土曜日, 3月 15, 2008

WallStreetの労働市場

雑談程度の話ですが、いよいよ始まったレイオフの波を乗りきるためにもちょっと労働市場の分析をしておきましょう。

まずは簡単なおさらいから。まず、一般に政治の中心は通称Main Street (Washington D.C.)、金融の中心は通称Wall Street (NYC)と言われていて、それぞれ時の権力を握った者が全体を支配し得るという意味で共通項も多いわけです。例えば、政権交替が起きた場合にはそれまで実権を持っていた人たちはいっせいに民間あるいはアカデミックな世界へ移動して、次の機会があればまた舞い戻ってくる。Wall Streetであっても最近こそ投資銀行がパワーを独占してきたものの、それこそ以前はジャパンマネーが市場を席捲していたわけで、その時々の権力を握っている組織へ人は流れて、或は更なるキャリアアップの為にアカデミックな世界へ戻っていくわけ(ちなみに、米国ではキャリアアップの為にMBAをとるといった行動は、個人税制によって明確に優遇されている)。そしてこの2つの業界(or 政界?)に共通しているのは、関連する業界(or アカデミズムの世界)の中だけで人の移動が起っていて、一度入ってしまえば非常に流動性の高い労働市場なのだけれど、なかなかこのサークルに入るのは容易ではないということ。

さて、ではWall Streetで今パワーを持っているのは誰なのか?昨今の市場環境もあって、一部の投資銀行ではそのパワーに衰えが見える。一方で、新興勢力のヘッジファンドは力を増してきており、SWFも見落とせない。成功したファンドの中には、更なる業容拡大を目指して自分達のedgeが効かない分野にも進出する為に、人材を経験豊富な投資銀行に求め積極的に採用し始めている。というわけで、最近はこのパワーシフトに伴ってヘッジファンドと投資銀行との間の行き来が盛んになってきている。昨年から一部で始まっていた投資銀行のレイオフでもすぐにヘッジファンドでの就職先が見つかってhappyにやっている知り合いは何人もいる。ではこれまで主流であったWall Streetでの人の流れ: 1) 投資銀行間での行き来(所謂"walk across the street")、2) new hire from graduate school/going back to graduate school, はどうなっているのか?少なくとも1)については同レベルの投資銀行間での行き来は確実に減ってきている。2)についてはやはりアカデミックな世界へ戻る方向の流れが強い。全体を眺めれば、これまでとは明らかに違ったトレンドが見て取れるので注意が必要になっている。以前のエントリー(1/26/07付け)で指摘した1.と3.のパターンも多くなってきたしね。

では、自分と家族を守るにはどうしたら良いのか?まず、パターン1.を避けるために極端に環境の悪化した業界 or 市場(今であれば米国のmortgage市場か?)には早々に見切りをつけて、パワーシフトの波に乗るか、アカデミズムの世界へいったん退避するのがベストだろう。"いつかは良くなるに違いない"といった長期予測に基づく逆張りは、仮にその予測が正しくともここでは命取りとなる。パターン3.を避けるためには、自分の給与水準を確認すればわかる。ちなみに、Wall Streetの給与水準には実はある程度の基準が存在し誰でも簡単にチェックできる。ただこれもまったくもってアメリカらしいというか、きちんとした市場調査の形をとった第3者の書いたレポートなのだけれど、微妙に利害相反の疑いがあるという困った代物ではあるのだけどね。何せエージェント(人材紹介会社 or ヘッドハンター)がこれを出してるんだからヽ(´ー`)ノ なんだか最近問題になっている市場でもみたことのある構図ですな(;´Д`) 有名どころのMichael Pageなんかも毎年きちんと出してます。例えばパフォーマンスの悪い5%がレイオフされてしまうといった懸念があるときは、1) パフォーマンスと給与は正比例する、2) Salary Surveyのレンジは両側95%での信頼区間に相当する、3) 給与は概ね正規分布している、という仮説を立ててみると、M&AのVice Presidentクラスで今年はボーナスが悪くて給与総額が150,452ドルを割ってしまっていたら実はもうアウトの可能性が高いと予想できるわけですヽ(`Д´)ノウワァァァン 数字って時に残酷ですよね。。

と、ここまで考えてみたけれど、やっぱり最後は人と人との信頼関係なんだろうな。"My word is my bond." やはりこれに尽きますね。気を付けましょう。

0 件のコメント: