日曜日, 6月 17, 2007

邦銀・日系証券におけるクレジット・リスクの認識 その2

もう数ヵ月前になるのだけれど、日本で唯一ファイナンシャルテクノロジーを組織として追求している会社の友人と夕飯を食べていたら、また面白いコメントがあったので紹介したい


「しかしカウンターパーティリスクをかなりまじめにやってるんだね。邦銀と違っていろんなカウンターパーティがいるんだろうか。」

いえいえ邦銀の方が日本だけを取り上げれば取引先は多いでしょ!!特にメガバンクに限っていえばもう取引先ではない企業はいなんいんじゃないんですかね。とまずは 軽く突っ込んでおきましたが、これも日本におけるリスクマネジメントの在り方について様々な問題提起を連想させるという意味で、良い事例です。まずカウンターパーティリスクはデリバティブ取引から発生する信用リスク部分であって、確に日本ではあまり注目されていないリスクであることは確か。特に、仕組み預金に組み込まれているデリバティブ取引の場合には、預金部分でそのリスクを一般的にカバーできると考えられていることからほとんど無視されているのではないだろうか。ただし、ここにまたしても落とし穴がある:

1. リスクは小さいと考えられているというが、その根拠はなんなのだろう?自分の経験では、どうしても適切に計量化されているとは言い難い。
2. リスクがあることがわかっているのであれば、それを把握する体制を整えるのがリスクマネジメントの基本である。特に、この場合には彼らにとってはヘッジできないリスクである筈。

たぶん彼らにとって、リスクとはmangeするものではなく、管理する対象なのであろう。サッカーで言えば、ディフェンスとラインマンの違いに相当する。ラインマンはある一定のルールを犯した場合に、試合を止める権利を持つ審判であるが、主審に比べるとその判断は「恣意性」のないものであって「客観的」である。ディフェンスは相手の陣形から得点につながる危険なパスコースをあらかじめ消さなければならないし、危険を察知した場合にはその機会を「能動的」に潰しに行かなければ仕事にはならない。非常におおざっぱだけれども「保守的な」基準でもって最終ラインさえ押さえて管理しておけばよいというのが邦銀・日系証券のラインマン的リスク管理であろう。それに比べて、あるとわかっているリスクはその大きさを正確に見極めた上でmanageするのが欧米流のディフェンス的リスクマネジメントであろう。リスクの計量化はその第一歩であって、その次の段階では是が非でもヘッジの方法を確立するものである。そもそも真面目にやらないリスク・マネジメントなど存在しないはずだ。

この話題に関連して、最近次の本を読んでみた:「大本営参謀の情報戦記 - 情報なき国家の悲劇」(堀 栄三)。国家としての危機管理とはなんであろうか、という主題に十分答えられる内容になっている。著者の結論は、「情報」であって、この収集・管理こそが現代の国家レベルでの危機管理だというわけだ。米国のCIAしかり、英国のMI6、またはフランスのDGSE+DST(国防省対外治安総局+国土監視局)がこの任務を負っている。それに比して、日本はどうであったか?これは企業レベルにもいえることであろう。

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