日曜日, 9月 30, 2007

9月FOMCの結果によって第3フェーズへの突入を確認

9月のFOMCの直前には久々に手に汗握りました。私の職場でも一体FEDはどう対応するのか皆で賭けでもするかという話もでるくらい予想が割れる始末。結局0bp--50bpまでほぼ均等に意見が分かれたものの、FEDが利下げした場合には間違いなくEUR高・インフレ懸念が台頭するという点で意見が一致したのには笑うてしまった。マーケットも2日前までは利下げ織り込みが50bpで推移していたのに、前日になって25bp織り込み相場へ変化するという具合だったしね。

ところで、今回の利下げ措置で二つのポイントが確認されたのは有意義だったと思う。

一つ目のポイントは、WSJ紙上でも議論されてきたバーナンキ議長とグリーンスパン前議長とのマーケットへの対処方法の違い・類似性について確認がとれたこと。いわゆるグリーンスパン・プットの復活についてだ。かねてグリーンスパン前議長の時代には何かしらの変調が起こって資本市場が機能不全に陥った場合には、必ずFEDが緊急避難的に流動性を供給する或いはFF金利を引き下げることによってマーケットの一方的な下落を食い止めてきた。この意味で、これまでグリーンスパン・プットの存在が認識されていたわけだけれど、対照的に、バーナンキ議長は先月のNY株式市場のメルトダウンを前にしてdiscount rateを引き下げるのみでFF金利を据え置いた。結果、前述のWSJの記事にあるように、前議長との間の違いが際立ってしまった。しかし、9月のFRBで一気に50bp FF金利を引き下げて金融システムの混乱を沈静化する姿勢を鮮明にしたため、逆に金融システム自体を守るという点では二人の考え方が一致していることが確認されたといえるだろう(9月に入ってからの重大な金融システム危機については二つ目のポイントを参照)。一方で、景気および金融システムへ悪影響が出ないと考える限り、FEDは動かない事も同様に確認されたといえる。個人的にはバーナンキ議長への信認が更に高まったのだけれど、他の市場参加者の人はどうだったんだろう?その後のマーケットの動きをみると、同意見の人が多いような印象を受ける。

ちなみに、グリーンスパン・プットの発動タイミングについては、メモを参照のこと。

二つ目のポイントとしては、短期金融市場が思いもよらぬ原因で機能不全(流動性クランチ・信用収縮)に陥り、証券化時代の市場の不備が露呈した(確認がとれた)こと。

まずご存知の通り、短期資金調達手段は概ね次のように分類される:
  • Repo Market, Stock Loan Market(主に証券会社のファンディングに使われる)
  • 無担・有担コールマーケット or O/N Libor Market(インターバンク市場): 米国市場ではFF金利に支配されるが、日本では日銀の裏庭にいる短資会社に支配されている
  • 銀行借入(Libor Market, インターバンク市場)
  • CP市場(短期クレジット市場(無担))
  • ABCP市場(短期クレジット市場(有担))
今回は担保価値の再評価(リスク調整)が行われるなかで、ABCPプログラムのリファンド時の混乱から、アセットそのものの質が悪化している為に、或いは悪化していなくとも不利な条件でのリファンドになってしまう可能性があるため、B/Sから外した筈のアセットが銀行・モーゲージ関連企業自体のB/Sへ跳ね返ってくることに(証券化の際にArrangerに課されている買戻し条項を要チェック。追記(12/9/07):精査の結果、Citiの場合は会計上これを逃れられそうとのこと。詳しくはWSJの報道(11/26/07)を参考に)。その結果、銀行・モーゲージ関連企業本体のクレジットでのファンディング(インターバンク or CP)が必要となってしまい、インターバンク市場・CP市場が同時にクラッシュしてしまった。実際、8月のFRB後に大手4行がアナウンスメント効果を狙って$500mmずつ借りて借入れ総額が$2bnとなっていたdiscount windowは、8月末には順調に$1bnへ減少したものの、9月の第2週には$7bnまで急上昇していた。もう少し詳しくみたいのであれば、FEDのABCP残高統計および銀行のB/S統計をみればわかり易い。1ヶ月でほぼ2.5倍になっている。

こうした現象はcounterparty riskが顕在化したLTCM破綻時やS&L危機或いは日本の不良債権問題とも本質的に異なり、証券化時代に金融システムの抱える新たなリスクの火種といえる。今後業界がこの問題にどのように対処していくかウォッチングしていきたい。私の印象としては、本来信用創造は景気と正の相関を持っていて当然ではあるものの(景気悪化=>資金需要減退=>貸出減少, vice versa)、間接金融の作り出す相関に比べ、直接金融の方が相関が高い或いは振れが大きいといえそうで、このあたりの制御を問題意識とした更なる研究が必要なんだろうな(それともacademicの世界ではもうあるのかしら?)。

ちなみに、ECBが今回利下げしなかった理由も、欧州では個別行の損失からくる旧来型の信用収縮(英ノーザンロックが好例)に止まり、金融システム危機にまで発展しなかったことが一因であると考えると納得がいく。

市場へのインプリケーションとしては、グリーンスパン・プットの復活が明確な形で確認されたことはプラス。一方新たな金融システム上のリスクが確認されたことはマイナスで、調整局面は長引きそう。対策が講じられるまでには更に時間が掛かる見通し。もちろん市場はブル・スティープで反応。同時にグリーンスパンの謎も解けそうですな。

追記(10/10/07):ようやく短期市場の混乱も治まってきそう。それにしても8/10時点でuk base rateとO/N LIBORのスプレッドが72bpにも達しているにも関わらず、BBA O/N repo rateとのスプレッドは35bpに留まっているのは面白い。それと英国の短期金融市場の方が早くから混乱し始めていた事が見て取れる。ちなみに、店頭ではこの混乱に先んじてLibor fundingをBase rate fundingへ切り替えるswapが観測されていた。

土曜日, 9月 22, 2007

Hairspray

今回またしても割引になっていたミュージカル Hairsprayを見に行った。安い割には良い席で満足していたのだけれど、ミュージカルそのものがもっといい━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!要は田舎の女の子(Baltimore)が都会に出てきて巻き起る恋愛なんかをコミカルに演出したミュージカルなのだけれど、歌・音楽そのものが第一級品。今まで見てきたミュージカルはどれもテーマが重すぎて、それに合わせて音楽もドラマティックに過ぎる感があったのだけれど今回は完全にポップで踊りまくれるような音楽でこちらも聞いてて楽しくなってくる。途中に、さすがというべきか、人種問題なんかも出てくるのだけれど、それも当時(50年代)のブラックミュージックを取り入れるためにわざと挿入してきたんでないかい??(;´Д`)と思われるほどに明るいんだよね。大満足でした。

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火曜日, 9月 18, 2007

FED 50bpの利下げを決断

本日FEDが50bpの利下げを実施。株式市場は一様に好感し、North America +2.9%, Brazil +4.28%, Argentina&Mexico +2.7%の大幅高を記録。リスク許容度の上昇と共に、予想通り円相場も下落中: 116.12 (+1.20)。ふーむ。遂にバーナンキ・プットが出現しましたな(この点についてはまた機会を見て詳述する予定)。ただ、Crude Oilも+1.7%上昇で最高値更新($82.38/bbl)ですよ。バーナンキ議長も今後はよりいっそう得意のインフレ退治にターゲットを絞った金融政策に邁進できるというもの。裏返せばよっぽどインフレ対策に自身があるんだろうねヽ(´ー`)ノ

ところで、水野さんはFRBのこの判断を受けてどうするんだろう??やっぱり利上げに一票ですかね。

日曜日, 9月 16, 2007

続報 サブプライム関連 第2フェーズへ突入

(このコメントを入稿したのは8月下旬だったわけですが、その後第2フェーズは既に終了し、今週のFOMCの判断如何によっては第3フェーズ突入です)

さて普段ならば夏休みで閑散とした相場であるものの、今年の8月はかなり熱い月でした。商いが薄い中で、幾つか悪いニュースが重なって、8月第1週は本当にさんざん。一部の欧州系銀行がサブプライム関連投資で大損をこいたことから、円キャリートレードの解消が誘発されると同時に、世界規模の株式ポジションの調整から円売りのヘッジ玉が戻り、一気にドル円は112円台をつける展開へ。

この展開は本当に面白いものを見させてもらったという意味も込めて、整理しておきたい。

8月13日の週:

月曜日: ゴールドマンが自身のファンド(Global Alphaではなく、Global Equity Opportunities Fund)へ$3bnの資金注入を決定。米国株式市場はこの朝方の報道を受け一時は持ち直すも、結局下げて引ける(後日談として、この$3bnはその後の相場の回復を受けて、一旦回復したものの、9月第一週は1.8%下落している模様)。

その後、株式市場は引き続き全世界で全面安の展開に。水曜日・木曜日にかけて、ドル円相場が112円代前半をつけるド━(゜Д゜)━ン!! 株についてはその後弱いながらも買いが入るが、円だけの急落に何故だか疑問。これは、ストレステストを実施していれば、事前に予測がついたかもしれない。特に、前回3月の世界同時株安から主要プレイヤーがどのようなポジションを積んでいたかを詳細に調べておくべきであった。結局のところ、結論としては
  • 欧米主要ファンドの日本株エクスポージャーはほぼ円ヘッジ済み(円売りポジション)。
  • キャリートレードの主要なファンディング元である欧州系銀行の円エクスポージャーもほぼヘッジ済み(円売りポジション)。
  • 一部買収案件の資金調達に関わって発生した円エクスポージャーもほぼヘッジ済み(円売りポジション)。
となっていたようだ。従って、今回起った対ドルでの円の急騰は、リスク調整に伴う日本株エクスポージャーの削減に伴うヘッジ玉の戻りと、欧州系銀行のクレジット悪化に伴うキャリートレードのファンディング先の変更或は解消に伴うヘッジ玉の戻りが主因になっているものと理解される。

ただし、ドル円の急落と機を一つにして、日本でのコールマーケットで資金不足が発生していた事に注目しておきたい。この前の週に行われたECBの資金供給と歩調を合わせて行われた日銀の10兆円規模の資金供給によって、火曜日にはゼロ金利まで下がったコールレートが外銀からの調達意欲を背景に急騰。一旦資金を引き上げた日銀が、週半ばには一転して資金供給へと追い込まれるという珍事(?!)が発生していた。積み期間との関係も考慮に入れる必要があるものの、キャリートレードとの関連で言えば、円相場が円高方向へ戻ると同時にキャリートレードを積みました向きがあるといえそうだ。

金曜日: メルトタウン寸前のNY市場に対し、FEDがdiscount rateの0.25%引き下げを発表し、すんでのところでmeltdownを回避。これは、前回FRBの声明文に明記されてあった窓口割引のレートのこと。さすがに利用を促すだけでは駄目だと思って、レートを下げてきた。この戦略はそもそも規定路線ではあったのだろうけれど、御見事です\(^o^)/。余談ながら、午後に予定されていた外部のエコノミストとのconference callもこのために急遽中止され来週へ延期 (;´Д`)

その後、8月20日の週は比較的落ち着いた動きに。主要銀行が坦々とdiscount windowを使った旨のアナウンスを流すとともに、バンカメはここぞとばかりに米国住宅ローン市場最大手のcountry wideの買収を発表。さすがに狙ってましたねという感じ。やっぱりここアメリカはその昔テラノザウルスが闊歩していた場所だけあって、弱肉強食だぁー (;´Д`)

マーケットへのインプリケーションとしては、引き続きキャリートレードは続きそうであるという事と、今後株式市場(特に日本)が軟化することがあれば、同時に円高が発生する可能性が高いということ。逆にいえば、日本株が堅調である限り、ヘッジ玉に伴ってドル高(外貨資産高)へ触れやすくやっており、日本の投資家にとってはユーフォリアの復活である。もちろん来週のFRBの判断には注意が必要だが、前回のエントリーでも触れたとおり、今回のサブプライム問題は米国の消費者への影響に関してはニュートラルもしくは小幅マイナスに止まる見通し。後は、住宅ローン関連のビジネスを持つ企業動向次第であろう。

火曜日, 9月 11, 2007

9・11

出社時に向かいのLehmanの電光掲示板に巨大な星条旗が翻っているのを発見。犠牲者の方々にしばし黙祷を捧げる。Cloudy, and 74F。

土曜日, 9月 08, 2007

Cezzane at MoMA

ニューヨークへ来てから美術館へ行く頻度が上がっているのだけれど、特に街中にあってかつ美味しい喫茶店もあるということで最近はMoMAがお気に入りです。

Metに比べると、絵の展示数も格段に少ないし、あまりに先鋭的過ぎてて意味のわからない作品も多い割には、印象派の代表作も置いてある。というわけで、そろそろ自分の記録用にブログへ載せてゆくことに。まずPaul Cezanne, 『The Bather』。以前は惹かれるわけでもなく、素通りしていたのだけれど最近何故かこの素朴な構図と、どうしても絵の中の少年と目を合わせることができないむず痒さに見入ってしまう。


次はPaul Cezanne, 『Turing Road at Montgeroult』, 1898。どこか昔住んでいたカリフォルニアの町並みを思い出させられる色合い。南欧は昔からこうした色合いだったのかな。京都の夏は、赤と黒と緑と青の色合いだからやはりだいぶ違うもんだね。

その他には ピカソの『アヴィニョンの娘たち』の100周年記念を祝う展示をやってたりと、何時行っても何か目新しいイベントがあって本当に飽きない。解説を見て初めて、『アヴィニョンの娘たち』がキュービズムの発端であって、しかもかなり確信犯的な製作工程を経ていることを知ったり。




ちなみに、左の写真は最近登場した壁画(とはいってもMoMAだけあって、一見すると落書きのような気が。。)で、社会情勢を強烈に皮肉ってるもの。あまりに的を得ていて個人的には笑えない。。。まぁ一昔前ならありがちな、背の低いメガネをかけてニヤけてる東洋人がいないだけマシかと。
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ボラティリティのボラティリティ

やはりDermanの云うように、最近のクオンツ系ファンドのパフォーマンスを見ていると、こうした戦略は基本的にボラティリティのボラティリティに関してショートになっているようだ。興味深い。