今年はこの話題に関して一つの洞察を紹介することを試みて〆としましょう。今年は証券化商品に関する格付けの変動性(ボラティリティ)が随分話題になったものの、仮にこうした格付け基準の甘さを指摘したところで格付け会社にしてみればそんなの想定外でしたで終わってしまう可能性が大なわけですなヽ(´ー`)ノ。本来Aaaってのは、中身をこれっぽちも見ずに買っても元本毀損の可能性については考える必要がない、という意味を示す記号であったのに(#`Д´)。というわけで、格付けの変動性(ボラティリティ)として証券化商品のリスクプレミアムを把握できないか考えてみましょう。
さて、、
ではいったい格付けのボラティリティ(変動性)とは何だろうか。そもそも格付けの変動性は定量的に捕らえにくい。格付けはそもそもordinal numeralであって、cardinal numeralではない。すなわち、仮に形式的にそれぞれの格付けに対してある数字、例えば1から20、を1:1対応させてその変動率を推計してみたところで意味がある結果とはならないのは周知の事実。同じく、格付けにcardinal numeralであるデフォルト確率(スプレッド)を対応させてその変動率を考えても意味のある結果は得られない。言い方を変えれば、当該債券(証券化商品)自体のスプレッド・ボラティリティをいくら精緻に把握しようとも、格付けの変動(及びその1つの帰結としての債券価格の大幅な変動)を説明し得る意味のある結果は得られない。従って、このアプローチは少なくとも中長期の保有期間を想定した投資戦略及びリスク・マネジメントには使えない。
一方、昨今注目されている(特に証券化商品の)格付けの大幅かつ大量の見直しから直感的に理解される格付けの"急激な変動"を定量的に把握し、横ぐしを入れて比較するにはどうしたら良いのか?この話題については規制当局も強い関心をよせているので、この"変動率"は分かりやすくかつ意味のある量であるべきであって、さらに当局の理解が得られなければならない。今のところ一致する見方は、当たり前といえば当たり前であるわけだけれど、次の通り:
Rating volatility can be interpreted as probability of a rating transition over a specific period (say a 1 year).
各格付け会社は格付け遷移行列を毎年推計しているので、このデータがまず一つの指標となる。一方、懸案の証券化商品の格付けに関しては、最終的に損失率のシミュレーションを通して元本毀損の蓋然性を判定した上で格付けを付与しているので、このシミュレーション結果を見れば(or 将来に渡って延長すれば)、例えば同じAaaの商品についても格付けの"変動性"リスクを峻別できることになる。例えば、CPDOなどは確かにAaaだけれど、その格付けの変動性は実は高いというのが一般的な捉え方だろう。一般にレバレッジ比率の高い証券化商品の格付けはそのレバレッジ故に変動しやすく、仮にそのデフォルト確率がcorporate ratingの同一格付けのそれと等しくとも、デフォルトするまでの格付けパスはcorporate ratingのそれとは著しく異なるのである。これは言わずもがな価格変動性に大きな違いをもたらすわけで、投資家としては相当のリスクプレミアムを要求すべきである: 逆にいえば、例え格付けがAaaであろうと相応のリスクを覚悟すべきである。すなわち、証券化商品の格付けは従来通りあくまで元本毀損の蓋然性(デフォルト確率)を表すordinal numeralであって、それとは別に格付けのボラティリティという特有のリスク(実はこれがかなりの部分を占める)がレバレッジ比率の高い証券化商品には内在されているということ。リスク・マネジメントの観点からいえば、伝統的なスプレッド・ボラティリティの把握とストレステストだけでは十分ではなく、上で定義した格付けのボラティリティをリスク・ファクターとして取り入れる必要があるのだろう。
それでは皆さん、Have a happy holiday and see you next year!!
月曜日, 12月 31, 2007
日曜日, 12月 23, 2007
ベルリンフィル 07 Fall
待ってました!待望のベルリンフィル@カーネギーホール。以前にサントリーホールに聞きに行った時には、ホールのキャパシティを超えてしまっていたようで音が割れてしまっていて非常に残念だったんだよね。でも、今回はさすがにカーネギーホールだけあって、本当に音が綺麗に響く。ただ唯一の難点はいつもの通りサイモン先生が初めに打楽器系の楽曲を持ってくるので、どう反応してよいのやら(;´Д`) とはいうものの、最後はマーラーで格好良く〆てくれたので大満足。
Berliner Philharmoniker
Sir Siom Rattle, Music Director and Conductor
Magnus Lindberg,
Seht die Sonne (2007; US Premiere)
Gustav Mahler
Symphony No.9 (I-IV)
Berliner Philharmoniker
Sir Siom Rattle, Music Director and Conductor
Magnus Lindberg,
Seht die Sonne (2007; US Premiere)
Gustav Mahler
Symphony No.9 (I-IV)
土曜日, 12月 22, 2007
クリスマス♪
(1) こちらに来て改めて気がついたのだけれど、ニューヨーカーは皆どうでも良い見栄をはる。Hey, how are you?というと、みな間髪入れずに Good! 或いはGood! Good!! と返してくる。日本にいた時は、せいぜい"ぼちぼち"といった具合で特に絶好調をアピールするわけでもく、至って自然体だったものだけれど。
(2) こちらではクリスマスを前にアパートのdoormanやsuperの人達に日頃の感謝の気持ちを込めて、カードと金一封を送る習慣がある。お金は気持ちを表すのに一番手っ取り早くて効果的だから、というわけ。会社でも秘書さんにみんなで送る。やはり世の中、金なのだろうか。日本だったら色紙と花束になるところが、やはり現金。
(3) 最近日本の記事を読んでいると、やたらと「金融の高度化」というお題目が鼻につく。そして、専門人材の育成とくる。日銀も金融庁も皆でこうした路線を推進しているようだけれど、ちょっと疑問。NASAが月に人を始めて送った時には、特にロケット技術の高度化を目指していたわけでもなく、少なくとも技術者レベルでは月に行けたらスゲェ(゜д゜)!!ってな具合に頑張ってたんじゃないかな。まず夢が先にこなくっちゃね
*******************************************
この国には夢も楽しい事もいっぱいあって、みんな毎日へこたれずに頑張ってるけれど、彼等にとってそれらの価値はもしかしたら全てお金と同等で、だからこそ夢(金)のある金融には人材が絶えず供給されているのかしらん。だとしたら、ちょっと違った夢を追いかけている自分は、彼等に負けないくらいに、もっと自分の夢を膨らませないとね。
*******************************************
とはいうものの、やはり気になるボーナスの時期が到来。This is the time when we get paid! 結果、今年も契約更新をハッピーに無事終えて、来年もここで楽しく研究活動に従事できることが決定!いよいよ来年はこれまでに幾つか思いついたアイディアを巨大投資銀行へimplementする時期。Working paperも書いて更なる飛躍を期せるといいなー。ホップ・ステップ・ジャンプの2段目へ突入!
(2) こちらではクリスマスを前にアパートのdoormanやsuperの人達に日頃の感謝の気持ちを込めて、カードと金一封を送る習慣がある。お金は気持ちを表すのに一番手っ取り早くて効果的だから、というわけ。会社でも秘書さんにみんなで送る。やはり世の中、金なのだろうか。日本だったら色紙と花束になるところが、やはり現金。
(3) 最近日本の記事を読んでいると、やたらと「金融の高度化」というお題目が鼻につく。そして、専門人材の育成とくる。日銀も金融庁も皆でこうした路線を推進しているようだけれど、ちょっと疑問。NASAが月に人を始めて送った時には、特にロケット技術の高度化を目指していたわけでもなく、少なくとも技術者レベルでは月に行けたらスゲェ(゜д゜)!!ってな具合に頑張ってたんじゃないかな。まず夢が先にこなくっちゃね
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この国には夢も楽しい事もいっぱいあって、みんな毎日へこたれずに頑張ってるけれど、彼等にとってそれらの価値はもしかしたら全てお金と同等で、だからこそ夢(金)のある金融には人材が絶えず供給されているのかしらん。だとしたら、ちょっと違った夢を追いかけている自分は、彼等に負けないくらいに、もっと自分の夢を膨らませないとね。
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とはいうものの、やはり気になるボーナスの時期が到来。This is the time when we get paid! 結果、今年も契約更新をハッピーに無事終えて、来年もここで楽しく研究活動に従事できることが決定!いよいよ来年はこれまでに幾つか思いついたアイディアを巨大投資銀行へimplementする時期。Working paperも書いて更なる飛躍を期せるといいなー。ホップ・ステップ・ジャンプの2段目へ突入!
火曜日, 12月 11, 2007
25bpの利下げ
うーーん。25bpですか。マーケットはとりあえず下げで反応してますが、コメントを後できっちり読まねば。
追記(12/22/2007): FEDは金利引き下げの翌日に主要中銀(BOE,ECB,スイス及びカナダ中銀)と協調し、流動性供給を行う旨を発表した。FED自身は年末越えの資金として$40bnを供給する予定。金利はOIS型なので、考えうる最低金利ということになる。ステートメントにもあるように、インフレ懸念を完全に払拭できない中で金融システムの機能を維持していく為に、FFレートと流動性供給枠を別々に活用していくということで正論ではある。政府系ファンドがエクイティを入れてきていることもあり、これで足りるといいのだけれど。
追記(12/22/2007): FEDは金利引き下げの翌日に主要中銀(BOE,ECB,スイス及びカナダ中銀)と協調し、流動性供給を行う旨を発表した。FED自身は年末越えの資金として$40bnを供給する予定。金利はOIS型なので、考えうる最低金利ということになる。ステートメントにもあるように、インフレ懸念を完全に払拭できない中で金融システムの機能を維持していく為に、FFレートと流動性供給枠を別々に活用していくということで正論ではある。政府系ファンドがエクイティを入れてきていることもあり、これで足りるといいのだけれど。
Readings on core inflation have improved modestly this year, but elevated energy and commodity prices, among other factors, may put upward pressure on inflation. In this context, the Committee judges that some inflation risks remain, and it will continue to monitor inflation developments carefully.
日曜日, 12月 09, 2007
真夏の夜の夢。。。とその後始末
ようやく落ち着いてきたので、10月からの動きを幾つかまとめておきましょう。端的に云えば、短期金融市場の混乱は収束しことから既に第3フェーズは終了し、後始末に焦点の当たる恐怖の第4フェーズへ突入です (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
その前に幾つか第4フェーズのポイントを:
- 11月末時点: 単純に計算すると確率は7.5%となる。但し、各種統計に誤差項を加味すると、11.31%まで上昇の可能性がある。但し、ポイント2.の効果を1%の利上げと同等とすると、この確率は20%台前半まで上昇する。ちなみに、過去の統計をみると、20%台前半まで上昇するのは1つの景気拡大局面あたり多くて2-3回しか発生しておらず(1964年以降のデータによる)、危険水域と判断されよう。過去の例では、60%以上でアウト。
- 7月時点: ちなみに、この時期には単純に計算しても確率が27%となっており、明らかに危険水域入りしていた。
というわけで、今週のFOMCは下げ幅だけでなく、コメントについても要注目です。さて、では最後に時系列順に後始末の経過を追っていきましょう:
- 10/17/07(WSJ) ようやくCP市場は持ち直し。Super-fund設立の動きが報道されたこともあり、CP市場は発行残高が季節調整後で$1.3bn増加し、$1.888tnとなった。これで2週連続の増加(その前週は$4.9bn+)。一方ABCP市場は$11bn減少したものの、これまでの各週平均$70bnの減少に比べると市場環境の好転が伺える。大相場はこれにて実質的に終焉した。あとは後始末ですが、、
- ちなみに、主要なSIVの資産残高は右表の通り。Citi様のaffiliateはやっぱり多い。さすがにこんだけ多いと幾ら真面目にsuper-fund立ち上げても飛ばしだのきな臭いだの罵られても仕方ないかも。僕としては同意できないものの、マエストロもさすがに耐えられなかったみたい(source: New York Times):Mr. Greenspan’s take, expressed in an interview with the magazine Emerging Markets, seems broadly similar. “If you believe some form of artificial non-market force is propping up the market,” he said, “you don’t believe the market price has exhausted itself.”
- 10/19/07(Bloomberg)金融機関の損失発表が相次ぐ中で遂にSIVのデフォルト報道がドイツで。また欧州かよ(#`Д´)。Cheyne Finance PlcとIKB Deutsche Industriebank AG傘下のRhinebridge Plcです。Rhinebridgeについては、9/10付けでMTNがAAAからBBB-に格下げされていてかつ9/7, 9/10付けでBarclays Capitalとの間の流動性供給枠を使ってしまっているわけで。。デフォルトには今更感が漂うものの市場は大荒れに(;´Д`) もっともS&Pによると、資産は額面の63%まで劣化してしまっているということでこれはさすがに酷い。ちなみに、Moody'sの調査によると、SIV全体のnet assetをみると8/1時点で92-3%(一ヶ月で9-10pt下落)、9/1時点で85%となっている。
- 10/24/07 (WSJ) メリルが$8.4bnの評価損を計上。もうこれは野村と同列ですね。きちんとリスク管理の方法論を確立してから投資銀行と同様のビジネスモデルに参入しましょう。リテール証券としてのビジネスモデルは既にきちんと確立しているわけだから無理しなくてもいいのでは。。ヽ(´ー`)ノ とりあえず、ポイント1.に関する第一報が正式に報道されたのがこのタイミング。
- 10/25/07 (WSJ) ちなみに、これまでの報道(本格的な後始末前)をWSJが綺麗にまとめてくれました。ご苦労様です。あぁもう今年の金融業界は格好の餌食ですな(;´Д`) そしてこの程度で後始末が終わるはずもなく、、
- 10/31/07 FEDが25bpの利下げを決定。報道直後こそ一旦市場は失望売りで下げたものの、1時間後には回復基調へ復帰。公式発表にある通り、とりあえずこれで利下げは当面打ち止めなのか、、、と皆が思った瞬間。
- 11/3/07(WSJ) Citiも$12bnの評価損を第4四半期に計上することに。遂にPrince CEOも退任に追い込まれてしまい、ルービン大先生の登場です。しかし、ちょうどこの発表があった3日前に(11/29)に日本ではCitiの上場が東証に承認され11/5に上場を果たしたわけで、ホント金融庁(或いは東京市場?!)ナメられてますね。
- 11/7/07(WSJ) Morgan Stanleyも$3-6bnの評価損を計上する可能性をアナリストが指摘。株は猛烈に下げてます。うぅ。株はこれらの報道を嫌気して全世界で下がりまくり。市場が予想する金融システム全体としての損失規模が一気に上昇したのがこのタイミングではなかったかと。
- 11/15/07(WSJ) ファニーメイに関する追加損失懸念から、株価が一日で10%も下落。もう泣きっ面に蜂状態です(;´Д`)
- 11/27/07(WSJ) アブダビ投資庁がCitiへ$7.5bnの資本注入を発表。待ってました、ようやく救いの手がキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!! やっぱりオイルマネー強し。この辺りが数年前に起こった日本の金融危機と根本的に違うところですね。あの時は日本政府以外に誰もメガバンクに資本注入しようなぞとは思わなかったもんです。
- 11/30/07(金融庁) 遅きに失するとはこうしたことを指すわけで。金融庁による報告と預金取扱金融機関のサブプライム関連エクスポージャーの保有状況について。完全に世界の流れに取り残されてますが(;´Д`)
- Nov-Dec 2007 就職活動中の知り合いによると、投資銀行の採用はどこもストップ。今年前半まで空前の採用ブームだったのが嘘みたい。唯一採用しているのはリストラクチャリング中の野村だけだとか。。ただ、別の知り合いによるとGSは特にストップしているわけでもないそう。やはりどの分野でもアグレッシブなのか?!
- 12/5/07 約2年半ぶりに英国中銀も利下げを決断。
- 12/6/07 午後にブッシュ大統領がサブプライム・ローン関連の対策を正式発表。株は折からの利下げ期待に上がっていたところを、さらに上げ足を早めS&P500は前日比+1.5%で取引を終了。11月末を底値として1週間程度で7%近く上昇したことに。それにしてもsuper fund構想は腰折れに終わりそうだし、この対策も効果があるのかどうかは疑問。10月からの一連の報告で金融システム全体(Wall street)としての損失規模が見えてきたので、ポイント2.で挙げた効果を見極めた上で、一気に利下げで後始末を終わらせる腹積もりかしらん。11日の利下げ幅が焦点ですな。
- 12/8/07 ちなみに、サブプライム問題・米国経済のresession懸念にもまったく動じずに日本では更なる政治による混乱が加速中(;´Д`) 改正建築基準法によるマンション建築の遅延、貸出し上限金利の厳格化、信用保証協会による保証枠縮小、更にはガソリン税の暫定税率継続に民主党が反対の姿勢を明確にするなど、この手の話題には事欠かずといった様相を呈してきた。結果オーライなら良いのだけれど、当分視界不良が続きそう。。やっぱりアンダーウェイトにせざるを得ないのか。
- 12/10/07(WSJ) UBS が$10bnのwrite-downを報告。と同時に、GICから11bn Francs, 中東の投資家から2bn Francsの合計13bn Francs ($11.5bn)の資本注入を受けることを発表。注入方法は、Citiと同じCBの形で、クーポンはなんと9%。一気に膿を出した事を概ね好感し、株式市場は上昇。ただし、日本のマーケットは何故か下がり気味??日経の第一報が資本注入にまったく言及していないのもどうかと思うが。。
その前に幾つか第4フェーズのポイントを:
- 一連のdefault experienceを2002年のITバブル崩壊期と比較してみると明らかなように、今回は金融セクター発の危機である。よって、ポイントは金融システム全体(Wall Street)でどの程度の損失が発生し、システムはその損失に耐えられるのか?、という点。
- 直接金融・間接金融を問わず、金融セクター発の危機であれば信用創造のメカニズムそのものが目詰まりを起こす可能性があり、実体経済へはFFレートの引き 上げと同等の影響を及ぼしかねない。よって、ポイントはこの効果を相殺するためにFEDはどの程度の利下げを実施する必要があるのか?、という点。
- そもそも、サブプライム関連の証券価値についてはどの程度まで損失を見込めばよいのか、誰も納得感のある数字を示すことができていない。よって、ポイントは現状唯一の情報源である市場の価格付けがどこまで信頼に足るものなのだろうか?、という点。
- 11月末時点: 単純に計算すると確率は7.5%となる。但し、各種統計に誤差項を加味すると、11.31%まで上昇の可能性がある。但し、ポイント2.の効果を1%の利上げと同等とすると、この確率は20%台前半まで上昇する。ちなみに、過去の統計をみると、20%台前半まで上昇するのは1つの景気拡大局面あたり多くて2-3回しか発生しておらず(1964年以降のデータによる)、危険水域と判断されよう。過去の例では、60%以上でアウト。
- 7月時点: ちなみに、この時期には単純に計算しても確率が27%となっており、明らかに危険水域入りしていた。
というわけで、今週のFOMCは下げ幅だけでなく、コメントについても要注目です。さて、では最後に時系列順に後始末の経過を追っていきましょう:
- 10/17/07(WSJ) ようやくCP市場は持ち直し。Super-fund設立の動きが報道されたこともあり、CP市場は発行残高が季節調整後で$1.3bn増加し、$1.888tnとなった。これで2週連続の増加(その前週は$4.9bn+)。一方ABCP市場は$11bn減少したものの、これまでの各週平均$70bnの減少に比べると市場環境の好転が伺える。大相場はこれにて実質的に終焉した。あとは後始末ですが、、
- 10/19/07(Bloomberg)金融機関の損失発表が相次ぐ中で遂にSIVのデフォルト報道がドイツで。また欧州かよ(#`Д´)。Cheyne Finance PlcとIKB Deutsche Industriebank AG傘下のRhinebridge Plcです。Rhinebridgeについては、9/10付けでMTNがAAAからBBB-に格下げされていてかつ9/7, 9/10付けでBarclays Capitalとの間の流動性供給枠を使ってしまっているわけで。。デフォルトには今更感が漂うものの市場は大荒れに(;´Д`) もっともS&Pによると、資産は額面の63%まで劣化してしまっているということでこれはさすがに酷い。ちなみに、Moody'sの調査によると、SIV全体のnet assetをみると8/1時点で92-3%(一ヶ月で9-10pt下落)、9/1時点で85%となっている。
- 10/24/07 (WSJ) メリルが$8.4bnの評価損を計上。もうこれは野村と同列ですね。きちんとリスク管理の方法論を確立してから投資銀行と同様のビジネスモデルに参入しましょう。リテール証券としてのビジネスモデルは既にきちんと確立しているわけだから無理しなくてもいいのでは。。ヽ(´ー`)ノ とりあえず、ポイント1.に関する第一報が正式に報道されたのがこのタイミング。
- 10/31/07 FEDが25bpの利下げを決定。報道直後こそ一旦市場は失望売りで下げたものの、1時間後には回復基調へ復帰。公式発表にある通り、とりあえずこれで利下げは当面打ち止めなのか、、、と皆が思った瞬間。
- 11/3/07(WSJ) Citiも$12bnの評価損を第4四半期に計上することに。遂にPrince CEOも退任に追い込まれてしまい、ルービン大先生の登場です。しかし、ちょうどこの発表があった3日前に(11/29)に日本ではCitiの上場が東証に承認され11/5に上場を果たしたわけで、ホント金融庁(或いは東京市場?!)ナメられてますね。
- 11/7/07(WSJ) Morgan Stanleyも$3-6bnの評価損を計上する可能性をアナリストが指摘。株は猛烈に下げてます。うぅ。株はこれらの報道を嫌気して全世界で下がりまくり。市場が予想する金融システム全体としての損失規模が一気に上昇したのがこのタイミングではなかったかと。
- 11/15/07(WSJ) ファニーメイに関する追加損失懸念から、株価が一日で10%も下落。もう泣きっ面に蜂状態です(;´Д`)
- 11/27/07(WSJ) アブダビ投資庁がCitiへ$7.5bnの資本注入を発表。待ってました、ようやく救いの手がキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!! やっぱりオイルマネー強し。この辺りが数年前に起こった日本の金融危機と根本的に違うところですね。あの時は日本政府以外に誰もメガバンクに資本注入しようなぞとは思わなかったもんです。
- 11/30/07(金融庁) 遅きに失するとはこうしたことを指すわけで。金融庁による報告と預金取扱金融機関のサブプライム関連エクスポージャーの保有状況について。完全に世界の流れに取り残されてますが(;´Д`)
- Nov-Dec 2007 就職活動中の知り合いによると、投資銀行の採用はどこもストップ。今年前半まで空前の採用ブームだったのが嘘みたい。唯一採用しているのはリストラクチャリング中の野村だけだとか。。ただ、別の知り合いによるとGSは特にストップしているわけでもないそう。やはりどの分野でもアグレッシブなのか?!
- 12/5/07 約2年半ぶりに英国中銀も利下げを決断。
- 12/6/07 午後にブッシュ大統領がサブプライム・ローン関連の対策を正式発表。株は折からの利下げ期待に上がっていたところを、さらに上げ足を早めS&P500は前日比+1.5%で取引を終了。11月末を底値として1週間程度で7%近く上昇したことに。それにしてもsuper fund構想は腰折れに終わりそうだし、この対策も効果があるのかどうかは疑問。10月からの一連の報告で金融システム全体(Wall street)としての損失規模が見えてきたので、ポイント2.で挙げた効果を見極めた上で、一気に利下げで後始末を終わらせる腹積もりかしらん。11日の利下げ幅が焦点ですな。
- 12/8/07 ちなみに、サブプライム問題・米国経済のresession懸念にもまったく動じずに日本では更なる政治による混乱が加速中(;´Д`) 改正建築基準法によるマンション建築の遅延、貸出し上限金利の厳格化、信用保証協会による保証枠縮小、更にはガソリン税の暫定税率継続に民主党が反対の姿勢を明確にするなど、この手の話題には事欠かずといった様相を呈してきた。結果オーライなら良いのだけれど、当分視界不良が続きそう。。やっぱりアンダーウェイトにせざるを得ないのか。
- 12/10/07(WSJ) UBS が$10bnのwrite-downを報告。と同時に、GICから11bn Francs, 中東の投資家から2bn Francsの合計13bn Francs ($11.5bn)の資本注入を受けることを発表。注入方法は、Citiと同じCBの形で、クーポンはなんと9%。一気に膿を出した事を概ね好感し、株式市場は上昇。ただし、日本のマーケットは何故か下がり気味??日経の第一報が資本注入にまったく言及していないのもどうかと思うが。。
木曜日, 12月 06, 2007
月曜日, 12月 03, 2007
It's a small world
やはりこの業界、かなり狭い。
昨日ちょっとした用事を済ませるためにマンハッタン北部の某所を訪ねたら、何と偶然はじめて就職した会社の同期とバッタリあってしまった。お互い変わってはいるものの、僕の顔を覚えてくれていたようで久方ぶりの再会となった。8年ぶりだよ。彼女は入社して直ぐに会社を辞めて、しばらく投資銀行で働いた後はニューヨークへ渡ったって聞いていたけれど、まさかここで会うことになるとはね。今はミッドタウンにあるヘッジファンドで働いてるらしく、相変わらず活躍してるようで何より。
そして今日のニューヨークは初雪で、普段はくすんだ色のビルも雪化粧。奥さんと二人で買い物に出かけてロックフェラーのクリスマス・ツリーを眺めてみたり。時間が過ぎていくのは早いけど、たまに噛み締めてみるとなんとも味があって良いものです (´ー`)y-~~
昨日ちょっとした用事を済ませるためにマンハッタン北部の某所を訪ねたら、何と偶然はじめて就職した会社の同期とバッタリあってしまった。お互い変わってはいるものの、僕の顔を覚えてくれていたようで久方ぶりの再会となった。8年ぶりだよ。彼女は入社して直ぐに会社を辞めて、しばらく投資銀行で働いた後はニューヨークへ渡ったって聞いていたけれど、まさかここで会うことになるとはね。今はミッドタウンにあるヘッジファンドで働いてるらしく、相変わらず活躍してるようで何より。
そして今日のニューヨークは初雪で、普段はくすんだ色のビルも雪化粧。奥さんと二人で買い物に出かけてロックフェラーのクリスマス・ツリーを眺めてみたり。時間が過ぎていくのは早いけど、たまに噛み締めてみるとなんとも味があって良いものです (´ー`)y-~~
木曜日, 11月 22, 2007
NYでの生活立ち上げ記録 ~ 年金 編
今日は数少ないアメリカの休日(Thanksgiving Day)で、お休み。お店もレストラン以外は基本的に営業していないので、家でのんびり。
日本でも今年話題になった年金問題だけれど、僕のように米国籍の企業に現地採用された場合、この問題は更にやっかいになる。ちょっとまとめておこう。
まず日本では年金は所謂3階建てになっているのが普通で、その1階部分については国民年金、2階部分については厚生年金、3階部分については企業型401k+Cash Balance Plan(所謂退職金制度)が用意されていた。日本の一部上場会社と比べても遜色なく満足していたのだけれど、赴任にあたりその全てを脱退してこなければならなかったヽ(`Д´)ノウワァァァン じゃあ米国ではどうなるのかというと、2005年に日米社会保障協定が締結されたので1階部分と2階部分の年金については掛け捨てはなくなったものの、将来はドル建てで米国社会保障制度から年金を受けることに。更には所謂3階部分はこちらの401k制度と企業毎の年金制度にとって代わられたので、これらについても将来はドル建てで受け取ることに(;´Д`) もう僕の年金は為替リスクは大きいし、ボロボロだと正直落ち込んでいたのだけれど、年度末のプラン見直し時に重大な事に気が付いた! 401kに関する税金の優遇措置である。
ニューヨークに転勤になる前からこちらの税金の高さは聞き及んでいたものの、実際に働き始めると驚いてしまった。日本では社宅制度などを使って、実効税率を15-17%に押さえていたのだけれど、なんとこちらでは連邦所得税+ニューヨーク州税+ニューヨーク市税+給与税(payroll tax = social security tax + medicare tax)で合計27.4%も税金を取られてしまうド━(゜Д゜)━ン!!ポイントはニューヨークは州税・市税ともに全米トップの税率を誇り、さらには給与税(日本でいうところの厚生年金保険料や健康保険料に相当)がそのうち7.65%を占めるということ。給与税の仕組みの詳細については、こちらの本
(p.75)を参考にしてもらうとして、この数字には正直閉口してしまったいたヽ(´ー`)ノ
では、401kの税金優遇制度を使うとどうなるか?
そもそも、401kとは米国社会保障制度の一部であり、個人向けの年金制度(or 貯蓄奨励制度)である。ポイントは、1) 給与から専用口座に税金控除前に拠出できて、2) 運用期間中は運用益に税金を掛けられることはなく、3) 59.5歳以降に引き出し可能になり、4) 引き出し時に源泉所得税20%を課されるものの最終的には他の所得との合算で税金を課されることになる、ということ(59.5歳以前に引き出すと、ペナルティーで10%の税金を徴収される)。日米の制度設計に関する違いのポイントは、日本では企業が拠出しその拠出額は最大JPY46,000であるものの、米国ではまず個人がその給与から最大30%まで拠出し、その一部(うちの会社では最大6%)を会社が年度末に拠出する、ということ。
これらを考え会わせると、まず引き出し時の源泉所得税は運用期間にもよるが、仮に20年間運用すると考えると年間0.90%のコストにしかならず(ちなみに過去1世紀の米国での預金利率の平均は3%前後)、給与から最大30%を拠出すると概ね実行税率を30% x 27.4% = 8.22%削減できる━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!もう少し精密にシミュレーションをしてみると、税の累積効果があるので、実際には21%拠出することで、実行税率を20.2%にまで押さえられることがわかる。これはかなりデカイ!!なので、もちろん401kは基本的に貯蓄制度なわけだから拠出額を多くすればするほど毎月のキャッシュフローは減るわけだけれど、このリスクに耐えられさえすればこの制度を使った方が断然お得なわけ。日系企業の駐在員はニューヨークにいれば家賃補助も毎月USD3,000くらい出るみたいだし羨ましいなぁと思っていたのだけれど、これでようやく僕も現地採用になったメリットが享受できそう(^ω^)
追記 (12/22/2007):このエントリーを書いた後に、実際に401kプランをいじっていたら、重大な事実を見落としていた事に気が付いてしまった。何と401kの拠出金には法律で上限が設定されていた(;´Д`) 結局、節税効果はあるものの、3-5%程度に圧縮さてしまうことに。やはり世の中うまくできてます。
日本でも今年話題になった年金問題だけれど、僕のように米国籍の企業に現地採用された場合、この問題は更にやっかいになる。ちょっとまとめておこう。
まず日本では年金は所謂3階建てになっているのが普通で、その1階部分については国民年金、2階部分については厚生年金、3階部分については企業型401k+Cash Balance Plan(所謂退職金制度)が用意されていた。日本の一部上場会社と比べても遜色なく満足していたのだけれど、赴任にあたりその全てを脱退してこなければならなかったヽ(`Д´)ノウワァァァン じゃあ米国ではどうなるのかというと、2005年に日米社会保障協定が締結されたので1階部分と2階部分の年金については掛け捨てはなくなったものの、将来はドル建てで米国社会保障制度から年金を受けることに。更には所謂3階部分はこちらの401k制度と企業毎の年金制度にとって代わられたので、これらについても将来はドル建てで受け取ることに(;´Д`) もう僕の年金は為替リスクは大きいし、ボロボロだと正直落ち込んでいたのだけれど、年度末のプラン見直し時に重大な事に気が付いた! 401kに関する税金の優遇措置である。
ニューヨークに転勤になる前からこちらの税金の高さは聞き及んでいたものの、実際に働き始めると驚いてしまった。日本では社宅制度などを使って、実効税率を15-17%に押さえていたのだけれど、なんとこちらでは連邦所得税+ニューヨーク州税+ニューヨーク市税+給与税(payroll tax = social security tax + medicare tax)で合計27.4%も税金を取られてしまうド━(゜Д゜)━ン!!ポイントはニューヨークは州税・市税ともに全米トップの税率を誇り、さらには給与税(日本でいうところの厚生年金保険料や健康保険料に相当)がそのうち7.65%を占めるということ。給与税の仕組みの詳細については、こちらの本
では、401kの税金優遇制度を使うとどうなるか?
そもそも、401kとは米国社会保障制度の一部であり、個人向けの年金制度(or 貯蓄奨励制度)である。ポイントは、1) 給与から専用口座に税金控除前に拠出できて、2) 運用期間中は運用益に税金を掛けられることはなく、3) 59.5歳以降に引き出し可能になり、4) 引き出し時に源泉所得税20%を課されるものの最終的には他の所得との合算で税金を課されることになる、ということ(59.5歳以前に引き出すと、ペナルティーで10%の税金を徴収される)。日米の制度設計に関する違いのポイントは、日本では企業が拠出しその拠出額は最大JPY46,000であるものの、米国ではまず個人がその給与から最大30%まで拠出し、その一部(うちの会社では最大6%)を会社が年度末に拠出する、ということ。
これらを考え会わせると、まず引き出し時の源泉所得税は運用期間にもよるが、仮に20年間運用すると考えると年間0.90%のコストにしかならず(ちなみに過去1世紀の米国での預金利率の平均は3%前後)、給与から最大30%を拠出すると概ね実行税率を30% x 27.4% = 8.22%削減できる━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!もう少し精密にシミュレーションをしてみると、税の累積効果があるので、実際には21%拠出することで、実行税率を20.2%にまで押さえられることがわかる。これはかなりデカイ!!なので、もちろん401kは基本的に貯蓄制度なわけだから拠出額を多くすればするほど毎月のキャッシュフローは減るわけだけれど、このリスクに耐えられさえすればこの制度を使った方が断然お得なわけ。日系企業の駐在員はニューヨークにいれば家賃補助も毎月USD3,000くらい出るみたいだし羨ましいなぁと思っていたのだけれど、これでようやく僕も現地採用になったメリットが享受できそう(^ω^)
追記 (12/22/2007):このエントリーを書いた後に、実際に401kプランをいじっていたら、重大な事実を見落としていた事に気が付いてしまった。何と401kの拠出金には法律で上限が設定されていた(;´Д`) 結局、節税効果はあるものの、3-5%程度に圧縮さてしまうことに。やはり世の中うまくできてます。
土曜日, 11月 10, 2007
証券化商品の格付けについて考える
(これも9月に入稿したので、ちょっと話題が古いですね。すみません。)
最近物議を醸している証券化商品(CDO,RMBS等)の格付けについて取り上げてみたい。これはデフォルト確率の推定に関わるモデルの問題に関連していて、クオンツの立場から考えても興味深い。
まずは、Moody's president Brian Clarksonのぶっちゃけトークから引用してみよう:
それに、今回の件は直接金融の信用創造を阻害してしまったという意味で、新しいタイプの信用収縮と言えそう。
では実際に何が問題であったのだろうか。そもそも証券化商品の格付けはbankruptcy remoteを保証するスキームやコミングリング・リスクの評価を終えてオリジネーターとサービサー絡みのリスクを分離した後は、対象資産プールの損失分布(or 償還の蓋然性)を推定することに集約される。もちろん格付け会社は細心の注意を払って損失分布を推定し、特に高格付けを付与する場合にはデフォルト確率(PD)にストレスを掛けて念には念を入れている。ただ、僕の見立てでは今回問題になったのはこうした損失分布を推定する際に使われる肝心のストレス倍率ではなかったのかと。。
最近の急激な格下げで注目を集めている中小企業のCBOオール・ジャパンを例にとって、軽く試算してみる。デフォルト確率としては、S&Pの中小企業クレジット・モデルによる予想貸倒率(年率0.8%)を仮定してみよう(ちなみに、これはS&Pが当該当CBOに予備格付けを付与した時点でのS&Pの「ベース・デフォルト率」の1.7倍程度 (source: FISCO))。仮に信頼区間を68%(1標準偏差)で計算すると必要となるストレスPD値および倍率は次のようになる:
Gaussian copula w/ asset correlation 15% => 2.169% (x2.77)
Gaussian copula w/ asset correlation 30% => 4.063% (x5.07)
Student-t copula w/ asset correlation 30% => 7.798% (x9.74)
これらの数字はS&Pが発表している「中小企業CLO・CBOの格付け手法 - 中小企業クレジット・モデルを活用した分析手法を中心に」に記されているAAA格付けに用いるストレス倍率(5-8倍)とちょうど同水準である。一方で、ボラティリティのボラティリティが15%だとして計算すると、信頼区間はちょうど75%(1.15標準偏差)となる。この数字を使ってもう一度同じ計算をしてみると:
Gaussian copula w/ asset correlation 15% => 2.637% (x3.29)
Gaussian copula w/ asset correlation 30% => 5.172% (x6.46)
Student-t copula w/ asset correlation 15% => 7.091% (x8.86)
Student-t copula w/ asset correlation 30% => 9.441% (x11.8)
となり、S&Pが仮定するストレス倍率を30%-50%上回る結果となってしまう。更には直近6ヶ月のデフォルト率(年率4.7%=ベースデフォルト率の10倍!!)も十分予測の範囲内に収まることがわかる。したがって、ストレス倍率 5-8倍はちょっと低いのではないかと思うわけで。そもそも、この数字の根拠も曖昧だし(誰か知っていたら教えて下さい!)。9/11時点での格付け変更がどの程度のストレス倍率を仮定しているのか発表されていないものの、上記程度のストレスは仮定しておいて欲しいもの(ちなみに、8/28の関連プレスリリースはこちら)。もちろんこれは日本の事例であって、欧米での基準がどうなっているかを精査する必要があるがストレス倍率の議論はもっとオープンになされていいのではないかと思う。
結局のところ、証券化商品にありがちな高格付け・ハイイールド商品のカラクリはこうしたボラティリティに関するコールオプションが格付け時にゼロ評価されてきた為に起こっていた裁定機会であった可能性が高い。もちろん本来あるはずのオプション価値はハイイールド或いは業者の手数料として相応に落ちている訳だから、投資家としても文句はいいづらいところではある。逆に現在は理論的な根拠が薄いままスイングが逆方向へ行き過ぎている可能性が高いので、絶好の買い場であろう(新しいストレス倍率の水準は要チェック)。一旦下げた後は格付けが上がっていくフェーズに入っていくのではないか。市場へのインプリケーションとしては、格付けとスプレッドが密接に関連している市場慣行上、格付け方法を丹念に調べていけばレラティブバリューの機会を捉えることができよう。もっとも最近の価格下落率を見ると、レラティブバリュー云々の議論をする気が失せてしまうのも十分納得できるわけで、反論は甘んじて受けましょう。
最近物議を醸している証券化商品(CDO,RMBS等)の格付けについて取り上げてみたい。これはデフォルト確率の推定に関わるモデルの問題に関連していて、クオンツの立場から考えても興味深い。
まずは、Moody's president Brian Clarksonのぶっちゃけトークから引用してみよう:
" We're rating with the goal that if you purchased all triple-As, they would all perform the same. Now of course they don't. Some get downgraded, some get paid off. "But what we're doing is we're actually rating to a target. We're targeting everything to be money good at the end with very, very little variability at the triple-A level," he said. Inherent in structured finance, however, are rules that govern what can and cannot be done -- even moves to save deals that break down, whereas a company can sell assets or otherwise reduce debt to stave off problems. "There is little you can do once things start to go bad," Clarkson said. "Structured finance ratings tend to be more stable over a longer period of time than a fundamental rating. But when they actually move, they move much quicker." (NY Times)要は、昨今の格付けの急激な変化を認めた上で、やんわり企業の場合に期待される自浄努力(収益が悪化すればそれなりにリストラを行って財務体質の改善を図る等)が証券化商品にはあり得ないことなどを挙げて、その責任をストラクチャーの硬直性に転嫁してしまおうとしている。しかし、さすがにこれには無理があろうというもの(#`Д´)。これではせっかく最新の金融技術を使って、追加コストを極力抑えながら経済全体のリスク許容度を最大限利用しようとする証券化商品の意義(言い方を換えれば、リスクを幅広く投資家へ移転することによって資金調達を容易にするスキームの意義)が無くなってしまう。
それに、今回の件は直接金融の信用創造を阻害してしまったという意味で、新しいタイプの信用収縮と言えそう。
では実際に何が問題であったのだろうか。そもそも証券化商品の格付けはbankruptcy remoteを保証するスキームやコミングリング・リスクの評価を終えてオリジネーターとサービサー絡みのリスクを分離した後は、対象資産プールの損失分布(or 償還の蓋然性)を推定することに集約される。もちろん格付け会社は細心の注意を払って損失分布を推定し、特に高格付けを付与する場合にはデフォルト確率(PD)にストレスを掛けて念には念を入れている。ただ、僕の見立てでは今回問題になったのはこうした損失分布を推定する際に使われる肝心のストレス倍率ではなかったのかと。。
最近の急激な格下げで注目を集めている中小企業のCBOオール・ジャパンを例にとって、軽く試算してみる。デフォルト確率としては、S&Pの中小企業クレジット・モデルによる予想貸倒率(年率0.8%)を仮定してみよう(ちなみに、これはS&Pが当該当CBOに予備格付けを付与した時点でのS&Pの「ベース・デフォルト率」の1.7倍程度 (source: FISCO))。仮に信頼区間を68%(1標準偏差)で計算すると必要となるストレスPD値および倍率は次のようになる:
Gaussian copula w/ asset correlation 15% => 2.169% (x2.77)
Gaussian copula w/ asset correlation 30% => 4.063% (x5.07)
Student-t copula w/ asset correlation 30% => 7.798% (x9.74)
これらの数字はS&Pが発表している「中小企業CLO・CBOの格付け手法 - 中小企業クレジット・モデルを活用した分析手法を中心に」に記されているAAA格付けに用いるストレス倍率(5-8倍)とちょうど同水準である。一方で、ボラティリティのボラティリティが15%だとして計算すると、信頼区間はちょうど75%(1.15標準偏差)となる。この数字を使ってもう一度同じ計算をしてみると:
Gaussian copula w/ asset correlation 15% => 2.637% (x3.29)
Gaussian copula w/ asset correlation 30% => 5.172% (x6.46)
Student-t copula w/ asset correlation 15% => 7.091% (x8.86)
Student-t copula w/ asset correlation 30% => 9.441% (x11.8)
となり、S&Pが仮定するストレス倍率を30%-50%上回る結果となってしまう。更には直近6ヶ月のデフォルト率(年率4.7%=ベースデフォルト率の10倍!!)も十分予測の範囲内に収まることがわかる。したがって、ストレス倍率 5-8倍はちょっと低いのではないかと思うわけで。そもそも、この数字の根拠も曖昧だし(誰か知っていたら教えて下さい!)。9/11時点での格付け変更がどの程度のストレス倍率を仮定しているのか発表されていないものの、上記程度のストレスは仮定しておいて欲しいもの(ちなみに、8/28の関連プレスリリースはこちら)。もちろんこれは日本の事例であって、欧米での基準がどうなっているかを精査する必要があるがストレス倍率の議論はもっとオープンになされていいのではないかと思う。
結局のところ、証券化商品にありがちな高格付け・ハイイールド商品のカラクリはこうしたボラティリティに関するコールオプションが格付け時にゼロ評価されてきた為に起こっていた裁定機会であった可能性が高い。もちろん本来あるはずのオプション価値はハイイールド或いは業者の手数料として相応に落ちている訳だから、投資家としても文句はいいづらいところではある。逆に現在は理論的な根拠が薄いままスイングが逆方向へ行き過ぎている可能性が高いので、絶好の買い場であろう(新しいストレス倍率の水準は要チェック)。一旦下げた後は格付けが上がっていくフェーズに入っていくのではないか。市場へのインプリケーションとしては、格付けとスプレッドが密接に関連している市場慣行上、格付け方法を丹念に調べていけばレラティブバリューの機会を捉えることができよう。もっとも最近の価格下落率を見ると、レラティブバリュー云々の議論をする気が失せてしまうのも十分納得できるわけで、反論は甘んじて受けましょう。
金曜日, 11月 02, 2007
まるごとベートーベン
今回のカーネギーホールでは僕の好きなピアノ、しかもベートーベンを聞いてきた。しかも席は最前列!!前回の反省を踏まえて前の方の席を予約したらなんと今度は中央最前列になってしまったわけで。ただあまりにも前過ぎてせっかくのアンドラーシュのタッチがまったく見えなかった(;´Д`) まぁ十分演奏者の息遣いと最高の音を堪能できたので良しとしましょう。ちなみに、この公演では珍しくアンコールに答えてくれて20分以上も追加で彼の演奏を聞くことができてしまった。その心意気と素晴らしい演奏に拍手!
ANDRAS SCHIFF (アンドラーシュ・シフ), Piano
Ludwig Van Beethoven,
Sonata No.5 in C Monor, Op. 10, No. 1
Sonata No.6 in F Major, Op. 10, No. 2
Sonata No.7 in D Major, Op. 10, No.3
Sonata No.8 in C Minor, Op. 13, "Pathetique"
ANDRAS SCHIFF (アンドラーシュ・シフ), Piano
Ludwig Van Beethoven,
Sonata No.5 in C Monor, Op. 10, No. 1
Sonata No.6 in F Major, Op. 10, No. 2
Sonata No.7 in D Major, Op. 10, No.3
Sonata No.8 in C Minor, Op. 13, "Pathetique"
金曜日, 10月 26, 2007
バブルの発生要因およびその特徴を探る
(時間が経ってしまったのですが、このトピックは先月の話です)
NY赴任に当たって、一番楽しみにしていた事の一つが遂に実現した!そうNYには東京とは比べ物にならないほど大きなクオンツ・ソサエティが存在し、常時面白いイベントを開催すると共に皆ネットワーキングをしているので是非僕も参加したいと思っていたのです。その一つがコロンビア大学のThe Fu Foundation School of Engineering and Applied Science(どこかで聞いたような名前ですね?!)の金融工学講座が主催しているFE Practitioners Seminarです。有名なDermanが主に仕切っているようで、今シーズンはこれまた有名なヘッジファンドBlack Rockのオフィスを借りて開催されています。
そして第一回目が驚く事なかれあのHJMモデルのJarrow先生の講演でした。もう8年前になってしまうけれど、初めて金利デリバティブのモデルを作るときに繰り返し読んだのが、HJMの論文だったんだよね。なんだかこの8年間の出来事を思い出して感慨深かったものの、その語り口に手応えを感じてちょっと嬉しかったり。論文を読んでいるだけだと非常に抽象的でまさしく数学的な論文なのだけれど、一流の数学者がそうであるように、Jarrow先生も直感と理論の意味づけと、その応用に非常に心を砕いて説明してくれていた。そして抜群のウィット。やっぱりこうでなくっちゃね。
ところで肝心の内容はというと、最近なにかと話題の『バブル』についてです。『バブル』発生のメカニズムについては、レジームスウィッチングの考え方を使ってモデルを作っていく手法がこれまで大勢を占めていたわけだけれど、今回のJarrow先生の理論はFinanceで使われる手法に軸足を置いている点で異なります。詳しくは論文*に譲るとして、ポイントは次の4点:
まず注目すべきは債券型の資産(fixed income products)については、理論上『バブル』が発生し得ないということ。つまり、このタイプの資産価格はバブルに見えても実はバブルではなく、あくまで正常な価格形成の結果であるということで、一方的な価格下落は生じ得ない。これにはかなり驚いた!もちろんあくまで理論上の話なので、直ちにそれが市場に適用できるとは思わないもののこれだけ一般化された枠組みの中でこうした結論が得られるのにはやはり意味があるように感じる。まぁこの時に知り合ったCDOトレーダーはあんなのアカデミックな世界だけの話で、CDOマーケットは完全にバブってるよって言ってましたが(;´Д`)
次に注目すべきは『バブル』の発生と破裂についてのメカニズムがすっきり説明できるということ。『バブル』は市場がリスク調整を行う時(まさしく今!!)に発生し、その後必ず有限時間内に破裂する。数学的に言えば、『バブル』は同値マルチンゲール測度の交換時に発生し、0に各点収束する優マルチンゲールとして記述できる。経済的に言えば、よく知られているように『バブル』は資産価格の急上昇をもたらした後崩壊し、資産価格の急落をもって終焉する場合ももちろんあるものの、平均してみるとあたかも負の配当を資産価格から支払い続けるような効果をもたらす。
そして最後に注目すべき点は、デリバティブ市場の価格形成情報を使って『バブル』を観測できる可能性が示されたこと。具体的にはプット・コールパリティが成立する中で、コール価格にのみバブルが潜みうることを利用しようというもの(プットはリターンの上限が決まっているので、その価格はバブルに成り得ない)。これは正直凄い!もしかしたら将来はバブルのプライシングも夢ではないかもしれん。Jarrow先生がIn this context, there are lots of fun in derivative pricing!と言っていたのも納得できる。
簡単な応用として、不動産バブルについて考えてみよう。まず、不動産価格にはバブルが潜み得る。これは、少しの確率であっても不動産価格が青天井で上昇していくようなシナリオを描ければ良い。まさしく80年代の日本市場の姿であり、ここ最近の米国住宅市場であったわけですな。この場合にはリターンに上限がないので、上記理論によってバブルが潜み得ることになるド━(゜Д゜)━ン!!一方で、この期待(確率)が脆くも崩れ去るとたちまち不動産価格に上限が設定されてしまうので、一気にバブルが破裂することになる。例えば日本の場合には、総量規制で不動産向け融資を絞られてしまった結果、それまでの不動産価格の青天井シナリオの確率が減少すると共に、収益還元法の出現によってfixed income assetとしての性格が強調されるようになりバブルが一気に破裂したと理解できる。今後の研究としては、青天井である確率とバブルの大きさの関係なんかが解明されると面白いんだろうな。たぶん正の相関がある筈。
まだまだ実践的な理論にはなっていないものの、今後の発展が期待されますね(^ω^)
*R. Jarrow, P.Protter and K.Shimbo (2007), "Asset Price Bubbles in Incomplete Markets"
NY赴任に当たって、一番楽しみにしていた事の一つが遂に実現した!そうNYには東京とは比べ物にならないほど大きなクオンツ・ソサエティが存在し、常時面白いイベントを開催すると共に皆ネットワーキングをしているので是非僕も参加したいと思っていたのです。その一つがコロンビア大学のThe Fu Foundation School of Engineering and Applied Science(どこかで聞いたような名前ですね?!)の金融工学講座が主催しているFE Practitioners Seminarです。有名なDermanが主に仕切っているようで、今シーズンはこれまた有名なヘッジファンドBlack Rockのオフィスを借りて開催されています。
そして第一回目が驚く事なかれあのHJMモデルのJarrow先生の講演でした。もう8年前になってしまうけれど、初めて金利デリバティブのモデルを作るときに繰り返し読んだのが、HJMの論文だったんだよね。なんだかこの8年間の出来事を思い出して感慨深かったものの、その語り口に手応えを感じてちょっと嬉しかったり。論文を読んでいるだけだと非常に抽象的でまさしく数学的な論文なのだけれど、一流の数学者がそうであるように、Jarrow先生も直感と理論の意味づけと、その応用に非常に心を砕いて説明してくれていた。そして抜群のウィット。やっぱりこうでなくっちゃね。
ところで肝心の内容はというと、最近なにかと話題の『バブル』についてです。『バブル』発生のメカニズムについては、レジームスウィッチングの考え方を使ってモデルを作っていく手法がこれまで大勢を占めていたわけだけれど、今回のJarrow先生の理論はFinanceで使われる手法に軸足を置いている点で異なります。詳しくは論文*に譲るとして、ポイントは次の4点:
- 完備市場であっても、非完備市場であっても所謂『バブル』は発生し得て、価格上昇をもたらす。
- リターンの上限があらかじめ決まっている債券型の資産では、理論上『バブル』は発生し得ない。
- 『バブル』には必ず有限時間内での寿命が存在し、その効果は消滅する。
- 非完備市場では、何度も『バブル』が発生し得て、その発生時期は市場がリスク調整を行うタイミングと一致する。
- デリバティブ市場の価格形成情報から、『バブル』そのものについての情報を抽出できる。
まず注目すべきは債券型の資産(fixed income products)については、理論上『バブル』が発生し得ないということ。つまり、このタイプの資産価格はバブルに見えても実はバブルではなく、あくまで正常な価格形成の結果であるということで、一方的な価格下落は生じ得ない。これにはかなり驚いた!もちろんあくまで理論上の話なので、直ちにそれが市場に適用できるとは思わないもののこれだけ一般化された枠組みの中でこうした結論が得られるのにはやはり意味があるように感じる。まぁこの時に知り合ったCDOトレーダーはあんなのアカデミックな世界だけの話で、CDOマーケットは完全にバブってるよって言ってましたが(;´Д`)
次に注目すべきは『バブル』の発生と破裂についてのメカニズムがすっきり説明できるということ。『バブル』は市場がリスク調整を行う時(まさしく今!!)に発生し、その後必ず有限時間内に破裂する。数学的に言えば、『バブル』は同値マルチンゲール測度の交換時に発生し、0に各点収束する優マルチンゲールとして記述できる。経済的に言えば、よく知られているように『バブル』は資産価格の急上昇をもたらした後崩壊し、資産価格の急落をもって終焉する場合ももちろんあるものの、平均してみるとあたかも負の配当を資産価格から支払い続けるような効果をもたらす。
そして最後に注目すべき点は、デリバティブ市場の価格形成情報を使って『バブル』を観測できる可能性が示されたこと。具体的にはプット・コールパリティが成立する中で、コール価格にのみバブルが潜みうることを利用しようというもの(プットはリターンの上限が決まっているので、その価格はバブルに成り得ない)。これは正直凄い!もしかしたら将来はバブルのプライシングも夢ではないかもしれん。Jarrow先生がIn this context, there are lots of fun in derivative pricing!と言っていたのも納得できる。
簡単な応用として、不動産バブルについて考えてみよう。まず、不動産価格にはバブルが潜み得る。これは、少しの確率であっても不動産価格が青天井で上昇していくようなシナリオを描ければ良い。まさしく80年代の日本市場の姿であり、ここ最近の米国住宅市場であったわけですな。この場合にはリターンに上限がないので、上記理論によってバブルが潜み得ることになるド━(゜Д゜)━ン!!一方で、この期待(確率)が脆くも崩れ去るとたちまち不動産価格に上限が設定されてしまうので、一気にバブルが破裂することになる。例えば日本の場合には、総量規制で不動産向け融資を絞られてしまった結果、それまでの不動産価格の青天井シナリオの確率が減少すると共に、収益還元法の出現によってfixed income assetとしての性格が強調されるようになりバブルが一気に破裂したと理解できる。今後の研究としては、青天井である確率とバブルの大きさの関係なんかが解明されると面白いんだろうな。たぶん正の相関がある筈。
まだまだ実践的な理論にはなっていないものの、今後の発展が期待されますね(^ω^)
*R. Jarrow, P.Protter and K.Shimbo (2007), "Asset Price Bubbles in Incomplete Markets"
金曜日, 10月 12, 2007
財務省動く
サブプライム問題をきっかけとしてクローズアップされた新たな金融システム危機については以前のエントリーでコメントしてきたわけだけれど、遂にその対策の第一報がWSJ紙上にて今日の夕刻明らかになった。以外と時間が掛った印象だけど、引き続きインターバンク市場が混乱するなかで内密に議論が進められてきていたとのこと(3週間前から)で納得してみたり。来週月曜日のCITIの四半期決算発表に合わせて対策が公表される予定とのことで、もちろんその発表も注意深く見ていかないとね。まったく個人的な憶測でしかないけれど、やはりこのまま対策なしにCITIの決算発表を向かえると市場の混乱が再発しかねないとの判断があったんだろうか。
ポイントは、1) 今回はFEDではなく財務省が仕組み作りに動いていることと、2) 別エンティティ(Master-Liquidity Enhancement Conduit, or M-LEC)を作ってこれを銀行団がサポートすることで信用力を確保することの2つ。
FEDではなく財務省が出てきたという事は、今回の対策はLTCM危機での緊急財政出動とは異なり長丁場のシステム作りに当局自身が動いたということを意味する。LTCM危機の時はその後業界団体であるISDAを中心とした活動によって、カウンターパーティリスクの管理方法が確立してきたわけだけれど、今回の金融システム危機(07年証券化危機とでも呼んだらいいのかしらん?)はシステム全体の問題として当局が強い問題意識を持っていることが伺える。それにしても強い当局とはまさにこうした動きができるもの。翻って今の日本の当局は果たしてこうした力を発揮できるかどうか。また後で、当局という概念については取り上げてみたい。
別エンティティを作ってこれを銀行団がサポートするというのは記事にもあるようにいかにもLTCM危機時の対応を思い起こさせるものの、もはや一行のクレジット単体では現状あるファンディングを維持できないわけだから適正な対応であろう。それにしてもCITI単体(7つの関連エンティティの合計)で現在$100bn、8月末でみると$400bnも資産が積まれていたというのだから驚きだ。これは統合前の大手都市銀行一行あたりの総資産規模に匹敵する。インターバンク市場はこの規模のファンディングに対してよくも耐えられたものだ。
引き続き注意深くウォッチングしていきたい。
Big Banks Push $100 Billion Plan To Avert Crunch
追記(10/16/2007):このトピックに関して日本の報道を見ていて面白い事に気がついた。あくまでネット版ではあるものの、読売はNY時間の土曜日の朝には既にこの件で記事を載せていたのだけれど、日経はなんとNY時間の月曜(もしくは日曜の深夜)になるまで一切触れられていなかった。これはもしかして日経のニューヨーク特派員は金曜日早帰りして気がつかなかったか??或いはそもそも特派員がいないのでは??日経のネット版には記者の名前が載っていないので確認しようがないものの、これはかなりまずい。経済専門紙が読売に先越されてどうすんのよ。。ちなみにアサヒはチェックしてません。アサヒられるかもしれないからね(;´Д`)そもそも何故にネット版で経済欄が『ビジネス』カテゴリーに分類されてしまっているのだろう。。。
ポイントは、1) 今回はFEDではなく財務省が仕組み作りに動いていることと、2) 別エンティティ(Master-Liquidity Enhancement Conduit, or M-LEC)を作ってこれを銀行団がサポートすることで信用力を確保することの2つ。
FEDではなく財務省が出てきたという事は、今回の対策はLTCM危機での緊急財政出動とは異なり長丁場のシステム作りに当局自身が動いたということを意味する。LTCM危機の時はその後業界団体であるISDAを中心とした活動によって、カウンターパーティリスクの管理方法が確立してきたわけだけれど、今回の金融システム危機(07年証券化危機とでも呼んだらいいのかしらん?)はシステム全体の問題として当局が強い問題意識を持っていることが伺える。それにしても強い当局とはまさにこうした動きができるもの。翻って今の日本の当局は果たしてこうした力を発揮できるかどうか。また後で、当局という概念については取り上げてみたい。
別エンティティを作ってこれを銀行団がサポートするというのは記事にもあるようにいかにもLTCM危機時の対応を思い起こさせるものの、もはや一行のクレジット単体では現状あるファンディングを維持できないわけだから適正な対応であろう。それにしてもCITI単体(7つの関連エンティティの合計)で現在$100bn、8月末でみると$400bnも資産が積まれていたというのだから驚きだ。これは統合前の大手都市銀行一行あたりの総資産規模に匹敵する。インターバンク市場はこの規模のファンディングに対してよくも耐えられたものだ。
引き続き注意深くウォッチングしていきたい。
Big Banks Push $100 Billion Plan To Avert Crunch
The Citigroup plan would create a "superconduit," a fund backed by some of the world's biggest banks that would issue short-term debt and serve as a buyer of assets currently held by SIVs affiliated with the participating banks.According to the people familiar with the plan, these assets include securities tied to U.S. mortgages as well as debt pools called collateralized debt obligations.Because the superconduit would be backed by the big banks themselves, it's expected this would reassure investors and make them more willing to buy its short-term debt, or commercial paper.SIVs are purposely kept off the balance sheets of the banks to which they are affiliated. One reason for this is that banks want to keep down the amount of assets on their balance sheets to reduce the amount of capital that regulations require them to keep.
Because SIVs are off the balance sheet, it is difficult for investors to size up the financial risks they pose. Off-balance-sheet liabilities played a major role in the 2001 collapse of Enron Corp., and the makers of accounting rules have generally sought to get affiliated entities back on the balance sheets of the companies creating them.
追記(10/16/2007):このトピックに関して日本の報道を見ていて面白い事に気がついた。あくまでネット版ではあるものの、読売はNY時間の土曜日の朝には既にこの件で記事を載せていたのだけれど、日経はなんとNY時間の月曜(もしくは日曜の深夜)になるまで一切触れられていなかった。これはもしかして日経のニューヨーク特派員は金曜日早帰りして気がつかなかったか??或いはそもそも特派員がいないのでは??日経のネット版には記者の名前が載っていないので確認しようがないものの、これはかなりまずい。経済専門紙が読売に先越されてどうすんのよ。。ちなみにアサヒはチェックしてません。アサヒられるかもしれないからね(;´Д`)そもそも何故にネット版で経済欄が『ビジネス』カテゴリーに分類されてしまっているのだろう。。。
土曜日, 10月 06, 2007
The 2007-08 Season (Carnegie Hall) has just started !!
ちなみに左隣では女性二人組みがいちいち演奏に声を潜めて大はしゃぎ。確かに良い演奏だけどちょっとオーバーリアクションでは。。?と思っていたら前のおじさんは手を耳に当てて必死に音を拾おうとしてたり。バッチリ聞こえてるんだけどとなぁと思ったら、やはり相当耳の悪い方だったようで30分後には寝てしまってたり (;´Д`) と思ったら右隣ではスパイダーマンの育て親の老夫婦にそっくりのお年を召したカップルが中睦まじく静かに音楽に聞き入っていたり。なんだかとってもディープなファンに支えられているコンサートでした。
うーんそれにしてもこれからこのシーズンをこの人達と一緒に過ごすと思うとなんだか複雑( ´_ゝ`)
Lucerne Festival Orchestra, David Robertson as Conductor
Ludwig Van Beethoven, Symphony No. 9 in D Minor, Op. 125
This concert was performed without intermission, took about 1h 30min.
Lake Placid (Amtrackの旅)
ところで今更ではあるものの、最近国家間の情報戦に興味があるので「国家の罠」(佐藤 優)を読んでみた。何せ電車に片道6時間近く乗っているので本を読むしかない(´ー`)y-~~それにしてもこの本は勉強になった。対ロシア戦略および北方領土の日本側からの解釈・位置づけ、そして最近また話題になっている所謂国策捜査について平易に解説されているので日頃の勉強不足を補うことができた。肝心の情報戦については非常に為になる教訓が一つ:情報屋の世界では信用が第一であって、これを裏切った者は二度とその世界に再び受け入れられない、ということ。この線を守ることが、著者をして1年以上に及ぶ拘置所生活を決断させる一つの理由になったとある。金融で言うところの"My word is my bond"に通じる約束なのかなと感じた。或いは、リスクの伴う中でスピード感のある活動を支えるのはどの世界でも信頼できる仲間である、のであろう。
月曜日, 10月 01, 2007
日曜日, 9月 30, 2007
9月FOMCの結果によって第3フェーズへの突入を確認
9月のFOMCの直前には久々に手に汗握りました。私の職場でも一体FEDはどう対応するのか皆で賭けでもするかという話もでるくらい予想が割れる始末。結局0bp--50bpまでほぼ均等に意見が分かれたものの、FEDが利下げした場合には間違いなくEUR高・インフレ懸念が台頭するという点で意見が一致したのには笑うてしまった。マーケットも2日前までは利下げ織り込みが50bpで推移していたのに、前日になって25bp織り込み相場へ変化するという具合だったしね。
ところで、今回の利下げ措置で二つのポイントが確認されたのは有意義だったと思う。
一つ目のポイントは、WSJ紙上でも議論されてきたバーナンキ議長とグリーンスパン前議長とのマーケットへの対処方法の違い・類似性について確認がとれたこと。いわゆるグリーンスパン・プットの復活についてだ。かねてグリーンスパン前議長の時代には何かしらの変調が起こって資本市場が機能不全に陥った場合には、必ずFEDが緊急避難的に流動性を供給する或いはFF金利を引き下げることによってマーケットの一方的な下落を食い止めてきた。この意味で、これまでグリーンスパン・プットの存在が認識されていたわけだけれど、対照的に、バーナンキ議長は先月のNY株式市場のメルトダウンを前にしてdiscount rateを引き下げるのみでFF金利を据え置いた。結果、前述のWSJの記事にあるように、前議長との間の違いが際立ってしまった。しかし、9月のFRBで一気に50bp FF金利を引き下げて金融システムの混乱を沈静化する姿勢を鮮明にしたため、逆に金融システム自体を守るという点では二人の考え方が一致していることが確認されたといえるだろう(9月に入ってからの重大な金融システム危機については二つ目のポイントを参照)。一方で、景気および金融システムへ悪影響が出ないと考える限り、FEDは動かない事も同様に確認されたといえる。個人的にはバーナンキ議長への信認が更に高まったのだけれど、他の市場参加者の人はどうだったんだろう?その後のマーケットの動きをみると、同意見の人が多いような印象を受ける。
ちなみに、グリーンスパン・プットの発動タイミングについては、メモを参照のこと。
二つ目のポイントとしては、短期金融市場が思いもよらぬ原因で機能不全(流動性クランチ・信用収縮)に陥り、証券化時代の市場の不備が露呈した(確認がとれた)こと。
まずご存知の通り、短期資金調達手段は概ね次のように分類される:
こうした現象はcounterparty riskが顕在化したLTCM破綻時やS&L危機或いは日本の不良債権問題とも本質的に異なり、証券化時代に金融システムの抱える新たなリスクの火種といえる。今後業界がこの問題にどのように対処していくかウォッチングしていきたい。私の印象としては、本来信用創造は景気と正の相関を持っていて当然ではあるものの(景気悪化=>資金需要減退=>貸出減少, vice versa)、間接金融の作り出す相関に比べ、直接金融の方が相関が高い或いは振れが大きいといえそうで、このあたりの制御を問題意識とした更なる研究が必要なんだろうな(それともacademicの世界ではもうあるのかしら?)。
ちなみに、ECBが今回利下げしなかった理由も、欧州では個別行の損失からくる旧来型の信用収縮(英ノーザンロックが好例)に止まり、金融システム危機にまで発展しなかったことが一因であると考えると納得がいく。
市場へのインプリケーションとしては、グリーンスパン・プットの復活が明確な形で確認されたことはプラス。一方新たな金融システム上のリスクが確認されたことはマイナスで、調整局面は長引きそう。対策が講じられるまでには更に時間が掛かる見通し。もちろん市場はブル・スティープで反応。同時にグリーンスパンの謎も解けそうですな。
追記(10/10/07):ようやく短期市場の混乱も治まってきそう。それにしても8/10時点でuk base rateとO/N LIBORのスプレッドが72bpにも達しているにも関わらず、BBA O/N repo rateとのスプレッドは35bpに留まっているのは面白い。それと英国の短期金融市場の方が早くから混乱し始めていた事が見て取れる。ちなみに、店頭ではこの混乱に先んじてLibor fundingをBase rate fundingへ切り替えるswapが観測されていた。
ところで、今回の利下げ措置で二つのポイントが確認されたのは有意義だったと思う。
ちなみに、グリーンスパン・プットの発動タイミングについては、メモを参照のこと。
二つ目のポイントとしては、短期金融市場が思いもよらぬ原因で機能不全(流動性クランチ・信用収縮)に陥り、証券化時代の市場の不備が露呈した(確認がとれた)こと。
まずご存知の通り、短期資金調達手段は概ね次のように分類される:
- Repo Market, Stock Loan Market(主に証券会社のファンディングに使われる)
- 無担・有担コールマーケット or O/N Libor Market(インターバンク市場): 米国市場ではFF金利に支配されるが、日本では日銀の裏庭にいる短資会社に支配されている
- 銀行借入(Libor Market, インターバンク市場)
- CP市場(短期クレジット市場(無担))
- ABCP市場(短期クレジット市場(有担))
こうした現象はcounterparty riskが顕在化したLTCM破綻時やS&L危機或いは日本の不良債権問題とも本質的に異なり、証券化時代に金融システムの抱える新たなリスクの火種といえる。今後業界がこの問題にどのように対処していくかウォッチングしていきたい。私の印象としては、本来信用創造は景気と正の相関を持っていて当然ではあるものの(景気悪化=>資金需要減退=>貸出減少, vice versa)、間接金融の作り出す相関に比べ、直接金融の方が相関が高い或いは振れが大きいといえそうで、このあたりの制御を問題意識とした更なる研究が必要なんだろうな(それともacademicの世界ではもうあるのかしら?)。
ちなみに、ECBが今回利下げしなかった理由も、欧州では個別行の損失からくる旧来型の信用収縮(英ノーザンロックが好例)に止まり、金融システム危機にまで発展しなかったことが一因であると考えると納得がいく。
市場へのインプリケーションとしては、グリーンスパン・プットの復活が明確な形で確認されたことはプラス。一方新たな金融システム上のリスクが確認されたことはマイナスで、調整局面は長引きそう。対策が講じられるまでには更に時間が掛かる見通し。もちろん市場はブル・スティープで反応。同時にグリーンスパンの謎も解けそうですな。
土曜日, 9月 22, 2007
Hairspray
火曜日, 9月 18, 2007
FED 50bpの利下げを決断
ところで、水野さんはFRBのこの判断を受けてどうするんだろう??やっぱり利上げに一票ですかね。
日曜日, 9月 16, 2007
続報 サブプライム関連 第2フェーズへ突入
さて普段ならば夏休みで閑散とした相場であるものの、今年の8月はかなり熱い月でした。商いが薄い中で、幾つか悪いニュースが重なって、8月第1週は本当にさんざん。一部の欧州系銀行がサブプライム関連投資で大損をこいたことから、円キャリートレードの解消が誘発されると同時に、世界規模の株式ポジションの調整から円売りのヘッジ玉が戻り、一気にドル円は112円台をつける展開へ。
この展開は本当に面白いものを見させてもらったという意味も込めて、整理しておきたい。
8月13日の週:
月曜日: ゴールドマンが自身のファンド(Global Alphaではなく、Global Equity Opportunities Fund)へ$3bnの資金注入を決定。米国株式市場はこの朝方の報道を受け一時は持ち直すも、結局下げて引ける(後日談として、この$3bnはその後の相場の回復を受けて、一旦回復したものの、9月第一週は1.8%下落している模様)。
その後、株式市場は引き続き全世界で全面安の展開に。水曜日・木曜日にかけて、ドル円相場が112円代前半をつけるド━(゜Д゜)━ン!! 株についてはその後弱いながらも買いが入るが、円だけの急落に何故だか疑問。これは、ストレステストを実施していれば、事前に予測がついたかもしれない。特に、前回3月の世界同時株安から主要プレイヤーがどのようなポジションを積んでいたかを詳細に調べておくべきであった。結局のところ、結論としては
- 欧米主要ファンドの日本株エクスポージャーはほぼ円ヘッジ済み(円売りポジション)。
- キャリートレードの主要なファンディング元である欧州系銀行の円エクスポージャーもほぼヘッジ済み(円売りポジション)。
- 一部買収案件の資金調達に関わって発生した円エクスポージャーもほぼヘッジ済み(円売りポジション)。
ただし、ドル円の急落と機を一つにして、日本でのコールマーケットで資金不足が発生していた事に注目しておきたい。この前の週に行われたECBの資金供給と歩調を合わせて行われた日銀の10兆円規模の資金供給によって、火曜日にはゼロ金利まで下がったコールレートが外銀からの調達意欲を背景に急騰。一旦資金を引き上げた日銀が、週半ばには一転して資金供給へと追い込まれるという珍事(?!)が発生していた。積み期間との関係も考慮に入れる必要があるものの、キャリートレードとの関連で言えば、円相場が円高方向へ戻ると同時にキャリートレードを積みました向きがあるといえそうだ。
金曜日: メルトタウン寸前のNY市場に対し、FEDがdiscount rateの0.25%引き下げを発表し、すんでのところでmeltdownを回避。これは、前回FRBの声明文に明記されてあった窓口割引のレートのこと。さすがに利用を促すだけでは駄目だと思って、レートを下げてきた。この戦略はそもそも規定路線ではあったのだろうけれど、御見事です\(^o^)/。余談ながら、午後に予定されていた外部のエコノミストとのconference callもこのために急遽中止され来週へ延期 (;´Д`)
その後、8月20日の週は比較的落ち着いた動きに。主要銀行が坦々とdiscount windowを使った旨のアナウンスを流すとともに、バンカメはここぞとばかりに米国住宅ローン市場最大手のcountry wideの買収を発表。さすがに狙ってましたねという感じ。やっぱりここアメリカはその昔テラノザウルスが闊歩していた場所だけあって、弱肉強食だぁー (;´Д`)
マーケットへのインプリケーションとしては、引き続きキャリートレードは続きそうであるという事と、今後株式市場(特に日本)が軟化することがあれば、同時に円高が発生する可能性が高いということ。逆にいえば、日本株が堅調である限り、ヘッジ玉に伴ってドル高(外貨資産高)へ触れやすくやっており、日本の投資家にとってはユーフォリアの復活である。もちろん来週のFRBの判断には注意が必要だが、前回のエントリーでも触れたとおり、今回のサブプライム問題は米国の消費者への影響に関してはニュートラルもしくは小幅マイナスに止まる見通し。後は、住宅ローン関連のビジネスを持つ企業動向次第であろう。
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