土曜日, 2月 23, 2008

最近の話題

昨年からNYのクオンツ・コミュニティではサブプライムローン問題に関連して、僕の知る限り大まかにいって次のような論点について議論が起こっている:

1) 株式市場の乱高下とヘッジファンドの関係は如何に?
2) リスク管理手法について明らかになった問題点は何か?(ソジェンの事例も含めて)
3) 格付け機関に求められる役割と証券化商品特有の問題とは何だったのか?
4) アジア通貨危機に端を発する金融危機後に起こったイノベーションは結局のところ安定をもたらしたのか?

1)については、もう既に広く知られているMITのAndyLo教授が書かれた論文にあるように、"レバレッジの拡大"と"同一戦略をとるファンドの増加(相関の上昇)"が相まってもたらされた結果であるという見方が定説になってきている。すなわち、昨夏の株式市場の乱高下がマーケットニュートラル型のヘッジファンドによって主導されたという見方がほぼ固まってきていて、FRBが幾ら流動性を各種方法で提供したとしてもどこまで効果的か疑問符: FRBの庭はもはや市場の一部でしかないのではないか?、が付き始めてきたところ。ただ、中央銀行(or 当局)がコントロールできる範囲外の資金の流れが大きくなっているという根本的な問題に対する有効な手当ては今のところ見当たらない。

2)については方法論に問題がなかった事は疑いようがないものの、運用面を調整しなければならないという結論で固まってきていて、実際わが社でも静かに組織の見直しが進行中。

3)については、FRBの資料でも指摘されている通り、テクニカルには"While an ABS credit rating for a particular rating grade should have similar expected loss to corporate credit rating of the same grade, the volatility of loss (i.e. the unexpected loss) can be quite different across asset classes"という事情に象徴されるcorporate ratingsとsecuritized product ratingsとの違いが議論の中心になってきている。

そして最後に4)。アジア通貨危機から10年間を経て様々な金融イノベーション(高度化?)が生まれてきたものの、結局のところ世界がより複雑になった以外の何者でないのではないか、システム自体の安定性は何ら変わっていない(same as before, unconditionally)のではないかとする見方が本質を突いていると思う。

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