木曜日, 12月 14, 2006

クォンツと投資戦略

仕事の忙しさにかまけてupをサボっていたので、この辺でいくつか話題を。第一弾として、クォンツと投資戦略について考えてみよう。

以前、小笠原さんが言っていたことだが、「戦略とは長期的なスパンで見た投資スタンスであり、戦術的な投資テクニックとは別物である」。僕らの世界の言葉でいえば、drift termが所謂戦略部分であり、その方向性と大きさが鍵となる。戦術とはその周りで起こりうる誤差項に対応するものだろうか。

それぞれの性格を考えると、やはり戦略を立てるにはマーケットの大局観が必須となる。言い直せば、クォンツ戦略を立てる場合には、何らかのモデルについてのdrift termを推計しなければならないということに他ならない。この意味で、volatility factorのみを考察対象とするデリバティブのプライシング理論とは一線を画している。

水曜日, 11月 15, 2006

しまなみ街道横断紀行 4

四日目は大三島からいよいよ尾道へ。実はこの旅で、一番に綺麗だったのは大三島から因島に掛けてであった。なだらかな斜面沿いにミカン畑が広がり、海の景色も抜群。ミカンを食べた後、波止場で大の字になってしばらく昼寝をしたり。サイクリングをしている人達も比較的多くて、気持ちが和らでいく。

ところで当初は、瀬戸内の島だからさぞかし田舎暮らしなのだろうと失礼なことを考えていたものの、セメント・造船・漁業(蛸、ヒラメ)・農業(ミカン、他の果物)と産業がかなり充実しているので逆にこの地域の人達はもしかしたら裕福なのではないかと思えてきた。実際、持ち家は大きいし町並みも整然としていて陰湿なところは全く感じられない。しかも、これらの工場は名前を見る限り所謂大手メーカーの支社ではなく、あくまで地元の企業のようである。「地方格差」の検証が今回の旅の目標のひとつであった筈なのに、選択をミスってしまったか!と焦っていたところ、向島に入った辺りから状況が一変してきた。後でわかったことなのだが、向島から広島県なのだ。県の財政力の違いなのか、港も道路も正直その手前の因島とはかなり違う印象に。。パチンコ店まであるし。僕の問題意識は首都圏と地方という枠組みでの地方格差の検証であったわけだけれども、もしかしたら、昨年あたりから話題になっている地方格差は地方(愛媛)と地方(広島)との間にも存在している格差なのかもしれない。いわゆる産業のある地域とそうでない地域。この感覚は尾道に着いてからなんだか確信めいたものに変わった。もちろん、局所的な議論ではあるものの、尾道の商店街は典型的なシャッター街であったし、広島県で2番目に大きな福山まで足を伸ばしてみてもやはり状況が変わっていなかったのを考えるとあながち僕の感覚も間違ってはいなかったのではないかと思えてくる。

この日は朝と夜の景色のあまりの違いにショックを受けつつ、福山のビジネスホテルへ投宿。夕飯はマクドナルドで済ませつつ、沈鬱な気分になってしまったのだが、疲れが溜まっていて直ぐに記憶がなくなってしまった。

水曜日, 11月 08, 2006

しまなみ街道横断紀行 3

さて、今治からいよいよ本格的なしまなみ街道入りである。地図に示した通り、6つの大小の島々を317号線づたいに尾道まで自転車で駆け抜ける。。筈だったのだれけれど、実は自転車は高速道路を走れないため橋を渡ったらいちいち下道に降りてから海岸線をぐるっと回ってまた橋まで登らなくてはならない羽目に。この島々は全て中心部が山になっているので、どうしても海岸線づたいになってしまう。結局、直線距離で凡そ45kmの行程の筈が67.5km近くになってしまった(~ pi/2 = 1.5倍)。

瀬戸内といえば、明石の辺りの渦潮はもちろん有名だけれど、実は今治から大島、大三島にかけてもかなりの渦が巻いていて橋の上から眺めていると、船舶の往来にかなり影響を与えてしまっているように見えた。或いは渦そのものではなくて、渦の形から海底の地形を逆算して十分な水深のある経路を選択していたのかしらん。今治から大三島にかけて蛸の干物・刺身が有名というのも納得。

更には、「伯方の塩」で有名な伯方島も発見。まさか商業用の塩を作っているわけではないのだろうが、浜辺沿い塩田があったのが印象的であった。全般的に長閑な風景が広がっていて、ミカンの初出荷が行われていたり。一方で、どの島にも「裏側(山?)」的なところがあって、そちらではセメント工場と造船場がまるで秘密基地のように配置されていた。たぶん戦前は軍事関連の施設であったのだろう。それにしても、こういった工場は本当に夕焼けによく映える。蜩の声を聞きながら夕焼けをバックに工場を見ていると自分もいっぱしの造船マンになった気分がしてくるから不思議だ。

この日の夜は大三島の中間辺りにあった旅館へ投宿。家族経営のようで、皆優しい。バックパッカーも珍しくないらしく、「お兄さんひとりなん?自転車は玄関ね」とか云われてとりあえずは風呂と洗濯機(?!)を借りて昼間の疲れと汚れを落とす。今思えばお遍路さんのドラマでみた光景そのまんまですな。

水曜日, 11月 01, 2006

しまなみ街道横断紀行 2

さて忘れないうちに松山から今治までの道中日記。およそ40kmの行程を国道沿いに走っていくわけだが、それぞれの町(あるいは市?)の特色が出ていて面白い。例えば仙台あたり、或いは滋賀県あたりをドライブしていてもこれ程町自体を宣伝いていただろうか。まずは風早の町。なんのことはない単に海沿いに広がる集落では風が強いということだが、そこらじゅうにこのフレーズ。道路交通看板にまで、風早にかけてスピード出しすぎ注意の文字が。さらにきくの町周辺では鬼瓦がそれぞれの棟梁らしき家の壁に展示され始める。ここでも、瓦の町、きくのの文字。実際には太平洋セメントのプラント等があり、こちらのほうが産業としては栄えていそうなものだが。ただこの瓦、有名らしくしまなみ街道沿いの島々でも立派なお屋敷になればなるほど四方の石垣にワシやら鷹の瓦が飾ってある。また、今治のお店にまで新年の干支をあしらった鬼瓦を縁起物として売りにきている。お店の主人が見せてくれたので間違いない。そして、タオルと造船の町、今治。

今治には夜7時過ぎになってようやく到着したため、昼間の様子を窺い知ることはできないものの、町時代は栄えている印象を受けた。大丸、サティーに商店街のお客を奪われてしまっているのが難点。繁華街、ホテルは申し分ないだろう。特に今治国際観光ホテルは大浴場、店員の対応、部屋の内装などどれをとっても京都のホテルに引けをとらない。

さて、では1日に40kmを自転車で初めて走破した感想は: こんなものか。遠くにうっすらと見ていた瀬戸大橋の袂まで実際に自分の足を使って到達してみると以外に近いことにきずく。風向きの影響もあったのだろうが、この感覚をとり戻したかったのだ。果てしなく遠く感じても目に見える限り、とどく。

月曜日, 10月 30, 2006

はやくもクリスマス気分?!

オフィスの周りのおしゃれスポットではもう既にクリスマス飾りがお目見えです。 まだ10月だというのに。Halloweenがないのと、クリスマスの宗教的意味合いが薄い日本ならではの出来事ですな。さすがに、まだNYでもまだクリスマスツリーは出来上がっていないはず。

我々の会社でも、マネージメント層の入れ替えなどもうビジネスモードというより来年への布陣固めが始まってきました。さすがにもう11月なのでこれから一儲けしようなどと焦っている人たちはいないようですね。このままハッピーに年が明けてくれるのを祈りましょう。

ところで、この画像かなりきれいにとれてると思う。さっそくナンバーポータビリ制度を使ってドコモからau by KDDIへ変えたかいがあったというもの。初期手数料約5000円だけでこのスペックの携帯が手にはいるというのはやっぱりすごい。1台あたりの収益率も落ちてくるだろうし、物価への下方圧力にもなろうもの。エネルギー価格と相まって日銀のお手並み拝見といったところが今年最後の見所か。

水曜日, 10月 04, 2006

しまなみ街道横断紀行 1


1年半ぶりに取った長期休暇で四国に行ってきた。テーマは「一人旅、サバイバル、地方格差の検証」。その方法は、東京から飛行機で松山入りした後、自転車を現地調達し、地元の人々と街に触れながら尾道を目指すというもの。

まず驚いたのは、松山ひいては愛媛全体のゆとりある豊かさである。市内中央に高島屋・三越を抱えているにも関わらず中央商店街は2~3kmに渡って栄えており、終点近くからはスナック・バーを中心とする繁華街へと変化していく。そして商店街とは角度を変えて、駅前から大通りを経て松山城後、県庁、NTT西日本(旧制松山高校跡地)へとつながる一連のオフィス街。これらは弧を描いて最終地点で再び交わる。出発点には高島屋、伊予電鉄松山市駅、最終地点には全日空ホテル、東急イン、日本生命ビル、三越が配置されており、バランスがよい。

更には道後温泉が市街から市電で数十分、自転車で30分程度の場所に位置しており、首都圏に対する箱根温泉的な役割を果たしている。この温泉自体も万葉の頃から良く知られている湯のようで、聖徳太子なども来たらしい。建物自体も国の重要文化財に指定されているように、奥ゆかしい。どうやら宮崎駿監督の千と千尋の神隠しの温泉宿はこの建物をモデルにしているらしい。うーんこんなにうまくできあがった街は正直京都以来です。

p.s. ちなみに、添付写真はしまなみ街道の入り口から大橋と瀬戸内海を撮影したもの。次回以降で、松山後のエピソードをアップします。

火曜日, 10月 03, 2006

レポレートと有担コールレート

上記2つのレートの関係について考察してみよう。日経新聞のマーケット欄のコラムによればここ数ヶ月の傾向として無担コール市場とレポ市場との間でレートの乖離が起きているという。具体的には、無担コールレートがレポレートを5--7 bp下回る状況が続いている。コラムの解説にはゼロ金利解除後に需給の緩んでいる国債を多く抱える証券会社の調達レートとしてのレポレートが機能の回復してきたコールマネーでの資金の授受に比較して見劣りするためとしている。とはいえ、では有担コールはどうだろうか。通常T+3決済のレポに比べてT+1という条件の違いがあるにせよ、経済的には有担コールとレポは同等のはずだ。しかし、東京マーケットではさらに5--10 bpの差が存在している。これは何故なのだろうか?:

1.まず第一に本邦金融機関はT+1で10 bpの利ざやをとりにはこない。実際にはコールマーケットの利回りはT+1で25 bp程度であるわけだから本来は大きいはずの利ざやであるが、関西系のせこさで有名な銀行以外はこのような裁定取引には入ってきていない。

2.信じられないことであるが、本邦金融機関が有担コールマーケットに参入するには新たなシステム投資が必要との見方が一般的である。この為、有担コールマーケットは参入障壁の高いマーケットになってしまっている。

3.さらに短資会社としてみれば仮に資金の出し手である場合には資金が担保(債券)にて保全されるわけだから、金利を低くしても筋が通るわけである。

市中の金融機関はリテール向けATMの整備より自分たちの資金調達系システムを早急に拡充すべきであろう。

月曜日, 10月 02, 2006

円キャリートレードと円借款


ここ数ヵ月円はドルに対して弱含む展開。7月末からみると、ちょうど2ヶ月で3円円安方向へ触れたことになる。この期間に店頭では生損保勢による1千億単位の外債ヘッジと思われるドル売り・円買いが観測されていた。

一方で、日銀の議事録でもとりあげられたように、再び円キャリートレードが復活してきているのであれば、ドル買い・円売り圧力が高まるはず。左図によると、確に生損保勢の外債ヘッジを上回るドル買い圧力がここのところ続いているのがみてとれる。但し、円キャリートレードが本格化しているのであれば、生損保勢の外債ヘッジ玉では吸収しきれないはず。 また、実質実行為替レート(1973年3月を100とする)が、9月に101.3となり1985年9月のプラザ合意の時点(94.8)以来の水準まで低下しているにも関わらずドル円相場はそれほど円安基調を強めているわけではない。これは謎である。

筆者はここに、店頭でここのところよく目につく中国勢による円借款のヘッジ目的のドル売り・円買い圧力も相当効いてきているものと考えるている。中国政府は円借款を中核銀行へ貸付け、この銀行勢は実際にはドルに転換してから事業を行っているからだ。現在円借款の規模は2000年からの実績で、3兆1千億円。仮にこのうち8割りがヘッジされると考えると、通常そのデルタは0.3程度であるからヘッジ総額は31 X 0.8 X 0.3 = 7.4 千億円にのぼる。これは生損保勢の外債ヘッジの額とは比べ物にならない額であり、その影響は無視できない。実際こうしたヘッジ取引は中国において、Deutche, CSFBを中心にマーケティングされており、円高圧力のひとつのファクターになっていると考えられる。

以上が、ここのところ安定しつつ円安傾向を強める為替相場のカラクリであろう。

ただこれは日本国にとってマクロベースでプラスなのだろうか?円高圧力なわけだから、国富の観点かいえばYESだろう。ただ、こうしたお金が中国の産業育成の為に使われ、一方では本邦企業が円高圧力によって利益を削られるのかと思うと、なんだか嘆かわしい。

追記: 中国へのODAの現状

日曜日, 9月 17, 2006

今年の夏


台風13号が九州に上陸したようだ。今年の夏はろくに夏らしい日もなく、終わってしまった。日照時間などを考えると、農作物の出来も今一つか。日本マーケットではやはり特に何も暑いイベントはなく取引も低調そのもの。国債市場・デリバティブ市場・株式市場すべてにおいて眠ってしまっているようだ。八月のCPIショックで大きくやられたものの、その後に収益を拡大させる動きも特になく不気味なほど静か。こんなことはCSFB以来経験していない。嵐の前の静けさといったところか。

WTINY1nb: 74 $/bbl @8/9 => 63 $/bbl @ 8/15

このブログについて

Quantsとして金融・経済にどうか関わっていったら良いか悩みながらも投資銀行の現場から生の声を発信していけたら、という思いでブログを始めてみる。ただし、基本的には備忘録という形式で進めることになりそう。金融関係の方のみならず、興味のある方はどうぞ。今のところ、興味があるのは、クレジット・リスクの取り扱い、クレジット・債券の投資理論等々です。

まずは僕の仕事場から。夏休みを利用して独自サーバーを構築し、研究環境の整備を行っていました。