeralであるデフォルト確率(スプレッド)を対応させてその変動率を考えても意味のある結果は得られない。言い方を変えれば、当該債券(証券化商品)自体のスプレッド・ボラティリティをいくら精緻に把握しようとも、格付けの変動(及びその1つの帰結としての債券価格の大幅な変動)を説明し得る意味のある結果は得られない。従って、このアプローチは少なくとも中長期の保有期間を想定した投資戦略及びリスク・マネジメントには使えない。

一方、昨今注目されている(特に証券化商品の)格付けの大幅かつ大量の見直しから直感的に理解される格付けの"急激な変動"を定量的に把握し、横ぐしを入れて比較するにはどうしたら良いのか?この話題については規制当局も強い関心をよせているので、この"変動率"は分かりやすくかつ意味のある量であるべきであって、さらに当局の理解が得られなければならない。今のところ一致する見方は、当たり前といえば当たり前であるわけだけれど、次の通り:

Rating volatility can be interpreted as probability of a rating transition over a specific period (say a 1 year).

各格付け会社は格付け遷移行列を毎年推計しているので、このデータがまず一つの指標となる。一方、懸案の証券化商品の格付けに関しては、最終的に損失率のシミュレーションを通して元本毀損の蓋然性を判定した上で格付けを付与しているので、このシミュレーション結果を見れば(or 将来に渡って延長すれば)、例えば同じAaaの商品についても格付けの"変動性"リスクを峻別できることになる。例えば、CPDOなどは確かにAaaだけれど、その格付けの変動性は実は高いというのが一般的な捉え方だろう。一般にレバレッジ比率の高い証券化商品の格付けはそのレバレッジ故に変動しやすく、仮にそのデフォルト確率がcorporate ratingの同一格付けのそれと等しくとも、デフォルトするまでの格付けパスはcorporate ratingのそれとは著しく異なるのである。これは言わずもがな価格変動性に大きな違いをもたらすわけで、投資家としては相当のリスクプレミアムを要求すべきである: 逆にいえば、例え格付けがAaaであろうと相応のリスクを覚悟すべきである。すなわち、証券化商品の格付けは従来通りあくまで元本毀損の蓋然性(デフォルト確率)を表すordinal numeralであって、それとは別に格付けのボラティリティという特有のリスク(実はこれがかなりの部分を占める)がレバレッジ比率の高い証券化商品には内在されているということ。リスク・マネジメントの観点からいえば、伝統的なスプレッド・ボラティリティの把握とストレステストだけでは十分ではなく、上で定義した格付けのボラティリティをリスク・ファクターとして取り入れる必要があるのだろう。

それでは皆さん、Have a happy holiday and see you next year!!

火曜日, 12月 11, 2007

25bpの利下げ

うーーん。25bpですか。マーケットはとりあえず下げで反応してますが、コメントを後できっちり読まねば。

追記(12/22/2007): FEDは金利引き下げの翌日に主要中銀(BOE,ECB,スイス及びカナダ中銀)と協調し、流動性供給を行う旨を発表した。FED自身は年末越えの資金として$40bnを供給する予定。金利はOIS型なので、考えうる最低金利ということになる。ステートメントにもあるように、インフレ懸念を完全に払拭できない中で金融システムの機能を維持していく為に、FFレートと流動性供給枠を別々に活用していくということで正論ではある。政府系ファンドがエクイティを入れてきていることもあり、これで足りるといいのだけれど。

Readings on core inflation have improved modestly this year, but elevated energy and commodity prices, among other factors, may put upward pressure on inflation. In this context, the Committee judges that some inflation risks remain, and it will continue to monitor inflation developments carefully.

日曜日, 12月 09, 2007

真夏の夜の夢。。。とその後始末

ようやく落ち着いてきたので、10月からの動きを幾つかまとめておきましょう。端的に云えば、短期金融市場の混乱は収束しことから既に第3フェーズは終了し、後始末に焦点の当たる恐怖の第4フェーズへ突入です (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

その前に幾つか第4フェーズのポイントを:
  1. 一連のdefault experienceを2002年のITバブル崩壊期と比較してみると明らかなように、今回は金融セクター発の危機である。よって、ポイントは金融システム全体(Wall Street)でどの程度の損失が発生し、システムはその損失に耐えられるのか?、という点。
  2. 直接金融・間接金融を問わず、金融セクター発の危機であれば信用創造のメカニズムそのものが目詰まりを起こす可能性があり、実体経済へはFFレートの引き 上げと同等の影響を及ぼしかねない。よって、ポイントはこの効果を相殺するためにFEDはどの程度の利下げを実施する必要があるのか?、という点。
  3. そもそも、サブプライム関連の証券価値についてはどの程度まで損失を見込めばよいのか、誰も納得感のある数字を示すことができていない。よって、ポイントは現状唯一の情報源である市場の価格付けがどこまで信頼に足るものなのだろうか?、という点。
こうした米国経済に関する予測が極めて困難な問題に直面し、市場はかなりボラタイルな展開が予想されていたわけですが、現実はより厳しいものになってしまったわけで(;´Д`) 今のところ1.、2.、3.についてはコンセンサスが醸成されてきており、損失率を額面の30%(3.)として1.で必要となる損失額を算出し、2.の幅が議論されている状態。個人的には少なくとも50bpは欲しいところ。というのも、米国経済が今後4四半期でression入りする確率をインフレ指標、債券市場、FFレート(FEDの判断)を使ってモデル化すると、次の通りとなるから:

- 11月末時点: 単純に計算すると確率は7.5%となる。但し、各種統計に誤差項を加味すると、11.31%まで上昇の可能性がある。但し、ポイント2.の効果を1%の利上げと同等とすると、この確率は20%台前半まで上昇する。ちなみに、過去の統計をみると、20%台前半まで上昇するのは1つの景気拡大局面あたり多くて2-3回しか発生しておらず(1964年以降のデータによる)、危険水域と判断されよう。過去の例では、60%以上でアウト。

- 7月時点: ちなみに、この時期には単純に計算しても確率が27%となっており、明らかに危険水域入りしていた。

というわけで、今週のFOMCは下げ幅だけでなく、コメントについても要注目です。さて、では最後に時系列順に後始末の経過を追っていきましょう:

- 10/17/07(WSJ) ようやくCP市場は持ち直し。Super-fund設立の動きが報道されたこともあり、CP市場は発行残高が季節調整後で$1.3bn増加し、$1.888tnとなった。これで2週連続の増加(その前週は$4.9bn+)。一方ABCP市場は$11bn減少したものの、これまでの各週平均$70bnの減少に比べると市場環境の好転が伺える。大相場はこれにて実質的に終焉した。あとは後始末ですが、、

- ちなみに、主要なSIVの資産残高は右表の通り。Citi様のaffiliateはやっぱり多い。さすがにこんだけ多いと幾ら真面目にsuper-fund立ち上げても飛ばしだのきな臭いだの罵られても仕方ないかも。僕としては同意できないものの、マエストロもさすがに耐えられなかったみたい(source: New York Times):Mr. Greenspan’s take, expressed in an interview with the magazine Emerging Markets, seems broadly similar. “If you believe some form of artificial non-market force is propping up the market,” he said, “you don’t believe the market price has exhausted itself.” 

- 10/19/07(Bloomberg)金融機関の損失発表が相次ぐ中で遂にSIVのデフォルト報道がドイツで。また欧州かよ(#`Д´)。Cheyne Finance PlcとIKB Deutsche Industriebank AG傘下のRhinebridge Plcです。Rhinebridgeについては、9/10付けでMTNがAAAからBBB-に格下げされていてかつ9/7, 9/10付けでBarclays Capitalとの間の流動性供給枠を使ってしまっているわけで。。デフォルトには今更感が漂うものの市場は大荒れに(;´Д`) もっともS&Pによると、資産は額面の63%まで劣化してしまっているということでこれはさすがに酷い。ちなみに、Moody'sの調査によると、SIV全体のnet assetをみると8/1時点で92-3%(一ヶ月で9-10pt下落)、9/1時点で85%となっている。

- 10/24/07 (WSJ) メリルが$8.4bnの評価損を計上。もうこれは野村と同列ですね。きちんとリスク管理の方法論を確立してから投資銀行と同様のビジネスモデルに参入しましょう。リテール証券としてのビジネスモデルは既にきちんと確立しているわけだから無理しなくてもいいのでは。。ヽ(´ー`)ノ とりあえず、ポイント1.に関する第一報が正式に報道されたのがこのタイミング。

- 10/25/07 (WSJ) ちなみに、これまでの報道(本格的な後始末前)をWSJが綺麗にまとめてくれました。ご苦労様です。あぁもう今年の金融業界は格好の餌食ですな(;´Д`) そしてこの程度で後始末が終わるはずもなく、、

- 10/31/07 FEDが25bpの利下げを決定。報道直後こそ一旦市場は失望売りで下げたものの、1時間後には回復基調へ復帰。公式発表にある通り、とりあえずこれで利下げは当面打ち止めなのか、、、と皆が思った瞬間。

- 11/3/07(WSJ) Citiも$12bnの評価損を第4四半期に計上することに。遂にPrince CEOも退任に追い込まれてしまい、ルービン大先生の登場です。しかし、ちょうどこの発表があった3日前に(11/29)に日本ではCitiの上場が東証に承認され11/5に上場を果たしたわけで、ホント金融庁(或いは東京市場?!)ナメられてますね。

- 11/7/07(WSJ) Morgan Stanleyも$3-6bnの評価損を計上する可能性をアナリストが指摘。株は猛烈に下げてます。うぅ。株はこれらの報道を嫌気して全世界で下がりまくり。市場が予想する金融システム全体としての損失規模が一気に上昇したのがこのタイミングではなかったかと。

- 11/15/07(WSJ) ファニーメイに関する追加損失懸念から、株価が一日で10%も下落。もう泣きっ面に蜂状態です(;´Д`)

- 11/27/07(WSJ) アブダビ投資庁がCitiへ$7.5bnの資本注入を発表。待ってました、ようやく救いの手がキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!! やっぱりオイルマネー強し。この辺りが数年前に起こった日本の金融危機と根本的に違うところですね。あの時は日本政府以外に誰もメガバンクに資本注入しようなぞとは思わなかったもんです。

- 11/30/07(金融庁) 遅きに失するとはこうしたことを指すわけで。金融庁による報告と預金取扱金融機関のサブプライム関連エクスポージャーの保有状況について。完全に世界の流れに取り残されてますが(;´Д`)

- Nov-Dec 2007 就職活動中の知り合いによると、投資銀行の採用はどこもストップ。今年前半まで空前の採用ブームだったのが嘘みたい。唯一採用しているのはリストラクチャリング中の野村だけだとか。。ただ、別の知り合いによるとGSは特にストップしているわけでもないそう。やはりどの分野でもアグレッシブなのか?!

- 12/5/07 約2年半ぶりに英国中銀も利下げを決断。

- 12/6/07 午後にブッシュ大統領がサブプライム・ローン関連の対策を正式発表。株は折からの利下げ期待に上がっていたところを、さらに上げ足を早めS&P500は前日比+1.5%で取引を終了。11月末を底値として1週間程度で7%近く上昇したことに。それにしてもsuper fund構想は腰折れに終わりそうだし、この対策も効果があるのかどうかは疑問。10月からの一連の報告で金融システム全体(Wall street)としての損失規模が見えてきたので、ポイント2.で挙げた効果を見極めた上で、一気に利下げで後始末を終わらせる腹積もりかしらん。11日の利下げ幅が焦点ですな。

- 12/8/07 ちなみに、サブプライム問題・米国経済のresession懸念にもまったく動じずに日本では更なる政治による混乱が加速中(;´Д`) 改正建築基準法によるマンション建築の遅延、貸出し上限金利の厳格化、信用保証協会による保証枠縮小、更にはガソリン税の暫定税率継続に民主党が反対の姿勢を明確にするなど、この手の話題には事欠かずといった様相を呈してきた。結果オーライなら良いのだけれど、当分視界不良が続きそう。。やっぱりアンダーウェイトにせざるを得ないのか。

- 12/10/07(WSJ) UBS が$10bnのwrite-downを報告。と同時に、GICから11bn Francs, 中東の投資家から2bn Francsの合計13bn Francs ($11.5bn)の資本注入を受けることを発表。注入方法は、Citiと同じCBの形で、クーポンはなんと9%。一気に膿を出した事を概ね好感し、株式市場は上昇。ただし、日本のマーケットは何故か下がり気味??日経の第一報が資本注入にまったく言及していないのもどうかと思うが。。

土曜日, 11月 10, 2007

証券化商品の格付けについて考える

(これも9月に入稿したので、ちょっと話題が古いですね。すみません。)

最近物議を醸している証券化商品(CDO,RMBS等)の格付けについて取り上げてみたい。これはデフォルト確率の推定に関わるモデルの問題に関連していて、クオンツの立場から考えても興味深い。

まずは、Moody's president Brian Clarksonのぶっちゃけトークから引用してみよう:
" We're rating with the goal that if you purchased all triple-As, they would all perform the same. Now of course they don't. Some get downgraded, some get paid off. "But what we're doing is we're actually rating to a target. We're targeting everything to be money good at the end with very, very little variability at the triple-A level," he said. Inherent in structured finance, however, are rules that govern what can and cannot be done -- even moves to save deals that break down, whereas a company can sell assets or otherwise reduce debt to stave off problems. "There is little you can do once things start to go bad," Clarkson said. "Structured finance ratings tend to be more stable over a longer period of time than a fundamental rating. But when they actually move, they move much quicker." (NY Times)
要は、昨今の格付けの急激な変化を認めた上で、やんわり企業の場合に期待される自浄努力(収益が悪化すればそれなりにリストラを行って財務体質の改善を図る等)が証券化商品にはあり得ないことなどを挙げて、その責任をストラクチャーの硬直性に転嫁してしまおうとしている。しかし、さすがにこれには無理があろうというもの(#`Д´)。これではせっかく最新の金融技術を使って、追加コストを極力抑えながら経済全体のリスク許容度を最大限利用しようとする証券化商品の意義(言い方を換えれば、リスクを幅広く投資家へ移転することによって資金調達を容易にするスキームの意義)が無くなってしまう。

それに、今回の件は直接金融の信用創造を阻害してしまったという意味で、新しいタイプの信用収縮と言えそう。

では実際に何が問題であったのだろうか。そもそも証券化商品の格付けはbankruptcy remoteを保証するスキームやコミングリング・リスクの評価を終えてオリジネーターとサービサー絡みのリスクを分離した後は、対象資産プールの損失分布(or 償還の蓋然性)を推定することに集約される。もちろん格付け会社は細心の注意を払って損失分布を推定し、特に高格付けを付与する場合にはデフォルト確率(PD)にストレスを掛けて念には念を入れている。ただ、僕の見立てでは今回問題になったのはこうした損失分布を推定する際に使われる肝心のストレス倍率ではなかったのかと。。

最近の急激な格下げで注目を集めている中小企業のCBOオール・ジャパンを例にとって、軽く試算してみる。デフォルト確率としては、S&Pの中小企業クレジット・モデルによる予想貸倒率(年率0.8%)を仮定してみよう(ちなみに、これはS&Pが当該当CBOに予備格付けを付与した時点でのS&Pの「ベース・デフォルト率」の1.7倍程度 (source: FISCO))。仮に信頼区間を68%(1標準偏差)で計算すると必要となるストレスPD値および倍率は次のようになる:

Gaussian copula w/ asset correlation 15% => 2.169% (x2.77)
Gaussian copula w/ asset correlation 30% => 4.063% (x5.07)

Student-t copula w/ asset correlation 30% => 7.798% (x9.74)

これらの数字はS&Pが発表している「中小企業CLO・CBOの格付け手法 - 中小企業クレジット・モデルを活用した分析手法を中心に」に記されているAAA格付けに用いるストレス倍率(5-8倍)とちょうど同水準である。一方で、ボラティリティのボラティリティが15%だとして計算すると、信頼区間はちょうど75%(1.15標準偏差)となる。この数字を使ってもう一度同じ計算をしてみると:

Gaussian copula w/ asset correlation 15% => 2.637% (x3.29)
Gaussian copula w/ asset correlation 30% => 5.172% (x6.46)

Student-t copula w/ asset correlation 15% => 7.091% (x8.86)
Student-t copula w/ asset correlation 30% => 9.441% (x11.8)

となり、S&Pが仮定するストレス倍率を30%-50%上回る結果となってしまう。更には直近6ヶ月のデフォルト率(年率4.7%=ベースデフォルト率の10倍!!)も十分予測の範囲内に収まることがわかる。したがって、ストレス倍率 5-8倍はちょっと低いのではないかと思うわけで。そもそも、この数字の根拠も曖昧だし(誰か知っていたら教えて下さい!)。9/11時点での格付け変更がどの程度のストレス倍率を仮定しているのか発表されていないものの、上記程度のストレスは仮定しておいて欲しいもの(ちなみに、8/28の関連プレスリリースはこちら)。もちろんこれは日本の事例であって、欧米での基準がどうなっているかを精査する必要があるがストレス倍率の議論はもっとオープンになされていいのではないかと思う。

結局のところ、証券化商品にありがちな高格付け・ハイイールド商品のカラクリはこうしたボラティリティに関するコールオプションが格付け時にゼロ評価されてきた為に起こっていた裁定機会であった可能性が高い。もちろん本来あるはずのオプション価値はハイイールド或いは業者の手数料として相応に落ちている訳だから、投資家としても文句はいいづらいところではある。逆に現在は理論的な根拠が薄いままスイングが逆方向へ行き過ぎている可能性が高いので、絶好の買い場であろう(新しいストレス倍率の水準は要チェック)。一旦下げた後は格付けが上がっていくフェーズに入っていくのではないか。市場へのインプリケーションとしては、格付けとスプレッドが密接に関連している市場慣行上、格付け方法を丹念に調べていけばレラティブバリューの機会を捉えることができよう。もっとも最近の価格下落率を見ると、レラティブバリュー云々の議論をする気が失せてしまうのも十分納得できるわけで、反論は甘んじて受けましょう。

金曜日, 10月 26, 2007

バブルの発生要因およびその特徴を探る

(時間が経ってしまったのですが、このトピックは先月の話です)

NY赴任に当たって、一番楽しみにしていた事の一つが遂に実現した!そうNYには東京とは比べ物にならないほど大きなクオンツ・ソサエティが存在し、常時面白いイベントを開催すると共に皆ネットワーキングをしているので是非僕も参加したいと思っていたのです。その一つがコロンビア大学のThe Fu Foundation School of Engineering and Applied Science(どこかで聞いたような名前ですね?!)の金融工学講座が主催しているFE Practitioners Seminarです。有名なDermanが主に仕切っているようで、今シーズンはこれまた有名なヘッジファンドBlack Rockのオフィスを借りて開催されています。

そして第一回目が驚く事なかれあのHJMモデルのJarrow先生の講演でした。もう8年前になってしまうけれど、初めて金利デリバティブのモデルを作るときに繰り返し読んだのが、HJMの論文だったんだよね。なんだかこの8年間の出来事を思い出して感慨深かったものの、その語り口に手応えを感じてちょっと嬉しかったり。論文を読んでいるだけだと非常に抽象的でまさしく数学的な論文なのだけれど、一流の数学者がそうであるように、Jarrow先生も直感と理論の意味づけと、その応用に非常に心を砕いて説明してくれていた。そして抜群のウィット。やっぱりこうでなくっちゃね。

ところで肝心の内容はというと、最近なにかと話題の『バブル』についてです。『バブル』発生のメカニズムについては、レジームスウィッチングの考え方を使ってモデルを作っていく手法がこれまで大勢を占めていたわけだけれど、今回のJarrow先生の理論はFinanceで使われる手法に軸足を置いている点で異なります。詳しくは論文*に譲るとして、ポイントは次の4点:
  • 完備市場であっても、非完備市場であっても所謂『バブル』は発生し得て、価格上昇をもたらす。
  • リターンの上限があらかじめ決まっている債券型の資産では、理論上『バブル』は発生し得ない。
  • 『バブル』には必ず有限時間内での寿命が存在し、その効果は消滅する。
  • 非完備市場では、何度も『バブル』が発生し得て、その発生時期は市場がリスク調整を行うタイミングと一致する。
  • デリバティブ市場の価格形成情報から、『バブル』そのものについての情報を抽出できる。
ここで、一連の結果を導出するために設定された自明でない仮定は唯一:"トレーダーにはあらかじめロスカット枠が設定されている"ということのみ。言い方を変えれば、例えそれが裁定取引であったとしてもある一定レベル以上の評価損失を抱えることはできない、ということ。これは現実に即した仮定であると同時にある種の裁定機会を放棄しているのと同じ意味であるわけだから、この仮定を置く事で『バブル』の発生が理論上可能になっているのがわかる。

まず注目すべきは債券型の資産(fixed income products)については、理論上『バブル』が発生し得ないということ。つまり、このタイプの資産価格はバブルに見えても実はバブルではなく、あくまで正常な価格形成の結果であるということで、一方的な価格下落は生じ得ない。これにはかなり驚いた!もちろんあくまで理論上の話なので、直ちにそれが市場に適用できるとは思わないもののこれだけ一般化された枠組みの中でこうした結論が得られるのにはやはり意味があるように感じる。まぁこの時に知り合ったCDOトレーダーはあんなのアカデミックな世界だけの話で、CDOマーケットは完全にバブってるよって言ってましたが(;´Д`)

次に注目すべきは『バブル』の発生と破裂についてのメカニズムがすっきり説明できるということ。『バブル』は市場がリスク調整を行う時(まさしく今!!)に発生し、その後必ず有限時間内に破裂する。数学的に言えば、『バブル』は同値マルチンゲール測度の交換時に発生し、0に各点収束する優マルチンゲールとして記述できる。経済的に言えば、よく知られているように『バブル』は資産価格の急上昇をもたらした後崩壊し、資産価格の急落をもって終焉する場合ももちろんあるものの、平均してみるとあたかも負の配当を資産価格から支払い続けるような効果をもたらす。

そして最後に注目すべき点は、デリバティブ市場の価格形成情報を使って『バブル』を観測できる可能性が示されたこと。具体的にはプット・コールパリティが成立する中で、コール価格にのみバブルが潜みうることを利用しようというもの(プットはリターンの上限が決まっているので、その価格はバブルに成り得ない)。これは正直凄い!もしかしたら将来はバブルのプライシングも夢ではないかもしれん。Jarrow先生がIn this context, there are lots of fun in derivative pricing!と言っていたのも納得できる。

簡単な応用として、不動産バブルについて考えてみよう。まず、不動産価格にはバブルが潜み得る。これは、少しの確率であっても不動産価格が青天井で上昇していくようなシナリオを描ければ良い。まさしく80年代の日本市場の姿であり、ここ最近の米国住宅市場であったわけですな。この場合にはリターンに上限がないので、上記理論によってバブルが潜み得ることになるド━(゜Д゜)━ン!!一方で、この期待(確率)が脆くも崩れ去るとたちまち不動産価格に上限が設定されてしまうので、一気にバブルが破裂することになる。例えば日本の場合には、総量規制で不動産向け融資を絞られてしまった結果、それまでの不動産価格の青天井シナリオの確率が減少すると共に、収益還元法の出現によってfixed income assetとしての性格が強調されるようになりバブルが一気に破裂したと理解できる。今後の研究としては、青天井である確率とバブルの大きさの関係なんかが解明されると面白いんだろうな。たぶん正の相関がある筈。

まだまだ実践的な理論にはなっていないものの、今後の発展が期待されますね(^ω^)

*R. Jarrow, P.Protter and K.Shimbo (2007), "Asset Price Bubbles in Incomplete Markets"

金曜日, 10月 12, 2007

財務省動く

サブプライム問題をきっかけとしてクローズアップされた新たな金融システム危機については以前のエントリーでコメントしてきたわけだけれど、遂にその対策の第一報がWSJ紙上にて今日の夕刻明らかになった。以外と時間が掛った印象だけど、引き続きインターバンク市場が混乱するなかで内密に議論が進められてきていたとのこと(3週間前から)で納得してみたり。来週月曜日のCITIの四半期決算発表に合わせて対策が公表される予定とのことで、もちろんその発表も注意深く見ていかないとね。まったく個人的な憶測でしかないけれど、やはりこのまま対策なしにCITIの決算発表を向かえると市場の混乱が再発しかねないとの判断があったんだろうか。

ポイントは、1) 今回はFEDではなく財務省が仕組み作りに動いていることと、2) 別エンティティ(Master-Liquidity Enhancement Conduit, or M-LEC)を作ってこれを銀行団がサポートすることで信用力を確保することの2つ。

FEDではなく財務省が出てきたという事は、今回の対策はLTCM危機での緊急財政出動とは異なり長丁場のシステム作りに当局自身が動いたということを意味する。LTCM危機の時はその後業界団体であるISDAを中心とした活動によって、カウンターパーティリスクの管理方法が確立してきたわけだけれど、今回の金融システム危機(07年証券化危機とでも呼んだらいいのかしらん?)はシステム全体の問題として当局が強い問題意識を持っていることが伺える。それにしても強い当局とはまさにこうした動きができるもの。翻って今の日本の当局は果たしてこうした力を発揮できるかどうか。また後で、当局という概念については取り上げてみたい。

別エンティティを作ってこれを銀行団がサポートするというのは記事にもあるようにいかにもLTCM危機時の対応を思い起こさせるものの、もはや一行のクレジット単体では現状あるファンディングを維持できないわけだから適正な対応であろう。それにしてもCITI単体(7つの関連エンティティの合計)で現在$100bn、8月末でみると$400bnも資産が積まれていたというのだから驚きだ。これは統合前の大手都市銀行一行あたりの総資産規模に匹敵する。インターバンク市場はこの規模のファンディングに対してよくも耐えられたものだ。

引き続き注意深くウォッチングしていきたい。

Big Banks Push $100 Billion Plan To Avert Crunch

The Citigroup plan would create a "superconduit," a fund backed by some of the world's biggest banks that would issue short-term debt and serve as a buyer of assets currently held by SIVs affiliated with the participating banks.According to the people familiar with the plan, these assets include securities tied to U.S. mortgages as well as debt pools called collateralized debt obligations.Because the superconduit would be backed by the big banks themselves, it's expected this would reassure investors and make them more willing to buy its short-term debt, or commercial paper.SIVs are purposely kept off the balance sheets of the banks to which they are affiliated. One reason for this is that banks want to keep down the amount of assets on their balance sheets to reduce the amount of capital that regulations require them to keep.

Because SIVs are off the balance sheet, it is difficult for investors to size up the financial risks they pose. Off-balance-sheet liabilities played a major role in the 2001 collapse of Enron Corp., and the makers of accounting rules have generally sought to get affiliated entities back on the balance sheets of the companies creating them.

追記(10/16/2007):このトピックに関して日本の報道を見ていて面白い事に気がついた。あくまでネット版ではあるものの、読売はNY時間の土曜日の朝には既にこの件で記事を載せていたのだけれど、日経はなんとNY時間の月曜(もしくは日曜の深夜)になるまで一切触れられていなかった。これはもしかして日経のニューヨーク特派員は金曜日早帰りして気がつかなかったか??或いはそもそも特派員がいないのでは??日経のネット版には記者の名前が載っていないので確認しようがないものの、これはかなりまずい。経済専門紙が読売に先越されてどうすんのよ。。ちなみにアサヒはチェックしてません。アサヒられるかもしれないからね(;´Д`)そもそも何故にネット版で経済欄が『ビジネス』カテゴリーに分類されてしまっているのだろう。。。

日曜日, 9月 30, 2007

9月FOMCの結果によって第3フェーズへの突入を確認

9月のFOMCの直前には久々に手に汗握りました。私の職場でも一体FEDはどう対応するのか皆で賭けでもするかという話もでるくらい予想が割れる始末。結局0bp--50bpまでほぼ均等に意見が分かれたものの、FEDが利下げした場合には間違いなくEUR高・インフレ懸念が台頭するという点で意見が一致したのには笑うてしまった。マーケットも2日前までは利下げ織り込みが50bpで推移していたのに、前日になって25bp織り込み相場へ変化するという具合だったしね。

ところで、今回の利下げ措置で二つのポイントが確認されたのは有意義だったと思う。

一つ目のポイントは、WSJ紙上でも議論されてきたバーナンキ議長とグリーンスパン前議長とのマーケットへの対処方法の違い・類似性について確認がとれたこと。いわゆるグリーンスパン・プットの復活についてだ。かねてグリーンスパン前議長の時代には何かしらの変調が起こって資本市場が機能不全に陥った場合には、必ずFEDが緊急避難的に流動性を供給する或いはFF金利を引き下げることによってマーケットの一方的な下落を食い止めてきた。この意味で、これまでグリーンスパン・プットの存在が認識されていたわけだけれど、対照的に、バーナンキ議長は先月のNY株式市場のメルトダウンを前にしてdiscount rateを引き下げるのみでFF金利を据え置いた。結果、前述のWSJの記事にあるように、前議長との間の違いが際立ってしまった。しかし、9月のFRBで一気に50bp FF金利を引き下げて金融システムの混乱を沈静化する姿勢を鮮明にしたため、逆に金融システム自体を守るという点では二人の考え方が一致していることが確認されたといえるだろう(9月に入ってからの重大な金融システム危機については二つ目のポイントを参照)。一方で、景気および金融システムへ悪影響が出ないと考える限り、FEDは動かない事も同様に確認されたといえる。個人的にはバーナンキ議長への信認が更に高まったのだけれど、他の市場参加者の人はどうだったんだろう?その後のマーケットの動きをみると、同意見の人が多いような印象を受ける。

ちなみに、グリーンスパン・プットの発動タイミングについては、メモを参照のこと。

二つ目のポイントとしては、短期金融市場が思いもよらぬ原因で機能不全(流動性クランチ・信用収縮)に陥り、証券化時代の市場の不備が露呈した(確認がとれた)こと。

まずご存知の通り、短期資金調達手段は概ね次のように分類される:
  • Repo Market, Stock Loan Market(主に証券会社のファンディングに使われる)
  • 無担・有担コールマーケット or O/N Libor Market(インターバンク市場): 米国市場ではFF金利に支配されるが、日本では日銀の裏庭にいる短資会社に支配されている
  • 銀行借入(Libor Market, インターバンク市場)
  • CP市場(短期クレジット市場(無担))
  • ABCP市場(短期クレジット市場(有担))
今回は担保価値の再評価(リスク調整)が行われるなかで、ABCPプログラムのリファンド時の混乱から、アセットそのものの質が悪化している為に、或いは悪化していなくとも不利な条件でのリファンドになってしまう可能性があるため、B/Sから外した筈のアセットが銀行・モーゲージ関連企業自体のB/Sへ跳ね返ってくることに(証券化の際にArrangerに課されている買戻し条項を要チェック。追記(12/9/07):精査の結果、Citiの場合は会計上これを逃れられそうとのこと。詳しくはWSJの報道(11/26/07)を参考に)。その結果、銀行・モーゲージ関連企業本体のクレジットでのファンディング(インターバンク or CP)が必要となってしまい、インターバンク市場・CP市場が同時にクラッシュしてしまった。実際、8月のFRB後に大手4行がアナウンスメント効果を狙って$500mmずつ借りて借入れ総額が$2bnとなっていたdiscount windowは、8月末には順調に$1bnへ減少したものの、9月の第2週には$7bnまで急上昇していた。もう少し詳しくみたいのであれば、FEDのABCP残高統計および銀行のB/S統計をみればわかり易い。1ヶ月でほぼ2.5倍になっている。

こうした現象はcounterparty riskが顕在化したLTCM破綻時やS&L危機或いは日本の不良債権問題とも本質的に異なり、証券化時代に金融システムの抱える新たなリスクの火種といえる。今後業界がこの問題にどのように対処していくかウォッチングしていきたい。私の印象としては、本来信用創造は景気と正の相関を持っていて当然ではあるものの(景気悪化=>資金需要減退=>貸出減少, vice versa)、間接金融の作り出す相関に比べ、直接金融の方が相関が高い或いは振れが大きいといえそうで、このあたりの制御を問題意識とした更なる研究が必要なんだろうな(それともacademicの世界ではもうあるのかしら?)。

ちなみに、ECBが今回利下げしなかった理由も、欧州では個別行の損失からくる旧来型の信用収縮(英ノーザンロックが好例)に止まり、金融システム危機にまで発展しなかったことが一因であると考えると納得がいく。

市場へのインプリケーションとしては、グリーンスパン・プットの復活が明確な形で確認されたことはプラス。一方新たな金融システム上のリスクが確認されたことはマイナスで、調整局面は長引きそう。対策が講じられるまでには更に時間が掛かる見通し。もちろん市場はブル・スティープで反応。同時にグリーンスパンの謎も解けそうですな。

追記(10/10/07):ようやく短期市場の混乱も治まってきそう。それにしても8/10時点でuk base rateとO/N LIBORのスプレッドが72bpにも達しているにも関わらず、BBA O/N repo rateとのスプレッドは35bpに留まっているのは面白い。それと英国の短期金融市場の方が早くから混乱し始めていた事が見て取れる。ちなみに、店頭ではこの混乱に先んじてLibor fundingをBase rate fundingへ切り替えるswapが観測されていた。

火曜日, 9月 18, 2007

FED 50bpの利下げを決断

本日FEDが50bpの利下げを実施。株式市場は一様に好感し、North America +2.9%, Brazil +4.28%, Argentina&Mexico +2.7%の大幅高を記録。リスク許容度の上昇と共に、予想通り円相場も下落中: 116.12 (+1.20)。ふーむ。遂にバーナンキ・プットが出現しましたな(この点についてはまた機会を見て詳述する予定)。ただ、Crude Oilも+1.7%上昇で最高値更新($82.38/bbl)ですよ。バーナンキ議長も今後はよりいっそう得意のインフレ退治にターゲットを絞った金融政策に邁進できるというもの。裏返せばよっぽどインフレ対策に自身があるんだろうねヽ(´ー`)ノ

ところで、水野さんはFRBのこの判断を受けてどうするんだろう??やっぱり利上げに一票ですかね。

日曜日, 9月 16, 2007

続報 サブプライム関連 第2フェーズへ突入

(このコメントを入稿したのは8月下旬だったわけですが、その後第2フェーズは既に終了し、今週のFOMCの判断如何によっては第3フェーズ突入です)

さて普段ならば夏休みで閑散とした相場であるものの、今年の8月はかなり熱い月でした。商いが薄い中で、幾つか悪いニュースが重なって、8月第1週は本当にさんざん。一部の欧州系銀行がサブプライム関連投資で大損をこいたことから、円キャリートレードの解消が誘発されると同時に、世界規模の株式ポジションの調整から円売りのヘッジ玉が戻り、一気にドル円は112円台をつける展開へ。

この展開は本当に面白いものを見させてもらったという意味も込めて、整理しておきたい。

8月13日の週:

月曜日: ゴールドマンが自身のファンド(Global Alphaではなく、Global Equity Opportunities Fund)へ$3bnの資金注入を決定。米国株式市場はこの朝方の報道を受け一時は持ち直すも、結局下げて引ける(後日談として、この$3bnはその後の相場の回復を受けて、一旦回復したものの、9月第一週は1.8%下落している模様)。

その後、株式市場は引き続き全世界で全面安の展開に。水曜日・木曜日にかけて、ドル円相場が112円代前半をつけるド━(゜Д゜)━ン!! 株についてはその後弱いながらも買いが入るが、円だけの急落に何故だか疑問。これは、ストレステストを実施していれば、事前に予測がついたかもしれない。特に、前回3月の世界同時株安から主要プレイヤーがどのようなポジションを積んでいたかを詳細に調べておくべきであった。結局のところ、結論としては
  • 欧米主要ファンドの日本株エクスポージャーはほぼ円ヘッジ済み(円売りポジション)。
  • キャリートレードの主要なファンディング元である欧州系銀行の円エクスポージャーもほぼヘッジ済み(円売りポジション)。
  • 一部買収案件の資金調達に関わって発生した円エクスポージャーもほぼヘッジ済み(円売りポジション)。
となっていたようだ。従って、今回起った対ドルでの円の急騰は、リスク調整に伴う日本株エクスポージャーの削減に伴うヘッジ玉の戻りと、欧州系銀行のクレジット悪化に伴うキャリートレードのファンディング先の変更或は解消に伴うヘッジ玉の戻りが主因になっているものと理解される。

ただし、ドル円の急落と機を一つにして、日本でのコールマーケットで資金不足が発生していた事に注目しておきたい。この前の週に行われたECBの資金供給と歩調を合わせて行われた日銀の10兆円規模の資金供給によって、火曜日にはゼロ金利まで下がったコールレートが外銀からの調達意欲を背景に急騰。一旦資金を引き上げた日銀が、週半ばには一転して資金供給へと追い込まれるという珍事(?!)が発生していた。積み期間との関係も考慮に入れる必要があるものの、キャリートレードとの関連で言えば、円相場が円高方向へ戻ると同時にキャリートレードを積みました向きがあるといえそうだ。

金曜日: メルトタウン寸前のNY市場に対し、FEDがdiscount rateの0.25%引き下げを発表し、すんでのところでmeltdownを回避。これは、前回FRBの声明文に明記されてあった窓口割引のレートのこと。さすがに利用を促すだけでは駄目だと思って、レートを下げてきた。この戦略はそもそも規定路線ではあったのだろうけれど、御見事です\(^o^)/。余談ながら、午後に予定されていた外部のエコノミストとのconference callもこのために急遽中止され来週へ延期 (;´Д`)

その後、8月20日の週は比較的落ち着いた動きに。主要銀行が坦々とdiscount windowを使った旨のアナウンスを流すとともに、バンカメはここぞとばかりに米国住宅ローン市場最大手のcountry wideの買収を発表。さすがに狙ってましたねという感じ。やっぱりここアメリカはその昔テラノザウルスが闊歩していた場所だけあって、弱肉強食だぁー (;´Д`)

マーケットへのインプリケーションとしては、引き続きキャリートレードは続きそうであるという事と、今後株式市場(特に日本)が軟化することがあれば、同時に円高が発生する可能性が高いということ。逆にいえば、日本株が堅調である限り、ヘッジ玉に伴ってドル高(外貨資産高)へ触れやすくやっており、日本の投資家にとってはユーフォリアの復活である。もちろん来週のFRBの判断には注意が必要だが、前回のエントリーでも触れたとおり、今回のサブプライム問題は米国の消費者への影響に関してはニュートラルもしくは小幅マイナスに止まる見通し。後は、住宅ローン関連のビジネスを持つ企業動向次第であろう。

月曜日, 8月 13, 2007

FRBの声明文

9日に公表されたFRBの声明文についての面白い報道があったので、転記しておく(FISCO 8/13付け 今日のクレジット市場から):

FRBは9日の240億ドルに続いて10日にも3回のオペで380億ドルと大量の資金供給を行った。さらに、NY時間の朝まだきには流動性の供給方針に関する声明文を公表した。

「(The Federal Reserve is providing liquidity to facilitate the orderly functioning of financialmarkets. The Federal Reserve will provide reserves as necessary through open market operations to promote trading in the federal funds market at rates close to the Federal Open Market Committee's target rate of 5-1/4 percent. In current circumstances, depository institutions may experience unusual funding needs because of dislocations in money and credit markets. As always, the discount window is available as a source of funding)」--。

「連邦準備制度は金融市場の秩序立った機能を促進するよう流動性を供給している。連邦準備制度はFF市場が連邦公開市場委員会の目標水準である5.25%近くで取引されるように公開市場操作を通じて必要な準備を供給していく。現状では預金取扱機関は短期金融市場やクレジット市場の混乱によって異例の資金需要が発生する可能性がある。通常どおり、割引窓口は資金調達手段として利用できる」--。

このような声明文は過去には1987年のブラックマンデーや01年の9/11テロで出されたのみであり、それ自体を取り上げると事態が相当深刻なことを示しているようだ。しかし、過去2回の簡潔な声明文と比較すると今回の声明文は大きく異なる点がある。

過去には、「連邦準備制度は米国の中銀としての使命に沿って、経済・金融システムを支えるために流動性の供給源としての役割を果たす意向であることを確認する」(The Federal Reserve, consistent with its responsibilities as the nation's
central bank, affirmed today its readiness to serve as a source of liquidity to support the economic and financial system)」(1987年10月20日)--、「連邦準備制度は営業中で活動している。割引窓口は流動性の必要を満たすために利用できる(The Federal Reserve System is open and operating. The discount window is available to meet liquidity needs)」(01年9月11日)--との声明が出された。

つまり、今回の声明文で特徴的なのは、資金供給の目的が「FF市場が連邦公開市場委員会の目標水準である5.25%近くで取引される」ことと明記されているところ。また、窓口貸出が「通常どおり」の「資金調達手段」とされている点にも注意したい。さらに、FRBは03年1月9日から窓口貸出の変更を行い、信用力の高い銀行にはFFレート誘導目標+1%、信用力の低い銀行にはFFレート誘導目標+1.5%の金利が適用されるということも重要だ(※それ以前の公定歩合はFFレート誘導目標を下回る水準だった)。ここから明らかになるのは、今次声明文は現時点でFRBがFFレート誘導目標の引き下げの必要性を感じていないことを示唆するものとの解釈が成り立つところ。もっとも、金融市場の問題が一層深刻化すれば利下げの必要性が議論されることはあり得るが、市中のFFレートを誘導目標まで押し下げることを主眼として流動性供給を行っている以上、誘導目標の引き下げはそれとは矛盾する措置だと言わざるをえない。

月曜日, 8月 06, 2007

ここ数ヶ月のマーケットの動きをどう理解したらよいのだろうか

今回のマーケットの動きはどのように理解したらよいのだろうか?「為替相場の変動は、後からみればかならずその根拠を明らかにすることができる」とおっしゃっていた前のボスにならって、ここ数ヵ月のマーケットの動きを分析してみたい。鍵となるのは、1) mortgage loan marketの構造変化と、2) 流動性調整からくるrisk re-allocationである。

まずはmortgage loan marketの構造変化について説明しよう。ノートをめくると4/17付けで、下記の書き込みがある:

(某格付け機関とのカンファレンスコール) 

マクロ経済への影響: 1) 2008, 2009に掛けて住宅投資は減少の見通し、2) 消費動向はニュートラルを見込む。Housing wealth creationがnon-housing wealth creationをoff-setする見込み(housing:1.2 tln 04,05 => 7.7bn 06; non-housing: 2.7 tln 04,05 => 3.2 tln 06)。

間接的な影響: プライム・サブプライム住宅ローンの組成額と失業率との間に見られたリンクが2001年頃から変化し始めている。これは、これまで格付け期間が拠り所としてきた過去に実行された住宅ローンのトレンドから外れることを意味しており、rating methodologyを変える必要があるかもしれない。但し、これが起こるようであれば、金融市場全体への影響は避けられないであろう。住宅ローン残高はGDP比で45%に達し、ここ数年の増加幅は年7%程度である。

このノートが意味するところは、これまで数十年に渡って安定してきたmortgage loan marketの構造変化であり、ノートにある通りその影響は大きいであろうことが容易に想像される。ただ、クオンツの立場から考えると、その大きさがよりはっきりする。MBSのプライシングモデルに関わったことのある人であれば直ぐに思い当たる事であるが、そのモデルはローンの返済・破綻動向に関する過去のトレンドに大きく依存している。従って、そのトレンドが変わるということは、モデルそのものの変更を余儀なくされる事を意味し、もちろんプライスへの影響は避けられない。しかも、この類のモデルは過去数年から数十年分のデータを注意深く分析して初めてできるものであり、その再構築には時間と共に大量のローンデータを必要とする。もし、格付け機関の言うとおりに2001年頃からのトレンド変化であるならば、十分なデータが得られないかもしれないし、得られたとしても検証の難しい作業である。

すなわち、2001年以降のビンテージの米国MBSは価格が良くわからないという状況に陥ってしまうのである。仮に年7%程度で住宅ローン残高が増加していると仮定すると、2001年から実行されたローン額は、ほぼGDPの20%に相当する(~ 2兆5000億ドル)ド━(゜Д゜)━ン!!

実際、価格がわからない状況になってしまった為、サブプライム問題が表面化してからというものサブプライム絡みの証券化商品のbidは引いてしまっている(価格がわからないので引くしかない、でも無価値になってしまったわけでもない)。更に、Moody's, S&Pがこれら商品の格付けの変更を認めてしまった(=構造変化を認めてしまった。ちなみにこの論点については、まだ詳しい格付けクライテリアを読み込めてないので、要確認。追記:出ましたね。やはりかなり変わっていて、変更後のサブプライム債権のデフォルト率はほぼ2倍ということです。でもこれでバリュエーションも落ち着くな。)為、mark downせざるを得なくなってしまった。もちろん、この類の商品の第一人者であり、こうした時にこそマーケットメイクをすべきベアスターンズ自体が危機に陥ってしまって、その機能を十分果たせていないのがさらに状況をややこしくしているわけで。。。ブローカーが自らもリスクを取るというビジネスモデルの限界がこの辺りに見え隠れするわけですな。。。(;´Д`)

一方で、サブプライム絡みの商品(RMBS)はマーケットで主に3つの用途の為に使われていた: 1) 世界的な金余りの中で比較的高いリターンをもたらす資産のうちのひとつ、2) CDOを通したレバレッジポジション(実質的には、RMBSを担保にその他のクレジットにレバレッジ投資をするポジション)の構築、3) レポマーケットを通したレバレッジポジションの構築。

このうち、まず3)によって積み上げられたポジションが、上記で説明したMBS市場の機能不全が起きると共に、担保取引を通して急速に巻き戻される結果となり、日々の資金調達の面で流動性調整が起こった(但し、表面上はベアスターンズをはじめ、幾つかのファンドの破綻を引き起こした今回の流動性調整は、信用リスクの伝播から発生するシステマチック・リスク(信用収縮)を未然に防いでいるという意味で健全な調整であると考えられる)。次に2)によって積み上げられたポジションの巻き戻しを通して、クレジット市場全体のスプレッド・ワイドニングが引き起こされた。そして最後に行き場所を失ったリスクマネーが新たな落ち着きどころを求めて、大規模なrisk re-allocationを起こしたと見るべきであろう。実際、ここ数年は逆の動き1)->2)->3)によってポジションが積み上がってきていたわけで、なんとも自業自得のような気が。。。ヽ(`Д´)ノウワァァァン

ここまで分析してみると、だいぶマーケットの動きが整合的に理解できるのではないだろうか。それでは、次の問題として、市場へのインプリケーションはどうなるのだろうか?

まずは、単純に米国モーゲージビジネスはファンダメンタルズが悪化しよう。したがって、株・債券(MBS)に関わらずこのセクターは弱含む。一方で、このセクター以外に目を向けるとファンダメンタルズは(景気変動に影響がない限り)変わっていないわけだから、一時的な調整に終わる可能性が高い。すなわちFRBが利下げしない限り、強気で良いだろう。問題は金融セクターである。

金融機関への波及については、RMBSのポジションと流動性リスクの2方面から考える必要があろう。まず、RMBSで典型的なのはやはり銀行勢。資本の厚い欧州勢(バークレイズ・ドイチェなど)はリスク資産としてある程度のエクスポージャーを持っている可能性が高い。次に、流動性リスクで被害を蒙るのはLBO絡みの融資がバランスシートに載っている投資銀行勢であろう。投資銀行としてはリーマンがもっとも大きなエクスポージャー(現状+パイプライン)を持っていると云われている。パイプラインの額は、むこう6ヶ月で凡そ500億ドルとのこと。他の投資銀行は、この半分から2/3程度の規模に留まる(ちなみに、今年前半のマーケット全体の額が3000億ドル規模であったことを考えると、かなりの減速である)。

したがって、奨励すべき投資戦略は、金融機関の株に関するプットの買い持ち戦略(隠れた損が実現する可能性を取る)か、新興国市場におけるvalue株(資源系企業株?)の買い(比較的高いリターンをもたらす数少ない資産のひとつ)といったところでしょうかね。引き続きクレジット市場に資金を置くなら、金融機関以外のコーポレートセクターの買いか、米国以外の地域で組成された証券化商品の買いかな。更に強気ならLBOのloanという選択肢も。。

うーーん。いまさらながらだけれど、やっぱり金融というのは業が深いなーー。ここまで書いてきて、ちと疲れたので、幾つか雑感を。

- リサーチやってたらわかるけど、米国での証券化商品市場は堅実な住宅ローン市場に支えられているといっても過言ではなかった。今だから云えるのかもしれないけれど。そもそも証券化商品の始まりはMBSであったわけだし、ここ数十年の住宅投資の安定成長から、その商品性にはある種の安心感があったのは否めないだろう。僕も個人的には、住宅価格の成長曲線をみてかなり安心したものだ。そのセクターがおかしくなったのだから、影響も大きいのは当然といえば当然。

- 一部に今回のマーケットの混乱の原因を、「Market to Modelで時価評価を行っていたものがMark to Marketにすると実際にはbidがないので価格が大幅下落」した為といった主張をしている人達もいるようで。損を時価評価(mark)の問題にすり替えようとしているようだけれど、そもそもその債券を売った業者がいるわけで、その人達はなんでbidを引いたか考えてみたら良いのではないかしらん。Market makerは理由もなくbidを引かないよ。

- 「下手なナンピン、スッカンピン」。同僚(というか上司)からの格言。ベアのファンドは年初からポジションを積み増しに来てたんだよね。。そして積んだポジションでレポして、更に買おうとしてた。。買い下がるのもいいけれど、担保価値減ってってるんだから、典型的なwrong way riskだよ。。ファンド立ち上げてから10ヶ月くらいしか経ってないのに。。。ホントこの格言にピッタリな人達でした。

- GMショック(03-05/2005)が懐かしい。あの頃はまだ過剰流動性がそれ程問題になっていなかったから、即日で20億ドル規模の流動性をsingle trancheに出せるとかメールが回ってたよなぁ。あの時はcorrelation shockでモデルに対する見直しが起きた面白い事例だったけれど、今回もキタナという感じ。やっぱりクレジット系のモデルはその基礎を統計分析に置いているだけに、金利・為替・株とは違って、独特やね。