月曜日, 12月 31, 2007

格付けのボラティリティとは何だろうか

今年はこの話題に関して一つの洞察を紹介することを試みて〆としましょう。今年は証券化商品に関する格付けの変動性(ボラティリティ)が随分話題になったものの、仮にこうした格付け基準の甘さを指摘したところで格付け会社にしてみればそんなの想定外でしたで終わってしまう可能性が大なわけですなヽ(´ー`)ノ。本来Aaaってのは、中身をこれっぽちも見ずに買っても元本毀損の可能性については考える必要がない、という意味を示す記号であったのに(#`Д´)。というわけで、格付けの変動性(ボラティリティ)として証券化商品のリスクプレミアムを把握できないか考えてみましょう。

さて、、

ではいったい格付けのボラティリティ(変動性)とは何だろうか。そもそも格付けの変動性は定量的に捕らえにくい。格付けはそもそもordinal numeralであって、cardinal numeralではない。すなわち、仮に形式的にそれぞれの格付けに対してある数字、例えば1から20、を1:1対応させてその変動率を推計してみたところで意味がある結果とはならないのは周知の事実。同じく、格付けにcardinal numeralであるデフォルト確率(スプレッド)を対応させてその変動率を考えても意味のある結果は得られない。言い方を変えれば、当該債券(証券化商品)自体のスプレッド・ボラティリティをいくら精緻に把握しようとも、格付けの変動(及びその1つの帰結としての債券価格の大幅な変動)を説明し得る意味のある結果は得られない。従って、このアプローチは少なくとも中長期の保有期間を想定した投資戦略及びリスク・マネジメントには使えない。

一方、昨今注目されている(特に証券化商品の)格付けの大幅かつ大量の見直しから直感的に理解される格付けの"急激な変動"を定量的に把握し、横ぐしを入れて比較するにはどうしたら良いのか?この話題については規制当局も強い関心をよせているので、この"変動率"は分かりやすくかつ意味のある量であるべきであって、さらに当局の理解が得られなければならない。今のところ一致する見方は、当たり前といえば当たり前であるわけだけれど、次の通り:

Rating volatility can be interpreted as probability of a rating transition over a specific period (say a 1 year).

各格付け会社は格付け遷移行列を毎年推計しているので、このデータがまず一つの指標となる。一方、懸案の証券化商品の格付けに関しては、最終的に損失率のシミュレーションを通して元本毀損の蓋然性を判定した上で格付けを付与しているので、このシミュレーション結果を見れば(or 将来に渡って延長すれば)、例えば同じAaaの商品についても格付けの"変動性"リスクを峻別できることになる。例えば、CPDOなどは確かにAaaだけれど、その格付けの変動性は実は高いというのが一般的な捉え方だろう。一般にレバレッジ比率の高い証券化商品の格付けはそのレバレッジ故に変動しやすく、仮にそのデフォルト確率がcorporate ratingの同一格付けのそれと等しくとも、デフォルトするまでの格付けパスはcorporate ratingのそれとは著しく異なるのである。これは言わずもがな価格変動性に大きな違いをもたらすわけで、投資家としては相当のリスクプレミアムを要求すべきである: 逆にいえば、例え格付けがAaaであろうと相応のリスクを覚悟すべきである。すなわち、証券化商品の格付けは従来通りあくまで元本毀損の蓋然性(デフォルト確率)を表すordinal numeralであって、それとは別に格付けのボラティリティという特有のリスク(実はこれがかなりの部分を占める)がレバレッジ比率の高い証券化商品には内在されているということ。リスク・マネジメントの観点からいえば、伝統的なスプレッド・ボラティリティの把握とストレステストだけでは十分ではなく、上で定義した格付けのボラティリティをリスク・ファクターとして取り入れる必要があるのだろう。

それでは皆さん、Have a happy holiday and see you next year!!

日曜日, 12月 23, 2007

ベルリンフィル 07 Fall

待ってました!待望のベルリンフィル@カーネギーホール。以前にサントリーホールに聞きに行った時には、ホールのキャパシティを超えてしまっていたようで音が割れてしまっていて非常に残念だったんだよね。でも、今回はさすがにカーネギーホールだけあって、本当に音が綺麗に響く。ただ唯一の難点はいつもの通りサイモン先生が初めに打楽器系の楽曲を持ってくるので、どう反応してよいのやら(;´Д`) とはいうものの、最後はマーラーで格好良く〆てくれたので大満足。

Berliner Philharmoniker
Sir Siom Rattle, Music Director and Conductor

Magnus Lindberg,
Seht die Sonne (2007; US Premiere)

Gustav Mahler
Symphony No.9 (I-IV)

土曜日, 12月 22, 2007

クリスマス♪

(1) こちらに来て改めて気がついたのだけれど、ニューヨーカーは皆どうでも良い見栄をはる。Hey, how are you?というと、みな間髪入れずに Good! 或いはGood! Good!! と返してくる。日本にいた時は、せいぜい"ぼちぼち"といった具合で特に絶好調をアピールするわけでもく、至って自然体だったものだけれど。

(2) こちらではクリスマスを前にアパートのdoormanやsuperの人達に日頃の感謝の気持ちを込めて、カードと金一封を送る習慣がある。お金は気持ちを表すのに一番手っ取り早くて効果的だから、というわけ。会社でも秘書さんにみんなで送る。やはり世の中、金なのだろうか。日本だったら色紙と花束になるところが、やはり現金。

(3) 最近日本の記事を読んでいると、やたらと「金融の高度化」というお題目が鼻につく。そして、専門人材の育成とくる。日銀も金融庁も皆でこうした路線を推進しているようだけれど、ちょっと疑問。NASAが月に人を始めて送った時には、特にロケット技術の高度化を目指していたわけでもなく、少なくとも技術者レベルでは月に行けたらスゲェ(゜д゜)!!ってな具合に頑張ってたんじゃないかな。まず夢が先にこなくっちゃね

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この国には夢も楽しい事もいっぱいあって、みんな毎日へこたれずに頑張ってるけれど、彼等にとってそれらの価値はもしかしたら全てお金と同等で、だからこそ夢(金)のある金融には人材が絶えず供給されているのかしらん。だとしたら、ちょっと違った夢を追いかけている自分は、彼等に負けないくらいに、もっと自分の夢を膨らませないとね。

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とはいうものの、やはり気になるボーナスの時期が到来。This is the time when we get paid! 結果、今年も契約更新をハッピーに無事終えて、来年もここで楽しく研究活動に従事できることが決定!いよいよ来年はこれまでに幾つか思いついたアイディアを巨大投資銀行へimplementする時期。Working paperも書いて更なる飛躍を期せるといいなー。ホップ・ステップ・ジャンプの2段目へ突入!

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火曜日, 12月 11, 2007

25bpの利下げ

うーーん。25bpですか。マーケットはとりあえず下げで反応してますが、コメントを後できっちり読まねば。

追記(12/22/2007): FEDは金利引き下げの翌日に主要中銀(BOE,ECB,スイス及びカナダ中銀)と協調し、流動性供給を行う旨を発表した。FED自身は年末越えの資金として$40bnを供給する予定。金利はOIS型なので、考えうる最低金利ということになる。ステートメントにもあるように、インフレ懸念を完全に払拭できない中で金融システムの機能を維持していく為に、FFレートと流動性供給枠を別々に活用していくということで正論ではある。政府系ファンドがエクイティを入れてきていることもあり、これで足りるといいのだけれど。

Readings on core inflation have improved modestly this year, but elevated energy and commodity prices, among other factors, may put upward pressure on inflation. In this context, the Committee judges that some inflation risks remain, and it will continue to monitor inflation developments carefully.

日曜日, 12月 09, 2007

真夏の夜の夢。。。とその後始末

ようやく落ち着いてきたので、10月からの動きを幾つかまとめておきましょう。端的に云えば、短期金融市場の混乱は収束しことから既に第3フェーズは終了し、後始末に焦点の当たる恐怖の第4フェーズへ突入です (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

その前に幾つか第4フェーズのポイントを:
  1. 一連のdefault experienceを2002年のITバブル崩壊期と比較してみると明らかなように、今回は金融セクター発の危機である。よって、ポイントは金融システム全体(Wall Street)でどの程度の損失が発生し、システムはその損失に耐えられるのか?、という点。
  2. 直接金融・間接金融を問わず、金融セクター発の危機であれば信用創造のメカニズムそのものが目詰まりを起こす可能性があり、実体経済へはFFレートの引き 上げと同等の影響を及ぼしかねない。よって、ポイントはこの効果を相殺するためにFEDはどの程度の利下げを実施する必要があるのか?、という点。
  3. そもそも、サブプライム関連の証券価値についてはどの程度まで損失を見込めばよいのか、誰も納得感のある数字を示すことができていない。よって、ポイントは現状唯一の情報源である市場の価格付けがどこまで信頼に足るものなのだろうか?、という点。
こうした米国経済に関する予測が極めて困難な問題に直面し、市場はかなりボラタイルな展開が予想されていたわけですが、現実はより厳しいものになってしまったわけで(;´Д`) 今のところ1.、2.、3.についてはコンセンサスが醸成されてきており、損失率を額面の30%(3.)として1.で必要となる損失額を算出し、2.の幅が議論されている状態。個人的には少なくとも50bpは欲しいところ。というのも、米国経済が今後4四半期でression入りする確率をインフレ指標、債券市場、FFレート(FEDの判断)を使ってモデル化すると、次の通りとなるから:

- 11月末時点: 単純に計算すると確率は7.5%となる。但し、各種統計に誤差項を加味すると、11.31%まで上昇の可能性がある。但し、ポイント2.の効果を1%の利上げと同等とすると、この確率は20%台前半まで上昇する。ちなみに、過去の統計をみると、20%台前半まで上昇するのは1つの景気拡大局面あたり多くて2-3回しか発生しておらず(1964年以降のデータによる)、危険水域と判断されよう。過去の例では、60%以上でアウト。

- 7月時点: ちなみに、この時期には単純に計算しても確率が27%となっており、明らかに危険水域入りしていた。

というわけで、今週のFOMCは下げ幅だけでなく、コメントについても要注目です。さて、では最後に時系列順に後始末の経過を追っていきましょう:

- 10/17/07(WSJ) ようやくCP市場は持ち直し。Super-fund設立の動きが報道されたこともあり、CP市場は発行残高が季節調整後で$1.3bn増加し、$1.888tnとなった。これで2週連続の増加(その前週は$4.9bn+)。一方ABCP市場は$11bn減少したものの、これまでの各週平均$70bnの減少に比べると市場環境の好転が伺える。大相場はこれにて実質的に終焉した。あとは後始末ですが、、

- ちなみに、主要なSIVの資産残高は右表の通り。Citi様のaffiliateはやっぱり多い。さすがにこんだけ多いと幾ら真面目にsuper-fund立ち上げても飛ばしだのきな臭いだの罵られても仕方ないかも。僕としては同意できないものの、マエストロもさすがに耐えられなかったみたい(source: New York Times):Mr. Greenspan’s take, expressed in an interview with the magazine Emerging Markets, seems broadly similar. “If you believe some form of artificial non-market force is propping up the market,” he said, “you don’t believe the market price has exhausted itself.” 

- 10/19/07(Bloomberg)金融機関の損失発表が相次ぐ中で遂にSIVのデフォルト報道がドイツで。また欧州かよ(#`Д´)。Cheyne Finance PlcとIKB Deutsche Industriebank AG傘下のRhinebridge Plcです。Rhinebridgeについては、9/10付けでMTNがAAAからBBB-に格下げされていてかつ9/7, 9/10付けでBarclays Capitalとの間の流動性供給枠を使ってしまっているわけで。。デフォルトには今更感が漂うものの市場は大荒れに(;´Д`) もっともS&Pによると、資産は額面の63%まで劣化してしまっているということでこれはさすがに酷い。ちなみに、Moody'sの調査によると、SIV全体のnet assetをみると8/1時点で92-3%(一ヶ月で9-10pt下落)、9/1時点で85%となっている。

- 10/24/07 (WSJ) メリルが$8.4bnの評価損を計上。もうこれは野村と同列ですね。きちんとリスク管理の方法論を確立してから投資銀行と同様のビジネスモデルに参入しましょう。リテール証券としてのビジネスモデルは既にきちんと確立しているわけだから無理しなくてもいいのでは。。ヽ(´ー`)ノ とりあえず、ポイント1.に関する第一報が正式に報道されたのがこのタイミング。

- 10/25/07 (WSJ) ちなみに、これまでの報道(本格的な後始末前)をWSJが綺麗にまとめてくれました。ご苦労様です。あぁもう今年の金融業界は格好の餌食ですな(;´Д`) そしてこの程度で後始末が終わるはずもなく、、

- 10/31/07 FEDが25bpの利下げを決定。報道直後こそ一旦市場は失望売りで下げたものの、1時間後には回復基調へ復帰。公式発表にある通り、とりあえずこれで利下げは当面打ち止めなのか、、、と皆が思った瞬間。

- 11/3/07(WSJ) Citiも$12bnの評価損を第4四半期に計上することに。遂にPrince CEOも退任に追い込まれてしまい、ルービン大先生の登場です。しかし、ちょうどこの発表があった3日前に(11/29)に日本ではCitiの上場が東証に承認され11/5に上場を果たしたわけで、ホント金融庁(或いは東京市場?!)ナメられてますね。

- 11/7/07(WSJ) Morgan Stanleyも$3-6bnの評価損を計上する可能性をアナリストが指摘。株は猛烈に下げてます。うぅ。株はこれらの報道を嫌気して全世界で下がりまくり。市場が予想する金融システム全体としての損失規模が一気に上昇したのがこのタイミングではなかったかと。

- 11/15/07(WSJ) ファニーメイに関する追加損失懸念から、株価が一日で10%も下落。もう泣きっ面に蜂状態です(;´Д`)

- 11/27/07(WSJ) アブダビ投資庁がCitiへ$7.5bnの資本注入を発表。待ってました、ようやく救いの手がキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!! やっぱりオイルマネー強し。この辺りが数年前に起こった日本の金融危機と根本的に違うところですね。あの時は日本政府以外に誰もメガバンクに資本注入しようなぞとは思わなかったもんです。

- 11/30/07(金融庁) 遅きに失するとはこうしたことを指すわけで。金融庁による報告預金取扱金融機関のサブプライム関連エクスポージャーの保有状況について。完全に世界の流れに取り残されてますが(;´Д`)

- Nov-Dec 2007 就職活動中の知り合いによると、投資銀行の採用はどこもストップ。今年前半まで空前の採用ブームだったのが嘘みたい。唯一採用しているのはリストラクチャリング中の野村だけだとか。。ただ、別の知り合いによるとGSは特にストップしているわけでもないそう。やはりどの分野でもアグレッシブなのか?!

- 12/5/07 約2年半ぶりに英国中銀も利下げを決断。

- 12/6/07 午後にブッシュ大統領がサブプライム・ローン関連の対策を正式発表。株は折からの利下げ期待に上がっていたところを、さらに上げ足を早めS&P500は前日比+1.5%で取引を終了。11月末を底値として1週間程度で7%近く上昇したことに。それにしてもsuper fund構想は腰折れに終わりそうだし、この対策も効果があるのかどうかは疑問。10月からの一連の報告で金融システム全体(Wall street)としての損失規模が見えてきたので、ポイント2.で挙げた効果を見極めた上で、一気に利下げで後始末を終わらせる腹積もりかしらん。11日の利下げ幅が焦点ですな。

- 12/8/07 ちなみに、サブプライム問題・米国経済のresession懸念にもまったく動じずに日本では更なる政治による混乱が加速中(;´Д`) 改正建築基準法によるマンション建築の遅延、貸出し上限金利の厳格化、信用保証協会による保証枠縮小、更にはガソリン税の暫定税率継続に民主党が反対の姿勢を明確にするなど、この手の話題には事欠かずといった様相を呈してきた。結果オーライなら良いのだけれど、当分視界不良が続きそう。。やっぱりアンダーウェイトにせざるを得ないのか。

- 12/10/07(WSJ) UBS が$10bnのwrite-downを報告。と同時に、GICから11bn Francs, 中東の投資家から2bn Francsの合計13bn Francs ($11.5bn)の資本注入を受けることを発表。注入方法は、Citiと同じCBの形で、クーポンはなんと9%。一気に膿を出した事を概ね好感し、株式市場は上昇。ただし、日本のマーケットは何故か下がり気味??日経の第一報が資本注入にまったく言及していないのもどうかと思うが。。

木曜日, 12月 06, 2007

数学的 ウツ

東大の小沢さんのページに面白いコメントがあったので、書き留めておこう。「数学的ウツ」とは、新しい研究に身が入らない、なんら進展が見られない同じ問題に長期間こだわる、という停滞のことだ。激しく同意 & たまにあります、これ。気をつけないと。

月曜日, 12月 03, 2007

It's a small world

やはりこの業界、かなり狭い。

昨日ちょっとした用事を済ませるためにマンハッタン北部の某所を訪ねたら、何と偶然はじめて就職した会社の同期とバッタリあってしまった。お互い変わってはいるものの、僕の顔を覚えてくれていたようで久方ぶりの再会となった。8年ぶりだよ。彼女は入社して直ぐに会社を辞めて、しばらく投資銀行で働いた後はニューヨークへ渡ったって聞いていたけれど、まさかここで会うことになるとはね。今はミッドタウンにあるヘッジファンドで働いてるらしく、相変わらず活躍してるようで何より。

そして今日のニューヨークは初雪で、普段はくすんだ色のビルも雪化粧。奥さんと二人で買い物に出かけてロックフェラーのクリスマス・ツリーを眺めてみたり。時間が過ぎていくのは早いけど、たまに噛み締めてみるとなんとも味があって良いものです (´ー`)y-~~