金曜日, 8月 24, 2007

修行

修行とはすなわち、心を定めることである。

木曜日, 8月 23, 2007

オペラ座の怪人

今日から夏休み━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!。一週間の休暇なのだけれど、ほんとまともな休みは一年ぶりですな。

ところで、先日妻と二人でオペラ座の怪人を見に行った。せっかくニューヨークへ来たのだから、どれでもいいからとりあえずはミュージカルへ行こうということで、会社の割引で半額になっていたこの演目を選択。

まずはWest 46th Streetのレストラン街で軽くpre-theater dinnerを食べてミュージカルでもと思って店を予約していたのだけれど、行ってみると奥に向かって広いレストランの店内が妙にハイソに見えて。。チラッと横のバーをみるとかなりお高い様子が一目瞭然で。。。店員に声をかけられる前に、すぐさま二人そろって回れ右で退散してしまった(;´Д`)。この辺りは完璧な意思疎通ができとります。そうはいってもお腹が空いて途中で音でもなったら大変なので、となりのリーズナブルそうなイタリアン・レストランへ転進。これが以外にいけて、安い割りに大満足でデザートまで綺麗に召し上がりました。やっぱりこの道沿いはpre-theaterの人達が多く出没するだけあって、レストランの質もこなれてるんだろうね。初めて出張でNYに来た時に、上司に夕食を奢ってもらったのが懐かしいな。あの時もイタリアンだったんだよね。

月曜日, 8月 20, 2007

ファンドの流動性リスクの測定方法

RiskMetricsの今月号は面白かったので、ちょっと引用してみる:

...even if the agencies do their job well, it takes a long time to link new information about mortgages to new expectations on the likelihood of a CDO tranche paying its full interest and coupon
....For any investor, illiquidity presents the difficulty that new information is not reflected in prices in a timely manner, and when it is reflected, it is almost always through a significant price jump.
これはまさしく以前のエントリーで指摘した通りで、違和感はない。しかし、この流動性クランチの波の広がり具合についてと、その対処法はというところで面白いポイントが挙げられていた。

1.Trancheへの影響度合い

今回よく見られる指摘は、リスクが複雑に分散されていて、例えばどの商品が被害を被りそうか判断が難し く、よけいに参加者の疑心暗鬼を誘っているというものがある。この点については、ABXのボラティリティを分析することで、マーケット・インパクトを推計できる。ここで特徴的なのは、GMショックや今年2月の世界同時株安時に見られたような低格付け債だけが影響を受けるという構図が崩れてしまっていること。今回はきっちりAAAレンジまで影響を受けている。これは、mortgage poolの毀損が強い相関を持って起こっている事の裏づけと考えられるわけで、やはりmortgage market全体の構造変化が起こっているのだろう。Markがなかなか取れないときには、一気に相関を100%として、ビンテージの違いだけを意識したMark to Indexも一つの方法ということか。

2.ファンドの流動性リスクの測定方法

つぎにどのファンドが被害を被るか判断するにはどうしたら良いか?1つの方法として、ファンド・リターンの自己相関を測定すれば、どれくらいの流動性リスクを持っているかが把握できる。すなわち、Mark to Modelしていて、かつモデルをキャリブレートするのに十分な流動性がなければ、本来ある筈のない自己相関がファンド・リターンに現れる筈であるというもの。実際、熊さんのファンドの自己相関を見てみると、明らかに流動性がなかったことが読み取れる。ちなみに、レポートでこの分析の例外として指摘しているBasis Capitalについてだけれど、レポートで取り扱っているファンド名がBasis Pac-Rim Opportunity Fundとなっているのは間違いではないかしらん。正確には以前のエントリーでも指摘しているように、担保コールをしくったのはBasis Yield Alpha Fundである。FTの7/19付けの記事にも次のようにあるし。

Basis also warned investors in its other main fund, the Pac-Rim Opportunity fund, that it held a $79.8m stake in the Yield fund. But they said the Pac-Rim fund had more than half its investments in liquid bonds, and that it had not missed any margin calls.
たぶんYield Fundのリターンを分析すれば、同様の結果が得られるのではないかな。なので、この方法によれば、やばそうなファンドをほぼ全て炙り出せるというワケ(^ω^)。投資先のファンドのNAVの履歴は皆さんお持ちでしょうから試してみるとよいでしょう。

土曜日, 8月 18, 2007

シーツ

最近知ったのだけれど、どうもシーツはWamsutta製が良いらしい。ホントかなぁ。今度試してみよう。

ちなみに、ニューヨークではこういった買い物はBed, Bath & Beyondというお店でするのが一般的。日本でいうところのホームセンターみたいな感じなのだけれど、バーベキューセットからカーテン・枕まで揃っているお店で、やはりデパートなんかにいくよりは格段に安い。日々ローン返済の為、セコイ生活をしている我が家の味方です。

水曜日, 8月 15, 2007

今日のあなたは明日につながってますか?

確か奥さんが前にどこかで云っていた気がする。さてはて僕はどうだろう。
うーーんヽ(´ー`)ノ。終戦記念日にて。

月曜日, 8月 13, 2007

FRBの声明文

9日に公表されたFRBの声明文についての面白い報道があったので、転記しておく(FISCO 8/13付け 今日のクレジット市場から):

FRBは9日の240億ドルに続いて10日にも3回のオペで380億ドルと大量の資金供給を行った。さらに、NY時間の朝まだきには流動性の供給方針に関する声明文を公表した。

「(The Federal Reserve is providing liquidity to facilitate the orderly functioning of financialmarkets. The Federal Reserve will provide reserves as necessary through open market operations to promote trading in the federal funds market at rates close to the Federal Open Market Committee's target rate of 5-1/4 percent. In current circumstances, depository institutions may experience unusual funding needs because of dislocations in money and credit markets. As always, the discount window is available as a source of funding)」--。

「連邦準備制度は金融市場の秩序立った機能を促進するよう流動性を供給している。連邦準備制度はFF市場が連邦公開市場委員会の目標水準である5.25%近くで取引されるように公開市場操作を通じて必要な準備を供給していく。現状では預金取扱機関は短期金融市場やクレジット市場の混乱によって異例の資金需要が発生する可能性がある。通常どおり、割引窓口は資金調達手段として利用できる」--。

このような声明文は過去には1987年のブラックマンデーや01年の9/11テロで出されたのみであり、それ自体を取り上げると事態が相当深刻なことを示しているようだ。しかし、過去2回の簡潔な声明文と比較すると今回の声明文は大きく異なる点がある。

過去には、「連邦準備制度は米国の中銀としての使命に沿って、経済・金融システムを支えるために流動性の供給源としての役割を果たす意向であることを確認する」(The Federal Reserve, consistent with its responsibilities as the nation's
central bank, affirmed today its readiness to serve as a source of liquidity to support the economic and financial system)」(1987年10月20日)--、「連邦準備制度は営業中で活動している。割引窓口は流動性の必要を満たすために利用できる(The Federal Reserve System is open and operating. The discount window is available to meet liquidity needs)」(01年9月11日)--との声明が出された。

つまり、今回の声明文で特徴的なのは、資金供給の目的が「FF市場が連邦公開市場委員会の目標水準である5.25%近くで取引される」ことと明記されているところ。また、窓口貸出が「通常どおり」の「資金調達手段」とされている点にも注意したい。さらに、FRBは03年1月9日から窓口貸出の変更を行い、信用力の高い銀行にはFFレート誘導目標+1%、信用力の低い銀行にはFFレート誘導目標+1.5%の金利が適用されるということも重要だ(※それ以前の公定歩合はFFレート誘導目標を下回る水準だった)。ここから明らかになるのは、今次声明文は現時点でFRBがFFレート誘導目標の引き下げの必要性を感じていないことを示唆するものとの解釈が成り立つところ。もっとも、金融市場の問題が一層深刻化すれば利下げの必要性が議論されることはあり得るが、市中のFFレートを誘導目標まで押し下げることを主眼として流動性供給を行っている以上、誘導目標の引き下げはそれとは矛盾する措置だと言わざるをえない。

金曜日, 8月 10, 2007

It's a small world

世界は狭いものである。先日も東京と連絡を取り合っていたところその知り合いが、現ボスと昔別の会社で同僚同士であったということが判明した。二人とも転職してきていて、この会社で再会したんだそうだ。しかも、二人ともそれぞれ東京とニューヨークという地理的にかなり離れた場所で働いているのに。さっそくボスにその話をしたら、かなり懐かしがってた。たぶん、この業界友達の友達は、自分の友達っていう状態なんだろうな。悪い事はできません。

木曜日, 8月 09, 2007

今年も暑い。90°を超える日もざらだし、なによりオフィスと外との気温差が激しすぎる。湿度が60%-70%近辺で推移しているので、過ごしやすいのだけれど、最近スーツを着る気になれず。。昨日は土砂降りの雨で朝のラッシュアワーに地下鉄が全面的に止まってしまったので、暑い中歩いて出勤する羽目に。。なんだか去年出張で来たときも同じような事が起こったと思うだけれど、対策は立ててないのかなぁ。明日の朝もどうやら雷雨のようです。

月曜日, 8月 06, 2007

ここ数ヶ月のマーケットの動きをどう理解したらよいのだろうか

今回のマーケットの動きはどのように理解したらよいのだろうか?「為替相場の変動は、後からみればかならずその根拠を明らかにすることができる」とおっしゃっていた前のボスにならって、ここ数ヵ月のマーケットの動きを分析してみたい。鍵となるのは、1) mortgage loan marketの構造変化と、2) 流動性調整からくるrisk re-allocationである。

まずはmortgage loan marketの構造変化について説明しよう。ノートをめくると4/17付けで、下記の書き込みがある:

(某格付け機関とのカンファレンスコール) 

マクロ経済への影響: 1) 2008, 2009に掛けて住宅投資は減少の見通し、2) 消費動向はニュートラルを見込む。Housing wealth creationがnon-housing wealth creationをoff-setする見込み(housing:1.2 tln 04,05 => 7.7bn 06; non-housing: 2.7 tln 04,05 => 3.2 tln 06)。

間接的な影響: プライム・サブプライム住宅ローンの組成額と失業率との間に見られたリンクが2001年頃から変化し始めている。これは、これまで格付け期間が拠り所としてきた過去に実行された住宅ローンのトレンドから外れることを意味しており、rating methodologyを変える必要があるかもしれない。但し、これが起こるようであれば、金融市場全体への影響は避けられないであろう。住宅ローン残高はGDP比で45%に達し、ここ数年の増加幅は年7%程度である。

このノートが意味するところは、これまで数十年に渡って安定してきたmortgage loan marketの構造変化であり、ノートにある通りその影響は大きいであろうことが容易に想像される。ただ、クオンツの立場から考えると、その大きさがよりはっきりする。MBSのプライシングモデルに関わったことのある人であれば直ぐに思い当たる事であるが、そのモデルはローンの返済・破綻動向に関する過去のトレンドに大きく依存している。従って、そのトレンドが変わるということは、モデルそのものの変更を余儀なくされる事を意味し、もちろんプライスへの影響は避けられない。しかも、この類のモデルは過去数年から数十年分のデータを注意深く分析して初めてできるものであり、その再構築には時間と共に大量のローンデータを必要とする。もし、格付け機関の言うとおりに2001年頃からのトレンド変化であるならば、十分なデータが得られないかもしれないし、得られたとしても検証の難しい作業である。

すなわち、2001年以降のビンテージの米国MBSは価格が良くわからないという状況に陥ってしまうのである。仮に年7%程度で住宅ローン残高が増加していると仮定すると、2001年から実行されたローン額は、ほぼGDPの20%に相当する(~ 2兆5000億ドル)ド━(゜Д゜)━ン!!

実際、価格がわからない状況になってしまった為、サブプライム問題が表面化してからというものサブプライム絡みの証券化商品のbidは引いてしまっている(価格がわからないので引くしかない、でも無価値になってしまったわけでもない)。更に、Moody's, S&Pがこれら商品の格付けの変更を認めてしまった(=構造変化を認めてしまった。ちなみにこの論点については、まだ詳しい格付けクライテリアを読み込めてないので、要確認。追記:出ましたね。やはりかなり変わっていて、変更後のサブプライム債権のデフォルト率はほぼ2倍ということです。でもこれでバリュエーションも落ち着くな。)為、mark downせざるを得なくなってしまった。もちろん、この類の商品の第一人者であり、こうした時にこそマーケットメイクをすべきベアスターンズ自体が危機に陥ってしまって、その機能を十分果たせていないのがさらに状況をややこしくしているわけで。。。ブローカーが自らもリスクを取るというビジネスモデルの限界がこの辺りに見え隠れするわけですな。。。(;´Д`)

一方で、サブプライム絡みの商品(RMBS)はマーケットで主に3つの用途の為に使われていた: 1) 世界的な金余りの中で比較的高いリターンをもたらす資産のうちのひとつ、2) CDOを通したレバレッジポジション(実質的には、RMBSを担保にその他のクレジットにレバレッジ投資をするポジション)の構築、3) レポマーケットを通したレバレッジポジションの構築。

このうち、まず3)によって積み上げられたポジションが、上記で説明したMBS市場の機能不全が起きると共に、担保取引を通して急速に巻き戻される結果となり、日々の資金調達の面で流動性調整が起こった(但し、表面上はベアスターンズをはじめ、幾つかのファンドの破綻を引き起こした今回の流動性調整は、信用リスクの伝播から発生するシステマチック・リスク(信用収縮)を未然に防いでいるという意味で健全な調整であると考えられる)。次に2)によって積み上げられたポジションの巻き戻しを通して、クレジット市場全体のスプレッド・ワイドニングが引き起こされた。そして最後に行き場所を失ったリスクマネーが新たな落ち着きどころを求めて、大規模なrisk re-allocationを起こしたと見るべきであろう。実際、ここ数年は逆の動き1)->2)->3)によってポジションが積み上がってきていたわけで、なんとも自業自得のような気が。。。ヽ(`Д´)ノウワァァァン

ここまで分析してみると、だいぶマーケットの動きが整合的に理解できるのではないだろうか。それでは、次の問題として、市場へのインプリケーションはどうなるのだろうか?

まずは、単純に米国モーゲージビジネスはファンダメンタルズが悪化しよう。したがって、株・債券(MBS)に関わらずこのセクターは弱含む。一方で、このセクター以外に目を向けるとファンダメンタルズは(景気変動に影響がない限り)変わっていないわけだから、一時的な調整に終わる可能性が高い。すなわちFRBが利下げしない限り、強気で良いだろう。問題は金融セクターである。

金融機関への波及については、RMBSのポジションと流動性リスクの2方面から考える必要があろう。まず、RMBSで典型的なのはやはり銀行勢。資本の厚い欧州勢(バークレイズ・ドイチェなど)はリスク資産としてある程度のエクスポージャーを持っている可能性が高い。次に、流動性リスクで被害を蒙るのはLBO絡みの融資がバランスシートに載っている投資銀行勢であろう。投資銀行としてはリーマンがもっとも大きなエクスポージャー(現状+パイプライン)を持っていると云われている。パイプラインの額は、むこう6ヶ月で凡そ500億ドルとのこと。他の投資銀行は、この半分から2/3程度の規模に留まる(ちなみに、今年前半のマーケット全体の額が3000億ドル規模であったことを考えると、かなりの減速である)。

したがって、奨励すべき投資戦略は、金融機関の株に関するプットの買い持ち戦略(隠れた損が実現する可能性を取る)か、新興国市場におけるvalue株(資源系企業株?)の買い(比較的高いリターンをもたらす数少ない資産のひとつ)といったところでしょうかね。引き続きクレジット市場に資金を置くなら、金融機関以外のコーポレートセクターの買いか、米国以外の地域で組成された証券化商品の買いかな。更に強気ならLBOのloanという選択肢も。。

うーーん。いまさらながらだけれど、やっぱり金融というのは業が深いなーー。ここまで書いてきて、ちと疲れたので、幾つか雑感を。

- リサーチやってたらわかるけど、米国での証券化商品市場は堅実な住宅ローン市場に支えられているといっても過言ではなかった。今だから云えるのかもしれないけれど。そもそも証券化商品の始まりはMBSであったわけだし、ここ数十年の住宅投資の安定成長から、その商品性にはある種の安心感があったのは否めないだろう。僕も個人的には、住宅価格の成長曲線をみてかなり安心したものだ。そのセクターがおかしくなったのだから、影響も大きいのは当然といえば当然。

- 一部に今回のマーケットの混乱の原因を、「Market to Modelで時価評価を行っていたものがMark to Marketにすると実際にはbidがないので価格が大幅下落」した為といった主張をしている人達もいるようで。損を時価評価(mark)の問題にすり替えようとしているようだけれど、そもそもその債券を売った業者がいるわけで、その人達はなんでbidを引いたか考えてみたら良いのではないかしらん。Market makerは理由もなくbidを引かないよ。

- 「下手なナンピン、スッカンピン」。同僚(というか上司)からの格言。ベアのファンドは年初からポジションを積み増しに来てたんだよね。。そして積んだポジションでレポして、更に買おうとしてた。。買い下がるのもいいけれど、担保価値減ってってるんだから、典型的なwrong way riskだよ。。ファンド立ち上げてから10ヶ月くらいしか経ってないのに。。。ホントこの格言にピッタリな人達でした。

- GMショック(03-05/2005)が懐かしい。あの頃はまだ過剰流動性がそれ程問題になっていなかったから、即日で20億ドル規模の流動性をsingle trancheに出せるとかメールが回ってたよなぁ。あの時はcorrelation shockでモデルに対する見直しが起きた面白い事例だったけれど、今回もキタナという感じ。やっぱりクレジット系のモデルはその基礎を統計分析に置いているだけに、金利・為替・株とは違って、独特やね。

まとめ - サブプライムモーゲージ関連の動き

ここ数ヶ月のサブプライムモーゲージ関連の動きについて簡単にまとめてみた:

- Bankruptcy: Ownit Mortgage (Subprime lender, 1/2/07 - WSJ)
- Bankruptcy: Mortgage Lenders Network USA Inc. (Subprime lender, 2/6/07 - WSJ)
- Bankruptcy: New Century Financial Corporation (One of the biggest subprime lender in U.S. market, 4/2/07 - WSJ)

New Centuryは、サブプライムローンの組成額に関して、HSBCの次の2番手であった。ちなみに、この時点でNew Centuryの当該事業は$139mmの値がついてかつての株主であったヘッジファンドへ売却されるという観測(4/5)であったが、結局はほぼ60%ディスカウントの$58mmで他のヘッジファンドへ売却される事が決定している(5/4)。HSBCは金城湯池のリテールで儲かってるのでびくともしません。さすがです。

- Bear Hurt by Subprime Loans (6/12/07 - WSJ)
- Bear's two fund was taken over by Merrill (6/20/07)

この辺りから本格的にサブプライム問題がメディアで取り上げられるようになりましたね。

- Bankruptcy: Basis Yield Alpha Fund (Austlaria) (Hedge fund taking a same kind of strategy as Bear's two funds, failed margin call, 7/7/07 - FT)

- Moody's and S&P announced that it may cut its credit ratings on 91 CDO tranches, or about $5 billion of securities ( 7/12/07 - WSJ)

ここにきてようやく、格付け会社も動きました。今更なんだよと皆に馬鹿にされながらも、これは一生懸命やった結果として褒めてあげましょう。この作業がどれだけ大変かという内情については次のエントリーで書いてます。

- 欧州系銀行がサブプライム関連のエクスポージャーを保有している旨を決算発表時に言及 → 欧州発の株価下落が始まり、全世界へ波及 (7月末)

ちなみに、この直後あたりに野村も間抜けな発表をしてますね。。

- Bankruptcy: Bear's two funds. Bear Searns High-Grade Structured Credit Strategies Fund, Bear Searns High-Grade Structured Credit Strategies Enhanced Leverage Fund (Filed for bankruptcy, 8/1/07)

ついにやってしまいましたーー。Birning BedならぬBirning Houseですな。。。(;´Д`) First Bostonの二の舞にはなって欲しくないもんです。株価は年初来27%(8/6/07)の下落を記録。ちなみに、このファンドのequityを大量に持っている銀行が他にいるんですが、熊さんは保証してあげるつもりなんですかね。。?勢い余って逆に買われちゃったりして。まぁ他の案件で忙しいからそれはないか。

- S&P revised its outlook on Bear Stearns to negative from stable (8/3/07)

なんで今週なの。。?このニュースを受けて、熊さんの株価は6%の大幅下落です。かわいそう。。なんだか袋叩きですな(;´Д`)ちなみに、カンファレンスコールはこんな感じだったそうで。

- Bankruptcy: American Home Mortgage Investment (Prime and subprime lender, 8/6/07 - WSJ)

American Home Mortgageは全米の住宅ローン市場で10位のマーケットシェアを誇り、サブプライムへはほとんど手を出していなかったものの、破綻する事に。主な顧客がprimeとsubprimeの中間層であったことが引き金と見られる。

ちなみに、8月第1週はかなりの混乱がマーケットで見られたものの、ファンドが一部エクスポージャーを取ることでクライスラー案件(サーベラスによるクライスラーのLBO)は決着し、投資銀行勢はそのパイプラインを減らす事に成功している。一方で、マーケットは全般に悪化。エマージングマーケットにもその影響は広がり、ロシアとガスプロムのCDS spreadが開いてくるなど、これまでのトレンドから外れてくる事例が散見されている。

- 注目のFOMCですが、金利を5.25%へ据え置き。マーケットの動きには特に言及せず、インフレへの警戒を引き続き継続する旨のコメントを発表(8/8/07)。

最初の内は??だったものの、マーケットはこれを好感し、Dow Jones, SP500は共に2%強の上げ。

- 仏BNPパリバ傘下のヘッジファンドが新規申し込み・払い出しの凍結を発表。1ヶ月以内に対応策を発表の予定(8/9/07)。

- ECB $15bn, FED $24bnの資金供給を実施。FEDは14 day repo marketに$12bn, over night repo marketに$12bnをそれぞれ供給(8/9/07)。

朝方Eur-zone マーケットではECBの誘導目標金利が5.7%近辺まで急上昇していたが、資金供給を受け5.1%近辺で取引を終了。FEDの資金オペは明らかに即日及び次回の担保受け渡し(通常、担保受け渡しの最長期間は2週間刻み)への流動性供給である。CDOなどが担保として使えなくなってしまってので、その大体としての資金供給であるのは明らか。ECBの詳しいオペ内容はまだわからないものの、FEDに関しては、今回のサブプライム問題が引き起こしている"レポマーケットでの担保受け渡しを通したリスク調整"を強く下支えする意思を示したものと云える。株は大幅下落、債券は大幅上昇。

- 日銀が急遽資金供給オペを実施(10兆円規模) (8/10/07 TK time zone)

何故か日銀まで資金供給。。何故に??誰もサブプライム関連でレバかけてないのに。。もしかして円キャリートレードの巻き戻しに備えて資金供給したのかしらん??もしそうだとしたらレートが上がるか確認するまでほっときゃいいのに。。これじゃほんと間の悪い目立ちやがり屋さんでしかないのでは。。ところで、FEDのオペの影響はやはり大きかったですな。うちにもキャッシュが大量に流れ込んできて行き場所を失っていた。結局見せ玉だったのかな。

クレジット市場発の信用収縮はあり得るか

グッチーさんのエントリーでも書かれているように、最近はクレジットマーケット発のメルトダウンの可能性が取り沙汰されている。

サブプライム、それから派生したHFの利回りを上げるために大量発行されたCDOエクイティーの無価値化→そこからくる投資適格債券のジャンク化→それらを複合した、特にMBS,USTがレポに出ていることからくる信用収縮→クレジットマーケットの崩壊・・・・

そこで、本日のお題:「「クレジット市場発の信用収縮はあり得るか?」

まずは、信用収縮って一般にどのように理解されているのだろうか。辞書(goo辞書)を引いてみると、

【信用収縮】

金融市場で取引が停滞したり,資金供給が細る現象。金融機関が不良債権処理や自己資本比率引上げなどから,貸付金の回収や貸出しを控えることで引き起こされる現象。

とある。このような状況は、一般に金融引き締め局面、或いは景気後退局面において経済ファンダメンタルズと密接に関連した上で起こるのが常であろう。また、過去の経験から一部のレバレッジ・ファンドの経営危機・破綻に伴う金融システム自体の機能不全と関連付けられることもある(LTCM, Amaranthのデリバティブ取引, 山一證券の無担保コール取引)。

では、本日のお題「クレジット市場発の信用収縮はあり得るか」を考えてみよう。結論は否である。

何故か。その説明に入る前に、いろいろな誤解を解くためにも、過去の事例の整理とクレジット市場の基本を整理しておこう。

1. レバレッジ・ファンドの経営危機・破綻に伴う金融システム自体の機能不全からくる信用収縮

この可能性は現在の金融市場ではかなり低くなっている。LTCMの破綻時には、デリバティブ取引などに伴う信用リスクが正確に計測されていなかったこともあり、損害はファンドそのものだけでなく取引のある金融機関全てに波及する事となった。かつほぼ全ての金融機関がLTCMと取引を行っていた為、その損害は甚大なものとなりFEDがシステマチック・リスクに対処するために緊急対策を打った。しかし、同様に巨大なコモディティ・ポジションを保有し、危険な賭けをしていたAmaranthの破綻時(06年秋)には取引金融機関が損害を蒙ったという話は聞かないし、むしろ報道の焦点はこのトレーダーの経歴などに当てられていてゴシップ記事のようであった。ただ、実際にはny heating oil futuresのカーブがAmaranthの破綻後に急激に変化するほどのポジションが積み上がっており、OTC derivativeでもかなりのポジションを保有していて、うちでも担保を通して巨大なエクスポージャーのマネージを余儀なくされていた。

この事例は、一つのファンドの破綻はもはやシステマチック・リスク(信用収縮)を引き起こすものではなく、金融システムはこの問題に対する対処法(信用リスクのマネジメント)を既に実践済みであることを示唆している。もちろん技術レベルの低いところは未だにこの類のリスクにさらされてますが。。。(;´Д`)

2. クレジット市場と株式市場の関連

Merton Modelによれば、クレジットの買い持ちはAsset Value(B/Sの左側)のdeep out of the money putの売り持ちと同等である。また、株はAsset Valueのdeep out of the money callの買い持ちと同等である。すなわち、クレジットはAsset Valueのオプションであり、それ自体の変動によって株自体へ影響を与えることはない。重要なのは、Asset Valueであって、所謂企業業績のファンダメンタルズである。これは、モデルに関係なく資本構成を考えれば当たり前の結論であろう。ちなみに、同じクレジット商品ではあるものの、MBS(Mortgage Backed Securities)と一般債とではリスクの源泉が異なることに注意しよう。一般債は、上で説明したとおり、Asset Valueに関するout of the money putの売り持ちが利益の源泉であるわけだが、MBSは早期償還リスク(このリスクはほぼ金利の変動に連動する。すなわち金利が下がれば借り換えによって早期償還が増加し、金利が上がれば早期償還も減る)に関するout of the money strangleの売り持ち(+個々人のAsset Valueに関するdeep out of the money putの売り持ち<<0)が利益の源泉となる。

従って、クレジット市場が動揺したところで、経済ファンダメンタルズの主要な部分である企業業績が堅調な現在の状況下(株価には上昇圧力)では、ファンダメンタルズの悪化とそれに伴う信用収縮を予想する向きは少数派であろう。もちろん、サブプライム問題が経済ファンダメンタルズそのものへ影響する可能性もあるだろうが、FRBも含めてその可能性自体は低いと見られている(利下げ観測の後退)。また、幾つかのファンドの経営危機・破綻が明らかになってきているが、上記1.で説明したようにこの問題が過去の事例と同様にシステマチック・リスク(信用収縮)を引き起こす可能性は極めて低い。むしろ、担保の受け渡しを通して、マーケットは適切にそのリスクを調整していると見るのが正しい。すなわち、本日のお題に対する答えは「否」である。

**LTCMのポジションについては下記の論文を参照のこと:

Philippe Jorin (2000), "Risk Management Lessons from Long-Term Capital Management", European Financial Management 6 (September 2000), pp. 277-300

Eric Benhamou, "Lambda (options leverage)", FICC, Goldman Sachs

土曜日, 8月 04, 2007

NYでの生活立ち上げ記録 ~ クレジット・ヒストリー編

実はNYに来てから一番困ったのがこのクレジット・ヒストリー。いろいろと関連事項を調べたので、まとめてみたい。

まず、クレジット・ヒストリーとは個人の信用情報を指す。これはアメリカ全土で共通かつ固有の概念で、クレジットカードの発行、銀行口座開設、住宅ローンを含む個人向けローン商品全般の承認時はもちろんのこと、携帯電話やApartmentの契約時などおよそ個人向けに信用供与される場合にはすべてこの情報が参照される。

そして最大の難点はアメリカに住み始めたばかりの外国人には、この信用情報がないということ。そもそも情報がないのだから、信用供与は論外で、担保を入れて必要な信用枠を自分で勝ち取るしかない。。。

それはさておき、この情報は350-850の間の数字(Credit Score)として一般にやり取りされており、法人の信用情報が2,3の格付け会社に独占されているのと同様に、この数字(格付け)を付与する民間企業が3社(Equifax, Experian, Transunion)存在する。これらの会社はそれぞれ独立しており、それぞれの情報ソースは異なるようだ(この点については後述するが、自分のクレジットレポートを取り寄せてみたところ、それぞれの情報更新のタイミング異なることが判明した)。想像するに、主な守備範囲・情報ソースの所在が米国内で東部・中部・西部にわかれているのだろう。

これらの情報は、基本的に何らかの信用が個人に供与された時点から記録が開始され、税金を納めている人にはすべからく割り振られているSocial Security Numberによって認識される。したがって、市民の義務はまず税金を納めることであるとされる米国ではほぼ全ての市民の信用情報がこの3社によって収集され蓄積されていると考えてよい。これは、日本の消費者金融業界が共有しているとされる信用情報システムとは比べ物にならない規模であるし、そのカバーする範囲が個人向けローンだけではなくクレジットカードの信用枠とその使用比率などより広範に亘っていることを考え合わせるとその利用価値は計り知れない(EquifaxはWall Streetの入り口、NY証券取引所のはす向かいにオフィスを構えている)。

実際、住宅ローンの証券化の際に必要とされる、ある特定の属性を持つローンプールの切り出しなどもこのCredit Scoreを使えばかなり簡単に実行できるし、設定されているローン金利との間にも高い負の相関がある。日本市場の場合は、こういった情報のフォーマットも統一されていないし、異なる業界内で個人の信用情報を共有化することもまだ実現できていないというのに。私は以前ローンプールの属性分析をしていたのでよくわかるのだが、こういった情報があるのとないのとでは分析にかかる時間もさることながらそのリスク特性把握の正確性の面で非常に大きな差ができることになる。住宅金融公庫MBSの場合はまだましであろうが、それでもこういった分析の限界から債券価格がミスプライシングされている可能性は未だに十分残っているというのが市場のコンセンサスだ。いわんやバルクで割引販売している都市銀行の住宅ローンの属性分析など、まともにできてはいないだろう。また、金融商品のクロスセルやマーケティングの際にもこういった情報が利用されているのは想像に難くない。あくまで一般の個人の立場でも、例えば以下のような情報が簡単に手に入るのだから:私が住んでいる地域(郵便番号10022)の住民に関する個人情報の統計

もう一つ注目すべき点は、自ら申請さえすれば、Credit Scoreはその概要を示したCredit Reportと共に、法律によって年に一回無料で個人に対して開示しなければならないと規定されていことだ。また、どういった場合にCredit Scoreが変動するかというCriteriaが各社からきちんと開示されている。逆にいえば、どうしたらCredit Scoreを上げられるかが示されているわけで、いったんブラックリスト入りしても敗者復活が可能になっている(このためのコンサルティング会社も存在している)。このあたりがいかにもアメリカらしい。てんで駄目な奴にも自分の力で這い上がってくるのなら、チャンスを与えようということなんだろうな。むぅヽ(´ー`)ノ。

ところで、マーケティング(?)絡みで面白いサービスを発見したので、メモメモ。Branchさんのエントリー(7/25付)を見ていたら、webへのアクセス元の位置解析サービスを提供しているサイトを発見。統合参謀本部も採用しているからさぞかし信用できるサービスなのでしょうド━(゜Д゜)━ン!!やっぱり、日本も捨てたもんやないね。