土曜日, 6月 09, 2007

邦銀・日系証券におけるクレジット・リスクの認識 その1

友達と話しているといろいろと発見があって面白いものだけど、リスクの認識方法に面白いコメントがあったので紹介してみたい。

「最近与信枠を使っていないみたいなので、削減しますね」

昔から時々意味が飲み込めずに不覚にも絶句してしまう瞬間はあったものだけれど、この時のインパクトも相当大きかった。この発言は、友達が日系証券会社のリスク担当者との会話の中で聞き及んだものなのだけれど、彼らが抱える内部矛盾を端的に示している点において深い。まず、1) 与信枠とは使っていないと削減されて無くなってしまうんかい?!、そして、2) 与信枠の管理において相手方となる企業の信用リスクの推定は議論に出てこないんかい?!、ということ。確に使っていない与信枠をリスク管理上敢えてメンテナンスしていく必要はないわけで、一見筋が通っているようにも見える。けれど、果たしてそれだけで与信枠を削減する根拠になるのか??そうここで本来ならば相手方の信用リスクの推定の必要性が出てくる筈なのだけれど、この発言はそこにはまったく触れずに一気に結論まで進んでしまっている。ちなみに、この相手方の企業とはビジネスが継続していてエクスポージャーもそれなりに積まれている状況であった。つまり彼らが抱えている内部矛盾は、

1.信用リスクを管理するための与信枠であるにも関わらず、個別の信用リスクの推定がおそらく行われていないこと。
2.与信枠とは文字通り信用リスクをある一定範囲内に収めるための物差し(数字)であるにも関わらず、物差しの基準がはっきりしないこと。

、なんだろう。なので、本来は信用リスクが変化した場合にのみ、ある一定の管理ルールの元で改訂されるべき与信枠がこのように非常に属人的な判断で決められてしまっている。思うにこれは債権区分毎に限界与信枠を決めて総量規制をするようなイメージの銀行系の考え方なのかもしれない。でもこれではどうしてもバケット内でのやりくりとして債権の集中リスクは避けられないし、あるバケットから他のバケットに取引先が移動する場合などに迅速な対応は図れない筈。そしてまさしくこれが邦銀の与信ポートが抱えている致命的な問題なのだろうと思う。こういった問題を解決するために、資本配分の議論などが出てきて、相関を考慮したデフォルトモデルを元に計量化を試みているのかもしれないけれど、僕に言わせれば何故個別の取引先毎に信用リスクに応じた与信枠を設定していかないのか非常に疑問。やっぱり、まずは個別リスクこそ与信枠を使ってある一定範囲内に収めた上で、相関を考慮してシステマティックリスクをindex取引でヘッジするのが筋だよね。そして個別リスクを与信枠に収めるときにこそ、ローンパーティシペイションやらCDS取引やらで個別ヘッジの必要性がでてくる。しかしあれだけひどい目にあっていながら、その根本的な原因の解決がなされていない様には本当に絶句させられる。。

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